多摩川源流に位置する、山梨県小菅村は、村の人口がピーク時の3分の1、約700人まで減少するなど、深刻な過疎高齢化に直面しています。
この美しい自然と村の文化を後世に残していくため、2019年8月に「700人の村がひとつのホテルに。」をコンセプトに掲げ、地域全体を1つの宿に見立てた分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」が開業。その第2期プロジェクトとして、2棟の古民家をリノベーションし、それぞれ1棟貸しの客室棟とする〈崖の家〉が、2020年8月7日(金)にオープンします(株式会社EDGE 2020年7月24日プレスリリース)。
分散型ホテルとは、地域内にホテルの客室を分散させるホテルの形態です。兵庫県篠山市で国家戦略特区制度を適用し、2015年10月にオープンした「篠山城下町ホテルNIPPONIA」が全国の先駆けとなり、2018年6月の改正旅館業法の施行後は、国家戦略特区でなくても地域に分散した施設をまとめて1つのホテルとして営業できるようになったことなどから、地方創生の切り札として注目を集め、全国に広がりつつあります。
# NIPPONIA 小菅 源流の村 YouTube公式チャンネル「NIPPONIA 小菅 源流の村 GRAND OPEN」(2019/08/16)
「NIPPONIA 小菅 源流の村」は、村内に点在する約100軒の空き家を順次、宿泊施設にリノベーションしていくことで、地域内の飲食店・商店・野外体験施設・温浴施設などを積極的に利用してもらい、地域全体で観光客をもてなす事業モデルです。第1期プロジェクト「大家」では、築150年超の地元名士の邸宅〈細川邸〉の主屋と長屋門の2棟を改修し、客室4室と22席のレストランとして2019年8月に開業しています。
今回の第2期プロジェクト〈崖の家〉のオープンにより、合計4棟の古民家が活用されることになります。
〈崖の家〉の2棟は、小菅村の特徴的な地形である急峻な崖に張り出すように建っており、全ての部屋から、一切の人工物が視界に入らない、唯一無二のマウントビューを堪能できるのが大きな魅力です。
小菅村では、既存の旅館・民宿が経営者の高齢化のため廃業が相次ぎ、宿泊キャパシティが不足していることが、観光収入の確保や観光の産業化のボトルネックになっていました。そこで、村役場が主導し、新たな宿泊施設を設立するための新会社(株式会社EDGE)を2018年に設立、2019年8月に分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」が開業しました。
小菅村は東京都心部から車で約2時間の距離。COVID-19(新型コロナウィルス感染症)拡大により、都市近郊への観光(マイクロツーリズム)のニーズが高まっているなかで、今回の1棟貸し客室のオープンとなります。withコロナの現状を踏まえ、他の宿泊客と接しないように配慮した、部屋でのチェックインとチェックアウト、ローカルガストロノミーによる自炊スタイルの食事といったサービスを提供、農作業体験ができるアクティビティも用意し、いわゆる3密を回避しています。
〈崖の家〉の開業により、1棟貸しタイプの客室2棟が新たに加わり、計4棟の古民家が活用されることになります。小菅村では、建築家の和田隆男氏が、〈小菅村役場〉や〈小菅村体育館〉など村内の公共施設の設計を手がけ、アイデアコンテストも実施する「小菅村タイニーハウスプロジェクト」を立ち上げるなど、建築にも力を入れている村です。高齢化社会、循環型社会、ニューノーマルの時代において、1つの解を提示している地方自治体ではないでしょうか。
なお、同ホテル公式ウェブサイトもこのほど全面リニューアル。ユニクロ各店のデジタルサーネージなどを手がけている中村勇吾氏が主宰するデザイン事務所tha ltd.が制作したことも併せて発表されています。
〈崖の家〉施設概要
所在地:山梨県北都留郡小菅村1553-6
施設構成:1棟貸し 2棟(キッチン・トイレ・バスルームあり)
客室「KONAGATA 1」:70平米、大人4名定員(添寝可)
客室「KONAGATA 2」:40平米、大人2名定員(添寝可)
「NIPPONIA 小菅 源流の村」公式ウェブサイト:https://nipponia-kosuge.jp/