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企業と地域をつなぐ大きな庇屋根の〈T-LINKS〉

太陽ファルマテックの福利厚生施設を大成建設が設計・施工

BUSINESS2022.11.22

大阪・高槻市に太陽ホールディングスの福利厚生施設が竣工。設計・施工は大成建設、隈研吾氏と共に〈新国立競技場〉の設計責任者を務めた川野久雄氏(設計本部建築設計第七部部長)が担当した。館内の空間と造作家具のデザインではDRAFT Inc.のほか、和紙作家の堀木エリ子氏、左官の久住有生氏も参画。約900m²のアリーナの監修をプロバドミントン選手の奥原希望選手が担当している。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

大阪・高槻市にある太陽ファルマテック[*1]の敷地内に、グループ企業の福利厚生施設として〈T-LINKS〉が竣工、11月24日にオープンします。
約900m²のアリーナを有し、社員用のマシンジム、浴室、食堂、会議室のほか、グループ企業が営む食糧事業のノウハウを活かした水耕栽培エリアが屋上テラスに設けられています。

大きな庇屋根が特徴的な建物の設計は大成建設で、新国立競技場の設計責任者を務めた、設計本部の川野久雄氏が担当しています。
建物のデザインコンセプトは「みんなのリフレッシュテラス=環境と人に優しい木陰の空間」。建物全体を覆う大きな庇屋根は、日射の軽減効果を狙ったもので、建物周辺に用いた潜在自然植生[*2]の蒸散効果[*3]などにより、建物内の温度上昇を効率よく緩和してエネルギー消費の50%以上の削減を実現しているとのこと。これにより、経済産業省資源エネルギー庁認定の「ZEB Ready」の認証を取得しています。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

屋上テラス

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

屋上テラスではリーフレタスやハーブなどの葉物野菜を栽培し、カフェテリア(社員食堂)で提供するメニューに活かされる

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

水耕栽培エリア

施設の内装デザインのコンセプトは「楽しい社会を創造できる発想を高槻、そして日本から・・・」。大会議室やパウダーコーナーなど、館内の要所のデザインを、山下泰樹氏が率いるDRAFT Inc.。木を基調にシックかつラグジュアリーな空間とし、オリジナルで家具もデザインしています。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

造作家具の1例(設計・デザイン:DRAFT Inc.)

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

造作家具の1例(設計・デザイン:DRAFT Inc.)

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

レセプションエリア

レセプションの壁は光壁で、京都を拠点に「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマにオリジナル和紙を制作している堀木エリ子氏(堀木エリ子&アソシエイツ代表)によるもの。3階の和室の壁面は、左官職人の久住有生氏による仕上げです。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

和室 / 壁は久住有生氏の手による左官仕上げ

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

会議室 設計・デザイン:DRAFT Inc.

アリーナはプロバドミントン選手が監修

〈T-LINKS〉は約900m²のアリーナ(体育館)を内包。太陽ホールディングスに所属するプロバドミントン選手で、女子シングルス日本代表の奥原希望選手が監修しています。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

バドミントンコート3面分の広さがあるアリーナ

トップアスリートの監修により、緩衝作用がある国際競技認定の床材を採用するなど、利用者のけがや身体への負担を軽減させる、安全面に配慮した設計に。
今後は、社員だけでなく近隣住民が使えるようになる予定で、バトミントン以外にもさまざまな室内競技を楽しめる空間となります。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

奥原希望選手監修のアリーナ

災害発生時には一時避難所に

約900m²の広さがある〈T-LINKS〉のアリーナは、災害発生時には、高槻市内に留まる帰宅困難者および近隣住民の一時避難所として使用されます[*4]。試算では3日間で最大100名の受け入れが可能。
床レベルの設定は水害の発生を考慮し、開放性がありながらも地震に強い構造となっているとのこと。

太陽ファルマテック〈T-LINKS〉

カフェテリア

施設の名称の「T-LINKS」とは、社内で公募を行い、103件の候補の中から決定したもの。太陽ファルマテックと高槻市の頭文字である「T」で始まり、同社の従業員同士をつなぎ、災害時には一時避難所として高槻市の人々を受け入れる役割を担う建物であることなどから、つなぐの「LINK」と、場所を表す「RINK」を掛け合わせたネーミングです。

〈T-LINKS〉施設概要

所在地:大阪府高槻市明田町4-38(Google Map)
規模:3階建て
1階:レセプション、アリーナ(体育館)、テラス、マシンジム、カフェテリア(社員食堂)、一般更衣室
2階:会議室(ROOM A/B/C)、浴室、社員更衣室
3階:大会議室(Boardroom)、和室「太陽」「高月」、テラス、水耕栽培エリア

建築面積:2670.89m²
延床面積:4608.19m²
設計・施工:大成建設
事業主:太陽ファルマテック(太陽ホールディングス子会社)
竣工:2022年11月21日
開設:2022年11月24日

太陽ホールディングス プレスリリース(2022年11月21日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000028282.html


編集部註
*1.太陽ファルマテック会社概要
さまざまな電子機器に用いられる基板の表面を保護する絶縁材・ソルダーレジストの世界シェアトップクラスを誇る、業界のリーディングカンパニー・太陽ホールディングス(東京都豊島区)の子会社。エレクトロニクス事業に次ぐ第2の柱として注力する医療・医薬品事業において、医薬品製造受託事業を担う(本社:大阪府高槻市、2019年4月25日設立、2022年3月末時点の従業員数:347名)

*2.潜在自然植生:人間の影響を一切停止したとき、その立地に生じると判定される自然植生を指す(環境省自然環境局 生物多様性センター公式ウェブサイトの記述より)

*3.蒸散効果:植物が自らの温度調節のために水分を大気中に放出する現象を指す(国土交通省 屋上庭園に関する公開資料より)

*4.一時避難所について:太陽ファルマテックでは、2022年11月に、高槻市と「災害時における帰宅困難者の受け入れ等に関する協定書」を、近隣自治会と「災害時における近隣住民の受入れ等に関する協定書」をそれぞれ締結している

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