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巻組が「始期付負担付死因贈与契約」の概要を発表

日本郵政が開発に協力、相続“負”動産の発生を抑えて空き家問題の解決を目指す

BUSINESS2023.03.06

宮城県石巻市を拠点とし、空き家活用を通じて地域に多様なライフスタイルの創出を目指す巻組(代表取締役:渡邊享子)が、いわゆる死因贈与の契約手法をもとに、寄付の仕組みを空き家活用に取り入れた「始期付の負担付死因贈与契約」を開始したことを発表しました。

取り組みの背景

巻組のプレスリリースによれば、全国的にみて、空き家が発生する要因の多くは相続上の問題が関係するとのこと[*1]。このため、相続が発生する前に、所有者やその関係者に対して「死因贈与=寄付による活用」という新たな選択肢を提供することで、とりわけ地方において顕著な、資産価値・収益性が極端に低い物件が相続後に放置され、空き家となってしまうことを未然に防ぐ施策になると考えています。
この取り組みは、国土交通省「令和4年度住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」にも採択されているとのこと。
*1.国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査」より(巻組調べ)

自分で住む予定のない不動産を相続したものの、元の居住者の生活形跡がそのまま残る不動産を目の当たりにし、何から手を付けてよいかわからず、相続手続に追われる間に放置してしまう。そして、処分を思い立ったときには内部の状態も更に悪化しており、手の施しようのない状態になってしまう。私たちは空き家をシェアハウスにするという空き家再活用事業を行う中で、このような事例に数多く遭遇してきました。
なぜこのようなことが起こるのか。
私たちはこの問題を解決するには、相続発生前から相続後の不動産の処分方針を明確にしておくことで、空き家を発生させない仕組みが必要だと考えました。(巻組 2023年3月1日プレスリリースより)

巻組では、同社が展開するシェアハウスシリーズ「Roopt(ループト)」のサイト内に、従来の売却・賃貸といった不動産ソリューションに「死因贈与」を加えた、家じまいのための空き家ポータルを3月1日より開設しています。

「Roopt」サイト / 家じまいのための空き家ポータル
https://roopt.jp/akiya/

巻組ポータルサイト

「始期付負担付死因贈与契約」の特徴

「始期付負担付死因贈与契約」とは、契約締結時に定めた「負担」の履行を条件として、所有者死亡時に贈与の効力を生ずる契約です。
巻組による提案では「不動産の維持管理や改修」を「負担」として設定し、それを巻組が履行します。
所有者が存命のあいだは賃貸借契約でサブリースし、所有者が死亡して以降は巻組に所有権が移行する仕組みです。

「始期付負担付死因贈与契約」の特徴

「始期付負担付死因贈与契約」の特徴

・修繕や維持管理の負担を物件取得の対価として再定義
巻組の初期コストを抑えつつ、所有者が抱える維持管理等の負担を軽減する

・被相続人の「手放したくない」、相続人の「手放したい」に配慮
不動産の所有者(被相続人)は、思い入れがある住まいを手放すことに抵抗がある一方で、相続人は相続後の負担に不安を感じている。この相反する2つのニーズに対応する

・不動産活用の流れをスムーズに
相続が発生する前に、不動産の”行く末”を確定することで、思い入れのある住まいが朽ち果てることなく、次の世代へと継承する可能性が高くなる

「始期付負担付死因贈与契約」相関図

三好達也氏コメント(日本郵政から出向、開発を担当[*2]):
「特に人口減少が進む地方部において、立地や状態等の条件が良くない不動産は、利用者とのマッチングが困難であり、放置され、さらに条件が悪化するという悪循環に陥る傾向にあります。この悪循環を断ち切るためには、「相続が発生する前に」不動産の担い手を確定させておくことが重要なのではないかと考え、この仕組みを着想しました。開発にあたり、専門家の知見を取り入れながら、契約書の作成などを進めてきました。
始期付負担付死因贈与契約という契約自体は既にありましたが、親族間で用いられることが多かったこの契約手法を、法人=個人の間に応用したのが特徴です。
対象となる物件の発掘・活用に向けて、将来的には全国24000局の郵便局ネットワークとの連携も視野に入れています。空き家問題の解消に向けて、今後も取り組んでいきたいと考えています。」

*2.日本郵政の推進する「ローカル共創イニシアティブ」[※3]のパートナーである巻組では、2022年4月1日より日本郵政から出向者を受け入れている(日本郵政では、巻組のほか全国5つの地域に8名の社員を2年間派遣している)。
*3.日本郵政が2022年4月1日に始動したプロジェクト。中期経営計画「JPビジョン2025」に掲げる、ユーザー(顧客)と地域を支える「共創プラットフォーム」を実現するための取り組み。

シェアハウス「Roopt(ループト)」シリーズ

巻組が手がけたリノベーション事例

渡邊享子氏(巻組 代表取締役)コメント
「空き家活用には空き家情報を仕入れる”入口”と、利用者や入居者につなげる”出口”があると私たちは考えています。
これまでにも、自社で空き家を買い上げ、あるいは借り上げてリノベーションし、シェアハウスとして運営することで、空き家活用の”出口”にコミットしてきました。
今回のこの仕組みは、相続で困っている大家さんを1人でも減らし、空き家を空き家として放置することなく、流通させることを目指す”入口”を補強することにほかなりませんが、平素は”出口”にこだわって事業を展開している私たちが、この取組みに着手したことの意義は大きいと考えています。
単に空き家の情報を集めるだけではなく、実際の活用に結び付けていく。私たちは今回の仕組みの導入を1つの契機として、空き家活用の入口を拡げるとともに、出口(活用)まで対応できるような仕組みを今後も生み出し、空き家問題にアプローチしていく予定です。」

「始期付負担付死因贈与契約」の活用例などの詳細は、巻組プレスリリース(2023年3月1日)を参照してください。

巻組プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000080525.html

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