東京・清瀬市にある大林組の技術研究所の敷地内に、3Dプリンタで建設された実証棟〈3dpod™〉が同社によって建設され、今年4月に完成しています(一般には非公開)。
〈3dpod™〉は、セメント系材料を用いた3Dプリンタによる建築物として、国内で初めて建築基準法に基づく国土交通大臣の認定を取得した構造形式の建屋となります。
施設名称の「pod」とは、蚕(かいこ)の繭(まゆ)や、豆科植物の”さや”の意。建物の壁や天井など平面部分の形状が、ピーナッツの”さや”のようなかたちをしていること、建屋の外観が3Dプリンタ建築ならではの有機的な球状が繭のようにも見えることなどから名付けられました。
〈3dpod™〉は、壁・床・壁といった地上構造物の全ての部材の出力・施工に、3Dプリンタが用いられました。電気・空調・水道設備を有し、壁には断熱処理も施されています。
施工中の様子
建物形状は、プリント範囲内で最も少ない材料で最大の空間が得られるようにデザインされている。壁を複数層にしてケーブルや配管ダクトを配置することで、通常の建築物と同様の室内利用が可能に。また、3Dプリントによる躯体工事と並行して、断熱と設備工事の一部を行うことで、省力化も実現している。
大林組では、3次元で製造したモデルを一貫利用した設計・製作フローを構築するとともに、プリント経路の自動生成や傾斜部の積層性、障害物との干渉状況を確認するソフトウェアを開発。これにより、有機的なデザインを実現している。
大林組のプレスリリースによれば、同社は2014年から建設用3Dプリンタの研究を開始し、研究・開発を進めてきたとのこと。鉄筋や鉄骨を用いない3Dプリンタ用特殊モルタル[*1]や、超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート®」[*2]による構造形式を開発しているほか、2019年には建築物や土木構造物での利用を想定した「シェル型ベンチ」も試作(3Dプリンタで製造した構造物として国内最大規模 / 当時)。これらのモックアップでの実績を経て、建築基準法が定める建築物の建設プロジェクトを2022年5月にスタート、今年3月に〈3dpod™〉が完成したものです。
*1. 3Dプリンタ用特殊モルタル:デンカ株式会社が開発した特殊なセメント系材料を用いたモルタル「デンカプリンタル®」。建築物や土木構造物に必要な強度と耐久性を持つとともに、吐出直後でも形状が崩れることなく維持されるチキソトロピー性と呼ばれる性質があり、型枠を使わずに部材の製作が可能
*2. スリムクリート®:大林組の保有技術である常温硬化型のモルタル材料で、圧縮強度180N/mm²、引張強度8.8N/mm²、曲げ強度32.6N/mm²を達成できる。さらに、引張強度や曲げ強度が高いだけでなく、高い引張靭性を有するため、単独でも構造体としての使用が可能な材料。スランプフローは260mm程度あり、自己充てん性を有するため、3Dプリンタ用特殊モルタルで製作した3次元曲面状の打込み型枠にも密実に充てんできる
#大林組 YouTube公式チャンネル「3Dプリンター実証棟「3dpod」完成」(2023/04/25)
今後は、より複雑なデザインの実現や、さらなる強度および耐久性を備えた構造物を実現できる、セメント系材料を用いた3Dプリンタ建設の研究を進めていく計画です。
本件プレスリリース
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230425_1.html
画像提供:大林組
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