
東急は、「100年に一度」と称される渋谷における大規模再開発プロジェクトが最終フェーズに入ったことを発表、最新ビジュアルや模型などの資料を公開しました。
Shibuya Upper West Project(渋谷アッパーウェストプロジェクト)模型 Photo: TEAM TECTURE MAG
本模型は渋谷スクランブルスクエア 12Fイベントスペース・Scene12にて6月4日より展示される
「Shibuya Upper West Project」について説明する東急 江島隆広氏(都市開発本部 渋谷開発事業部プロジェクト推進第一グループ 統括部長) Photo: TEAM TECTURE MAG
今回の発表は、東急が東日本旅客鉄道(JR東日本)、東京地下鉄、ヒューリックなどの他社・団体との共同で推進している事業計画に基づくものです。同エリアの再開発では、建築家の内藤 廣氏が長年にわたり携わり、そのほかにもデザインアーキテクトとして、2018年開業の〈渋谷ストリーム〉ではCAt(シーラカンスアンドアソシエイツ)が、2019年開業の〈渋谷フクラス〉では手塚建築研究所が参画しています。現在進行中の「渋谷駅周辺開発プロジェクト」では、2012年4月に開業した〈渋谷ヒカリエ〉から数えて11のプロジェクトが2031年度までに遂行される予定です。
渋⾕駅周辺航空写真(2024年5⽉撮影) ©︎東急・東急不動産
画面中央の超高層が〈渋谷スクランブルスクエア 東棟〉、屋上に展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」を有する
2019年11月に開業し、展望施設「SHIBUYA SKY」が人気の〈渋谷スクランブルスクエア〉(東棟)は、デザインアーキテクトとして、日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、妹島和世と西沢立衛の両氏による建築家ユニット・SANAA(サナア)の3事務所が名を連ねています。東棟に隣接して、低層の中央棟と西棟がこれより建設され、3棟の一部フロアが連結する計画です(2棟は今年5月に「渋谷スクランブルスクエア第II期」として着工、事業者:東急、JR東日本、東京地下鉄)。
これに先立つ今年3月には、旧東急百貨店本店跡地の再開発で、スノヘッタ(Snøhetta)が参画していることで話題の「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」の起工式が執り行われています。
さらに、東急がヒューリックと共に進めている「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」では、市街地再開発組合の設立が4月30日に東京都知事によって認可され、同日に概要が発表されています。こちらのデザインアーキテクトは、建築家の原田真宏と麻魚の両氏が率いるMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)が務めます。
「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」の計画概要を説明する東急 執行役員 坂井洋一郎氏(都市開発本部 渋谷開発事業部長) Photo: TEAM TECTURE MAG
6月3日の東急による記者発表会では、これら3つのプロジェクトについて説明があり、記者からの質疑にも応じました。
『TECTURE MAG』では、6月3日に都内にて行われた東急の記者発表会を取材。今後が注目の「渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)」、「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」、および「Shibuya Upper West Project」について、それぞれの最新情報を伝えます。それぞれのプロジェクトが完了すれば、駅を中心とした動線は従来とは違った流れとなり、回遊性がアップします。
「渋谷駅街区計画」模型 Photo: TEAM TECTURE MAG
画面奥の高層ビルが既存の〈渋谷スクランブルスクエア 東棟〉。画面中央付近がスクランブル交差点に面して、バスターミナルを再配置し、渋谷駅ハチ公広場を拡充して整備される西口駅前広場 ※方位は手前が北西
本模型は渋谷スクランブルスクエア 12Fイベントスペース・Scene12にて6月4日より展示される
〈渋谷スクランブルスクエア〉の3棟と周辺のビル、整備される広場の配置(2025年3月12日 東急プレスリリースより)※方位は上が北・新宿方向
「渋谷駅街区計画」を中心とした開発プロジェクト
01.渋谷ヒカリエ(2012年4月26日開業)
設計:日建設計・東急設計コンサルタント共同企業体
施工:東急・大成建設共同企業体02.渋谷キャスト(2017年4月28日開業)
設計:日本設計・大成建設一級建築士事務所共同企業体
施工:大成・東急建設共同企業体03.渋谷ストリーム(2018年9月13日開業)
デザインアーキテクツ:小嶋一浩+赤松佳珠子 シーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)
設計:東急設計コンサルタント
施工:渋谷駅南街区プロジェクト新築工事共同企業体(東急建設、大林組)04.渋谷ブリッジ(2018年9月13日開業)
設計:東急設計コンサルタント
施工:東急・大林建設工事共同企業体05.渋谷ソラスタ(2019年3月29日開業)
設計:素水建設・東急設計コンサルタント設計共同企業体
設計監修:日建設計
施工:清水建設06.渋谷フクラス(2019年11月日開業)
デザインアーキテクト:手塚建築研究所
マスターアーキテクト:日建設計
設計・監理:清水建設一級建築士事務所
施工:清水建設07.渋谷スクランブルスクエア(東棟 2019年11月1日開業、中央棟・西棟 2031年度完成予定)
設計:渋谷駅周辺整備計画共同企業体(日建設計・東急設計コンサルタント・JR東日本建築設計・メトロ開発)
デザインアーキテクト:日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、SANAA
施工:
・東棟:渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体(東急建設、大成建設)
・中央棟・西棟:東急建設(駅改良工事関連などは除く)08.Shibuya Sakura Stage(2023年11月30日竣工)
設計・施工:下記関連ニュースを参照09.渋谷アクシュ(2024年7月8日開業)
設計:渋谷二丁目17地区設計共同企業体
施工:竹中工務店10.「Shibuya Upper West Project」(2029年度竣工予定)
デザインアーキテクト:Snøhetta(スノヘッタ)
エグゼクティブアーキテクト:日建設計
施工:大林・東急・西武建設共同企業体11.「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」(2027年度着工予定、2031年度竣工予定)
設計:宮益坂地区設計共同体(日本設計・三菱地所設計)
デザインアーキテクト:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(原田真宏+原田麻魚)※太字が今回発表されたプロジェクト、列記順は東急配布の「渋谷駅周辺開発FACT BOOK」に準じる
渋⾕スクランブルスクエア スクランブル交差点からの視点 ©︎渋⾕駅街区共同ビル事業者
設計:渋谷駅周辺整備計画共同企業体(日建設計・東急設計コンサルタント・JR東日本建築設計・メトロ開発)デザインアーキテクト:日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、SANAA
施工:東急建設(駅改良工事関連などは除く)
渋⾕スクランブルスクエア スクランブル交差点⽅⾯からの鳥瞰視点 ©︎渋⾕駅街区共同ビル事業者
渋⾕スクランブルスクエア 宮益坂交差点⽅⾯からの鳥瞰視点 ©︎渋⾕駅街区共同ビル事業者
開発のポイント:
・渋谷駅および渋谷の東西南北を、地上およびデッキ階で結ぶ多層な歩行者ネットワークが2030年度に完成(JR渋谷駅の改札およびコンコースの整備も概ね完了)
・駅の東西を結ぶ最大幅員20m強の自由通路が地下鉄銀座線駅舎の上を含めて整備され、回遊性が向上
・中央棟・西棟は主に商業フロアで構成
・第Ⅰ期(東棟)とあわせ、1フロアあたりの売場面積が最大約6,000m²のとなる首都圏最大級の商業施設となる
・ハチ公像位置含めハチ公広場の最終形状は検討段階、同広場を含めた全体の完成は2034年度を予定
ネットワーク図 ©︎渋⾕駅街区共同ビル事業者
ネットワーク図 ©︎渋⾕駅街区共同ビル事業者
「渋谷駅街区計画」模型 Photo: TEAM TECTURE MAG
〈渋谷スクランブルスクエア〉の中央棟の10階・屋上には、各国の大使館などと連携したグローバルな文化交流体験を提供する施設「10階パビリオン(仮称)」が整備されます。建物の建築デザインはSANAAが担当するとのこと。
「渋谷駅街区計画」模型 Photo: TEAM TECTURE MAG
「渋谷駅街区計画」模型 Photo: TEAM TECTURE MAG
事業名称:宮益坂地区第一種市街地再開発事業
施行者:宮益坂地区市街地再開発準備組合
設計:宮益坂地区設計共同体(日本設計・三菱地所設計)
デザインアーキテクト:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(原田真宏+原田麻魚)
宮益坂地区第⼀種市街地再開発事業 外観イメージパース(渋⾕駅⽅⾯より本地区を望む。左:本事業A街区 / 中央:本事業B街区)©︎宮益坂地区市街地再開発組合
宮益坂地区第⼀種市街地再開発事業における、整備するアーバン・コアと地下広場および上空通路 イメージパース ©︎宮益坂地区市街地再開発組合
用途:事務所、宿泊滞在施設、店舗、ホール・カンファレンス、神社、産業育成支援施設など
施行面積:約1.4ha
敷地面積:約10,870m²
延床面積:約201,300m²
規模:
・A街区 地上33階+地下3階
・B街区 地上7階+地下2階
・C街区 地上2階+地下1階
高さ:180m(A街区)
スケジュール(予定):2027年度新築着工、2031年度 竣工・開業
宮益坂地区第⼀種市街地再開発事業 御嶽神社の建て替え、再整備を⾏うC街区(右)と⼤⼭街道 イメージパース ©︎宮益坂地区市街地再開発組合
宮益坂地区第⼀種市街地再開発事業 エリアマップ・配置図(2025年4月30日 東急プレスリリースより)
宮益坂地区第⼀種市街地再開発事業 断面図(2025年4月30日 東急プレスリリースより)
宮益坂地区第⼀種市街地再開発事業 外観イメージパース(夜景)
©︎宮益坂地区市街地再開発組合
Shibuya Upper West Project 遠景イメージ
©︎ Image by Mir, Copyright Snøhetta and NIKKEN SEKKEI LTD 提供:東急
事業主:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店
デザインアーキテクト:Snøhetta(スノヘッタ)
エグゼクティブアーキテクト:日建設計
施工:大林・東急・西武建設共同企業体
竣工(予定):2029年度
2022年7月発表時の計画概要
Shibuya Upper West Project 近景イメージ
©︎ Image by Mir, Copyright Snøhetta and NIKKEN SEKKEI LTD 提供:東急
Shibuya Upper West Project「The Sanctuary」
©︎ Image by Mir, Copyright Snøhetta and NIKKEN SEKKEI LTD 提供:東急
所在地:東京都渋谷区道玄坂二丁目24番1号
用途:リテール、ホテル、レジデンス、ミュージアムなど
敷地面積:約13,675m²(※既存のBunkamuraを含む)
延床面積:約119,000m²(※同上)
階数:
・新築部分:地上34階+地下4階
・Bunkamura(既存):地上7階+地下2階
高さ:155.7m
注目は、8-17Fに入る、スモールラグジュアリーホテル「The House Collective(ザ・ハウス・コレクティブ)」です。今回が日本初進出となります。
その上層には、都市型居住を実現する賃貸レジデンスを有し、後述するミュージアムの移転・開業をきっかけとして、Bunkamuraとのさらなる融合を推進し、新たな大型文化複合拠点となることを目指す計画です。
現在、休館中のBunkamuraザ・ミュージアムは、新施設7階への拡大移転が今年4月10日に発表されています(東急文化村プレスリリース)。
新たなミュージアムは、スノヘッタが手がける建物とシームレスにつながった、開かれたミュージアム空間になる見込みです。複数の展示室から構成される展示スペースの面積は約1,000m²となり、展示室の一部は最大約6mの天井高で計画中とのこと。従来では実現が難しかった大型作品の展示が可能となります。
Snøhetta コメント
新施設の7階に移転するBunkamuraザ・ミュージアムのデザインアーキテクトを務めることを光栄に思います。
本プロジェクトのデザインコンセプトは、渋谷の脈動するエネルギーを象徴する一筆書きのイメージからインスピレーションを得ています。このコンセプトは、地上から天空へと優雅に螺旋を描きながら上昇する渋谷の躍動感と興奮を表現しています。もうひとつの渋谷エリアから次世代の文化を牽引する存在として構想された本プロジェクトでは、東京の新たなランドマークとして、自然と景観にも配慮した持続可能な文化複合拠点となることを目指しています。本プロジェクトのデザインは様々なプログラムやコミュニティを一筆書きのようにつなぎ、ミュージアムにおいてもリボンのような壁が複数の展示室を蛇行しながら、アートを愛する人々を誘います。オープンプランのデザインは、多様なニーズに応える柔軟な展示システムに支えられ、あらゆる芸術表現やパフォーマンスを可能にします。
新しいミュージアムのデザインにおける私たちのビジョンは、都市と空、近代と幽玄、過去と未来、デジタルとフィジカル、商業と文化といった二元性が融合する空間を創造することです。この融合が、異なるそれぞれの特徴をより際立たせ、本プロジェクトと渋谷全体の文化的環境が高まることを期待しています。
Shibuya Upper West Project 模型
Shibuya Upper West Project フロア断面(用途配置図)
なお、渋谷駅周辺再開発における11のプロジェクトが2031年度に竣工・開業したあとも、東急ではこれら以外にも複数のプロジェクトを計画・推進中とのこと。今後の発表が待たれます。
注.本稿で掲載したイメージパースや模型は現時点のもので、今後変更となる場合あり
渋谷スクランブルスクエア 15Fからのスクランブル交差点および工事区見下ろし Photo: TEAM TECTURE MAG
渋谷スクランブルスクエア 15Fからの渋谷駅西口の工事区見下ろし Photo: TEAM TECTURE MAG