[Interview]型枠から建築のプロセスを刷新する、3Dプリンティングの最先端を切り拓くDigitalArchi - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
[Interview]型枠から建築のプロセスを刷新する、3Dプリンティングの最先端を切り拓くDigitalArchi

[Interview]型枠から建築のプロセスを刷新する、3Dプリンティングの最先端を切り拓くDigitalArchi

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慶應義塾大学発のスタートアップとして、建築プロセスの刷新に挑むDigitalArchi。3Dプリンタと再生プラスチックを掛け合わせ、従来の型枠では困難だった自由度の高い造形と、現場の省力化を叶える高い施工性を両立。さらに使用後は再び資源として循環させることで、建築の「つくる」を根本から変える取り組みをしています。今回は、同社代表取締役CEOの松岡康友氏と、設計事務所やインテリアデザインを経て参画したデジタルデザインチームの西田浩二氏にインタビュー。未開の領域を切り拓く面白さや社会的意義、ここでしか得られないキャリアについてお話を伺いました。

3Dプリンタ×再生プラスチックで、建築の「つくる」をつくる

松岡康友 氏(代表取締役CEO/以下、松岡): 私たちは「建築の『つくる』をつくる」というミッションのもと、2023年に創業した慶應義塾大学発のスタートアップです。私は竹中工務店の技術研究所を経て、大学で田中浩也教授とともにロボットアーム式3Dプリンティングの最先端研究に携わってきました。その研究成果を広く社会に実装し、建設業界の課題解決を図るべく、この会社を立ち上げました。

事業の主軸は、3Dプリンタを用いた建設用型枠や建材の自社製造です。現在、建設業界は深刻な人手不足や、膨大な資源を消費するという構造的な課題に直面しています。ここに再生プラスチックを活用したテクノロジーを投入することで、現場の省力化と、抜本的な資源循環を同時に実現できると考えています。

自社開発のソフトウェアで制御されるロボットアーム式3Dプリンタ。

松岡:私たちが「型枠」というアプローチを選んだのには、明確な狙いが2つあります。1つは、建築基準法の厳しい規制をダイレクトに受けない、法的ハードルの低さです。最先端の技術をスピード感をもって業界に浸透させるには、この実用化への間口の広さが重要になります。

もう1つは、「型枠」などの建築部材を再生プラスチックで製造することにより、リサイクルの「量」を確保することができ、資源循環により貢献することができることです。

従来の木製型枠は、複雑な形状になるほど熟練した職人の手作業に頼るしかなく、コストも工期も膨らんでいました。それに対して、3Dプリンタは複雑な造形もデジタルデータから安定して自動製造できます。自由なデザインと、産業として求められる安定した供給力。その両立を可能にすることが、私たちの強みとなっています。

松岡康友 氏。

松岡:この製造システムを根底で支えているのが、私たちの技術のコアであるソフトウェア開発です。3Dプリンタを動かすための制御システムをはじめ、出力データの生成、複数台のプリンタを同時に稼働・一体管理するシステムにいたるまで、すべて自社で内製しています。

大型3Dプリンティングは技術的な難度が高いからこそ、専門的なノウハウに依存せず、誰でも扱える仕組みに落とし込まなければなりません。社会に普及する「産業としてのモノづくり」の基盤を構築することに、私たちは総力を挙げています。

現在は計19台が稼働。今期中に30台体制、将来的には100台を超える体制を目指している。

6軸ロボットアームにより、複雑で緻密な動作をコントロールしている。

建築の「共通言語」で牽引する、デジタルデザインの最前線

松岡:今回募集するデジタルデザインチームのメンバーには、これまでの建築設計での経験を期待しています。私たちのクライアントは、建築設計事務所やゼネコン、施工会社など、いわゆる建築のプロフェッショナルの方々。だからこそ、現場の言葉や特有の課題を深く理解し、同じ目線で議論を進められる確かな知識が、プロジェクトのベースとして不可欠になります。

西田浩二 氏(デザインチーム/以下、西田):日々の業務フロー自体は、実は一般的な設計事務所と大きな違いはありません。クライアントのご要望をヒアリングし、コストや工期といった条件を整理する。要件が固まれば設計期間に入り、3Dモデリングや出力用データの作成を行い、最終的に自社で製造して現場へ納品する、という流れです。

一方で、扱うのは今までにない新しい技術です。当然、クライアントにとっても未知の領域ですから、密なコミュニケーションを重ねながらプロジェクトを牽引していく必要があります。形にするのはもちろん、途中で起こるイレギュラーにも柔軟に対応し、確実に着地点へと導くこと。それが、私たちに求められる役割です。

西田浩二 氏。

松岡:直近のプロジェクトで言うと、まもなく竣工を迎える商業施設〈MAZAKA(まざか)〉があります。構造は鉄筋コンクリート造で、大屋根の周縁がダイナミックに反り上がる意匠が特徴です。この大屋根の打設に、私たちの型枠が採用されています。

平面と立面の双方が曲線で構成されているため、鉄筋コンクリート造でこの複雑な3次元曲面をどう実現するかが現場の大きな課題となっていました。そんな折、型枠工事の会社から「従来の木製型枠では対応できないプロジェクトがある」とご相談をいただいたのです。

〈MAZAKA〉コンクリート打設後。Photo: DigitalArchi

コンクリート打設の様子。Photo: 栄港建設

松岡:敷地があるのは、川崎市・溝の口駅からわずか徒歩5分という立地でありながら、小山を背にした緑豊かな傾斜地です。この豊かな自然と建築を調和させるため、湾曲したスラブの上に木々を植えて、誰もが憩える屋上広場にするという挑戦的な設計でした。

2年ほど前にこのご相談をいただいた当時、私たちの手元には3Dプリンタが1台しかありませんでした。ですが、このプロジェクトを機に生産設備を15台まで拡張し、合計455パーツにおよぶプラスチック型枠を自社で製造し、現場へ届けることができました。

型枠製造の様子。Photo: DigitalArchi

20年の設計キャリアを経て、未経験の領域へ挑んだ理由

西田:これから当社に興味をもってくださる方の参考になればと思い、私自身のバックボーンをお話しさせてください。私は大学で建築を学んだ後、設計事務所で主に公共施設の設計や現場監理に10年ほど携わっていました。その後はインテリアデザインの領域へ移り、そこでも10年。計20年ほど、空間づくりに身を置いていました。

3Dプリントの存在自体は知っていたものの、実務としては完全に未経験でした。それでも飛び込んだのは、直感に導かれた部分が大きかったと感じています。ちょうど「TECTURE MAG」で当社の求人を見かけ、カジュアル面談を申し込んだのですが、松岡さんから直接ビジネスモデルを聞く中で、「型枠」に着目した戦略の合理性に深く納得しました。

そして入社の決定打となったのは、製造現場を案内してもらった時のことです。松岡さんが、本当に嬉しそうに3Dプリンタの技術を熱弁してくれたんですよね。「自分の仕事をこれほど生き生きと語る人と一緒に働けたら、自分自身も成長できるし、クリエイティブな日々が送れるだろう」と感じたことが、今でも強く印象に残っています。

松岡:プロジェクトの初動において、西田さんの存在は本当に心強いですね。私たちのところには、「何か新しいモノをつくりたいけれど、どう進めればいいか分からない」という、かなり早い段階でのご相談もよく来ます。その際、西田さんは「こんなアプローチも面白いんじゃないですか」と、次々にイメージを広げてくれます。空間づくりに長年携わってきたからこその引き出しの多さは、プロジェクトを成功へ導く大きな原動力になっています。

求めるのは、建築への探求心と自主性

松岡:私たちが手がけるのは、すべてが独自性の高い、前例のないプロジェクトばかりです。もちろん一筋縄ではいきませんが、それすらもクリエイティブな挑戦として面白がれる熱量があれば、世界で一番楽しい環境と言えます。

大林組との協業プロジェクト「The brænch(ザ・ブレンチ)」。Photo: Hiroyuki Tachikawa

3次曲面と凹部を含む複雑形状のオブジェのための3Dプリント型枠。Photo: DigitalArchi

松岡:率直にいうと、求めているのは西田さんのように建築の確かな経験や実績があり、その引き出しを活かして自ら動ける方です。私たちは指示されたタスクを淡々とこなす組織ではないため、スタートアップならではの自由な環境で、新しい挑戦をどんどん仕掛けていけるような自主性を重視しています。むしろ、そうしたマインドさえあれば、もっと経験の浅い方や若い方でも大歓迎です。

西田:入社直後に、まずは3Dプリンタを使って自分で何かモノをつくってみる経験をさせてもらえるのですが、これで製造プロセスの全体像を体感として理解することができました。実務未経験だった私も、この課題を1〜2ヶ月やっていく中で技術の輪郭を掴み、自分なりの役割を見つけて自然とチームに馴染むことができました。スキル自体は後から身につけることができます。それよりも、自主性をもって積極的に動くことができたり、チームで協力して仕事を進めることを楽しめる人に来てほしいですね。

松岡:私たちの仕事の醍醐味は、やはり実際にモノやカタチになることです。同時に、ご一緒するクライアントの誰もが、これまでにない挑戦をしようとされている方ばかりなのも大きな魅力です。

毎回そういう熱い思いをもった方に出会えますし、私たちの技術でデザインの可能性をどう広げるかを一緒になって悩み、伴走していく時間は最高に刺激的です。そうして深く関わったプロジェクトが、最終的に建築として目の前に立ち上がっていくのを見ると本当に感動します。建築やモノづくりが好きな人には、とてもやりがいのある仕事だと思います。

歴史の転換点、その最先端に立つ

松岡:長い建築の歴史において、効率性や合理性を重視した直線的な表現の時代を経て、現在は「より人間的な建築」を実現できる転換期を迎えていると捉えています。

本質的に居心地が良いと感じるような空間というのは、本来は平面や直線だけで完結するはずがないのです。これまでは技術やコストの壁に阻まれてきた有機的なデザインを、3Dプリンタというテクノロジーが「産業」として実現可能にする。自分たちの技術で新しい建築の未来を切り拓いていくという自覚を持って、日々プロジェクトに挑んでいます。

西田:たとえば、かつての「モダニズム」を振り返っても、歴史に残る建築や建築家が登場したその背景には、鉄やコンクリート、ガラスといった素材を工業化した、革新的な技術があったからだと思います。

そう考えると私たちの技術や実践は、次の時代の建築のあり方や、それを使いこなす次世代の建築家を生み出す原動力をつくっているのだと感じて、すごくワクワクしますね。

松岡:今は「型枠」に領域を絞って事業を展開していますが、今後は内装、外装、ランドスケープ、家具、プロダクトなど、あらゆる空間デザインへと領域を拡張していく計画です。型枠についても、脱型せずにそのまま仕上材になり、断熱や設備も組み込める多機能型枠「型枠2.0」を開発中です。こうしたジャンルに興味がある方も大歓迎ですので、私たちの挑戦に少しでも面白さを感じていただけたなら、まずはフランクにコンタクトをとっていただければ嬉しいです。

インタビュー:2026年6月10日 DigitalArchiオフィスにて
TOP写真・そのほか特記なき撮影:福田 駿


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