社員のほぼ半数、100名以上が意匠設計者という住宅に特化した完全自由設計の設計事務所、FREEDOM。「家という商品を提供するのではなく、クライアントの要望をいかに実現するかにコミットする」という設計手法やビジネスモデルを、同社・人材戦略推進部の谷崎氏、また意匠設計の金井氏、上田氏にインタビューしました。

谷崎雄亮氏(人材戦略推進部 部長/以下、谷崎):FREEDOMは1995年、会長の鐘撞正也が「クオリティの高い、お客様本位の家づくりをしたい」という思いから神戸で立ち上げた設計事務所で、昨年30年目を迎えました。設計・監理、監修を請け負うフリーダムアーキテクツ事業本部では100名を超える設計者を正社員とし、プラン作成から実施設計、監理まで一貫して、累計4000棟の住宅を手掛けてきました。
創業当時からデジタルマーケティングに注力し、集客力が高いことも強みです。そのためFREEDOMの設計者は営業活動をする必要はなく、デザインに集中してもらう環境があります。今すぐは建てないけど意思や希望があって店舗に来てくださったり、他社と迷ったりしているお客様もいます。顧客属性などのデータを分析して再来店や見学会のご案内を送るなど、顧客管理を徹底しているのもFREEDOMの特徴です。
設計した住宅の施工は審査をクリアした登録ビルダー(施工会社)に発注しています。FREEDOMから発注をすることで、ビルダー側が営業をする必要がないため、コストが削減されお客様の利益にもなっています。
設計と施工部門が一緒になっていると「家を建ててお金をもらう」という構図になり、どうしても収益構造において施工の比重が重くなったり、施工しやすさが優先されたりするなど、クライアントが建てたい家から離れてしまうことがあります。私たちはあくまで「クライアントの要望をいかに実現するかにコミットし、その要望を超える設計」を提供し、対価をいただきます。できあがった住宅が商品ではなく、100人の設計者それぞれが価値を提供する商品であるということがFREEDOMの考えです。

谷崎雄亮氏
—– 不動産部門も設置されているのはどのような背景があるのでしょうか?
谷崎:デザインも大事ですが、コスト、性能、そして土地も含めた複合的な要素で最善のプランを提供したいという思いから、土地探しも請け負っています。以前は両親の家を相続し建て替えるケースが多くありましたが、今は家づくりを検討しているお客様の6~7割は土地がない段階で相談に来られます。
設計事務所なら「不動産屋で土地を探してから来てください」というのが一般的なのですが、不動産会社ではクライアントの「建てたい家」を実現するためのコストや必要な広さまでは分からずに土地を勧め、予算のほとんどを土地購入で使ってしまっていたり、建築が難しい土地だったり、理想の家をつくるために土地を探すはずが、実現困難になりかねません。
FREEDOMではクライアント、土地や資金関連をアドバイスするコンサルタント、そしてプランを考え基本設計まで行うプランナーが、契約前の打ち合わせ段階から図面やパースで建物をイメージしてもらい、トータルファイナンスまですり合わせしています。理想の家を実現する確率を上げるため、土地の個性や懸念事項にも対応するのが私たちの強みです。

プランナー業務を手掛ける金井由好氏(写真右)と、実施設計を手掛けるアーキテクト業務を経て現在プランナー業務を手掛けている上田庸介氏(同左)
金井由好氏(関東第1プランニング部 部長):私は現在、契約前のお客様との打ち合わせや、設計の初期段階であるプラン作成を行うプランナー業務を担当しています。家づくりは初めてで具体的な希望が決まっていない方がほとんどなので、どんな家を建てたいかはもちろんですが、まず「どうして家をつくりたいのか」ということから話してもらいます。
例えば「クライアントが対面キッチンにしたいと言ったから対面キッチンを入れる」のではなく、なぜ対面キッチンにしたいと思っているのか、真の理由や背景を会話から解像度高く理解することで、クライアントが思い描く理想の設計につながります。潜在的に思っていることを引き出し、言語化することは設計者にとって重要なスキルだと思います。
中途入社の設計者のなかには、クライアントと話すことが得意ではなかった人もいますが「これだけは聞く」というFREEDOMの型があり、入社後の研修で身に付けています。また必ずプランナーとコンサルタントの2人で打ち合わせに参加し、ヒアリングの漏れや齟齬などを防ぐ体制を取っています。
上田庸介氏(関東第4プランニング部 部長・以下、上田):私は入社当初、プランナーからバトンを受け取った後の実施設計を担当するアーキテクト業務を担当していました。設計者のなかには自分の色を出したいと考える人もいると思いますが、FREEDOMの設計者が目指すのはクライアントの希望を叶える最適解だと認識しています。そのなかで、さまざまなクライアントや土地と出会い、設計を進めることができるやりがいがある環境です。


上田:FREEDOMではクセの強い土地を手掛けることが多々あります。そのような土地は安価であるものの、ハウスメーカーやほかの設計事務所に断られたというクライアントも少なくありません。私は三角形などの変形地や旗竿地などは逆にやる気が出ます(笑)。
これは担当プランナーがクライアントとともに「眺望のよいルーフテラス」という希望を叶えるため選んだ高台のプロジェクトです。プランナーからある程度の間取りが決まった状態から引き継いで実施設計を行いました。敷地の一部分が扇形になっていて、斜線制限が厳しい代わりに相場より安価な土地でした。予算内で希望を叶えるためのゴールに向け、建築にかかるコストを見極め、実現できる価格の土地を探すのが私たちの仕事です。


上田:こちらは親族所有の土地に若夫婦が建てた住宅です。周辺の人通りが多く、建物も隣接しているなかでプライバシーを守りたかったので2階LDKを提案しました。周囲からの目線が窮屈だったのでバルコニーの壁を立ち上げて空だけ見えるようにしています。2階からの眺めを想像してもらうのは難しいのですが、BIMの活用や動画、VR、3Dモデルなどで具体的に仕上がりや暮らしを「見える化」してイメージできるようにしています。
—– 100名以上もの意匠設計者を直接雇用する設計事務所として、組織運営で重視されているのはどのような点でしょうか?
谷崎:FREEDOMでは現場と人事が協力して、「設計事務所で人を育てるにはどうしたらいいか」を研究し、研修制度や面談を充実させています。実績としては5年間で20名の新卒を採用し、退職者は2名だけです。新卒社員には座学の研修から始め、社内外注で仕事を振り、教育担当がフィードバックしながら仕事を覚えてもらいます。
ただ研修カリキュラムを用意するだけでなく、どこまでできているのか、何が苦手でどこで伸び悩んでいるのか、現場と人事、上長と教育担当、上長と本人といった1 on 1の面談で把握しフォローしています。中途入社の方にも、1人でクライアント対応ができるまで先輩社員が付いて指導しています。
新卒、中途に関わらず、誰もが適切に評価されて適切に対価をもらうことが大切です。そのための評価制度があるのですが、目に見える業務目標の達成という成果だけでなく、お客様にFREEDOMのよさを伝えてファンを増やせたか、日々の進捗管理やコミュニケーションといったポータブルスキルまで、行動目標も評価していることは設計事務所ではめずらしいのではないでしょうか。設計者を育て適切に評価する組織運営で、クライアントの要望の実現にコミットできる設計者を増やし、長く働いてもらうことがFREEDOMの成長につながると思っています。

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インタビュー:2026年6月30日 FREEDOM本社にて
Photograph:Shun Fukuda