東京の湾岸エリア有明に〈無印良品 東京有明〉が2020年12月3日(木)にオープンしました(良品計画プレスリリース発表は2020年10月28日)。
【TECTURE MAG】では、11月30日に開催されたプレス内覧会に参加して現地を見学。当日はSNSにも投稿しましたが、改めて内外観の画像とテキストをまとめた現地レポートをお届けします(クレジットなき画像は無印良品提供)。
〈無印良品 東京有明〉は、住友不動産による東京都江東区有明2丁目における大規模再開発で、ホテル、劇場、200を超える商業店舗が入ったショッピングシティ、温浴施設、トリプルタワーマンション、認定こども園や広場などを有する「有明ガーデン」の中の1施設としてオープン。売り場面積は4628.75m²(約1400坪)で、昨春「世界最大の旗艦店」としてオープンした〈無印良品 銀座店〉を抜き、関東最大の規模を誇ります。
〈無印良品 東京有明〉では、無印良品のほぼ全商品を揃え、暮らしの全部が揃う、百貨店を超える”百八貨店(ひゃくはっかてん)”を名乗ります。加えて「暮らしのサポート」、「家づくり」、「街づくり」の3つをテーマにおいた8つの新商品・サービスを提供。「空間を売る」をコンセプトとして掲げています。
関東最大の品揃えは圧倒的です。青果やベーカリーなどの食料品、衣料・生活雑貨はもちろん、MUJI HOUSEによるリフォーム事業や⼾建住宅の販売も行い、暮らしの全てに関わる商品とサービスを、3フロアで展開します。
小さな子どもを連れたファミリー客でもゆっくりと買い物を楽しめるように、コロナ予防を前提とした、これまでにない非接触型の「遊び場」が求められました。子ども服・用品売り場の前に設置されたのが、無印良品の家具の端材を材料に、アーティストのつちやあゆみ氏が制作した大型の仕掛け遊具〈カッタンコットン歯車〉と〈輪唱の◯〉。動きを見て、音を聞いて楽しめるようになっています。
#上と下の動画:遊具制作者 つちやあゆみ氏のfacebookより(12/08シェア)
2Fは収納やリビング用品、照明器具などのインテリアが中心です。住空間に特化した売り場構成になっています。
黒家具のシリーズは、有明限定の商品となります。このほか、北欧ビンテージ家具も同フロアにて取り扱いあり。
1Fの「GREEN&FLOWER」にて取り扱っている大型の観葉植物も、他店にはない有明限定の商品です。高さ100cm以上の鉢植えは、専用車で自宅まで配送してくれます。
1Fは、日常使いのフロアとして、青果、飲料、冷凍食品などの食料品の売り場です。ベーカリーやジューススタンド、MUJIのカフェもあります。
〈無印良品 東京有明〉は、品揃え・物量を誇るだけの店ではないのも大きな特徴です。都内では初、民間の店舗としても初めてという「回収BOX」を1Fに設置。家庭で余っている食材[*]や、古着、ペットボトルの回収などを受け付けます。
*賞味期限が2カ月以上あるなどの回収規定あり
回収された食材は、江東区を通じてフードバンクに渡り、福祉施設などに送られます。
「量り売り」は、東京有明にて先行して始まる販売スタイルです。食の基本となる雑穀や乾物を中心に、コーヒーやナッツやドライフルーツなどの50種類以上の食品を、20g以上から1g単位で1個ずつ、1人分ずつの最小単位で販売します。必要以上にモノを持たない、「食のコンパクトライフ」を提案します。
無印良品では、働く場から街のコミュニティまでを大きな住空間と捉え、生活者だけでなく、企業、行政に対しても「感じ良い空間づくり」を提案していく考えです(無印良品 東京有明 松橋衆店長プレゼンテーションより)。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響で、人々が自分たちの住まいの内部を見直すようになったこと、また有明店開店前に約1年をかけて準備したリサーチの結果などから、商品を売る前段階に必要なこととして、不用品の引き取りや預かりサービス、インテリア相談や採寸、掃除のアドバイスなどを行い、人々の暮らしをサポートします。
有明の店舗では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により、大きく変化した人々の生活様式に対応するため、自分にとっての心地よさや個性を生かした、「これでいい」という居住空間、永く使うための汎用性や、機能としての合理性などを一緒に考え、ライフスタイルの変化にあわせた家づくりを、もっと楽しく、もっと身近に、自由に行うためのサービスを展開します。
2Fエントランス付近に配された部分リフォーム、DIYサポートのコーナーは、有明限定の展示およびサービスです。
「DIY」コーナーでは、各種相談を受け付けるほか、同店舗の顧客として想定されている、近隣のタワーマンションの住まい手が、自分たちの手で壁を塗るなどのリフォームを行えるよう、左官や塗装のワークショップも行います。
2Fの奥には、「無印良品の家」を展開するMUJI HOUSEが販売する平屋商品「陽の家」のモデルハウスが実物⼤1/1で展示されています。
「陽の家」は、デザイン監修を原 研哉氏が担当し、MUJI HOUSEが設計した平屋住宅。「木の家」「窓の家」「縦の家」などを発売してきた「無印良品の家」シリーズでは初となる、平屋専⽤商品です(有明店の1/1モデルとは間取りが逆ですが、開発コンセプトは、今年7月に公開されたPR動画が詳しいのでそちらを参照してください)。
#無印良品の家 YouTube公式チャンネル「開発者が語る 無印良品の家「陽の家」商品開発ストーリーとそのコンセプト(2020/07/21)
「陽の家」では、耐震性や断熱性など住宅に求められる本質的な性能を追求しつつ、庭とつながる全開⼝サッシや、⽊質感を⼤切にしたインテリア・エクステリアデザインを採⽤しているのが大きな特徴です。
外壁の断熱には外張り断熱と充填断熱を併せたダブル断熱を標準仕様としており、断熱性能は平成25 年度省エネ基準値(UA値0.87)に対して、UA値0.40という性能値を実現しています(当モデル棟での数値)。
また、今年のグッドデザイン賞2020ではベスト100に選出されています(受賞理由「グッドデザイン賞2020」公式ウェブサイトより)。
「陽の家」モデルハウス概要
間⼝:6.5間✕奥⾏4.25間(11.83m✕7.735m)
延床⾯積:73.70m²(22.29坪)
販売価格:1,615万円(税込1,777万円)
無印良品の家:https://www.muji.net/ie/
「陽の家」の1/1展示に加えて、マンションの1室を想定した原⼨⼤の「INFILL 0(インフィルゼロ)」のモデルルームもお目見え。MUJI HOUSEとして無印良品の店頭では今回が初のモデルルームとなります。
フルリノベーションサービス「INFILL 0」とは、本当に必要なものだけを残して、暮らしの「0(原点)」をつくり、⾃分らしく住まいを編集するという、MUJI HOUSEが手がけるリノベーション事業のいわば”原点”。マンションのフルリノベーションの相談も受け付けます。
MUJI HOUSE「INFILL 0」
https://www.muji.net/renovation/infill0/
街全体を”自分たちの住まう空間”と捉えている〈無印良品 東京有明〉では、家、オフィス、商業施設、公共の分野において、企画から考える空間づくりの法人サービスを開始するのも特筆点です。店内には法人カウンターも設け、オンラインも使った両面で、全国からの相談にも対応します。
いわゆるコロナ禍により、今後さらに加速することが予想される空き家や過疎化など、地域の課題や暮らし方の変化にも対し、場の交流と地域活性化をテーマに、クライアントと共創した提案を行うとのこと。
その際に有効となるのが、無印良品や、アートやグリーンも扱うIDÉE(イデー)[*]といった、良品計画が有するコンテンツ。さらに、本稿で後述する、地域共創を軸にした空間づくりを行ってきた各店舗でのノウハウも活かした企画や、自然素材を活かした内装や什器、地域ならではの特注家具やアートの設計、サイン・チラシのツールデザインまでをトータルでプランニングするとしています。
*現在の「IDÉE」イデー運営は良品計画
11月30日のプレス内覧会では、良品計画の代表取締役会長の金井政明氏と、無印良品のアドバイザリーボードを務める原 研哉氏(日本デザインセンター代表取締役社長)によるトークセッションも行われました。
良品計画の金井会長は、トークセッションに先立つプレス説明会の場でも繰り返されたワード「お客さまの生活に巻き込まれる店」でありたいと改めて語り、有明の店舗以外でも、全国的に、地域との関係性を重視した「地域の役に立つ店」を目指すと強調。行政、産・学、市民の三者が「お互いさま」の社会を構築していくのが理想であると述べました。
今後の出店計画としては、空間・住空間の事業を柱として、有明店のような店舗を今後、20-25年かけて、政令指定都市に少なくとも1つは開業していきたいとのこと。
良品計画と出店した地域との関係性としては、これまでに、地域の出店者を迎えて食品や野菜、特産品などを販売する「つながり市」を店舗ごとに開催してきたほか、今春には、山形県酒田市と「地域発展を目指すパートナーシップ協定」を締結した「酒田プロジェクト」や、今年7月には広島県安芸太田町で〈無印良品 広島パルコ〉と協業した「はじまりの家プロジェクト」がスタート。また、今年6月にオープンした新潟・直江津の店舗では、コロナ期で買い物に出られない地域のお年寄りのために、移動販売バス(MUJI to GO)を試験的に導入するなど、それぞれに地域にあわせて展開しています。
金井会長は、このような取り組みは、自社だけに限らず、全国に2万3,300店あるという「地元のスーパーと一緒に、店をつくっていきたい」とも語りました(ひと昔前、大型店舗が地方に出店すると、古くからある地元商店街から売り上げを奪い、結果的に地域全体が衰退してしまうケースが全国で多発した時代があったことを思えば、極めて対照的な戦略と言えます)。
続いてマイクを握った、無印良品のアドバイザリーボードを務める原氏は、withコロナ・ニューノーマルと呼ばれる昨今においては、地に足がついた産業を自分たちで育て、内需をつくっていかねばらないと指摘し、ゆえに無印良品においても、「生活に巻き込まれる店」=「暮らしの絡まりしろ」をつくるようなサービスを展開していく必要があると、有明店のコンセプトの背景を語りました。
2019年9月に販売を開始した平屋商品「陽の家」について、デザイン監修を担当した原氏は、今回の湾岸部の店舗でのプレゼンテーションに際して「間取りなどは特に変えていない」と語り、「ウッドデッキで外部と緩やかにつながっているこの家は、例えば、畑から野菜をとってきたり、庭と仲良くすることができるし、どこにでも建てることができる」と、ローンチ以来のコンセプトを改めて説明。さらに、「これからの高齢化社会を考えたときに、昇り降りしなくても住む平屋の方が絶対に暮らしやすい。建築家が考える家は建築だが、MUJIのそれは”暮らし”である」として、「1人ひとりでそれぞれに異なる暮らしの”お手伝い”が、無印良品ならばできる」と大きな期待を寄せました。
開業日:2020年12月3日(木)
所在地:東京都江東区有明2-1-7 有明ガーデン モール&スパ1-3F(Google Map)
売場面積:4628.75m²(約1,400坪)
(物販 4278.34m²・約1,294坪)、Café&Meal 350.41m²・約106坪)
営業時間:10:00-20:00
フロア商品構成:1階:日常使いのフロアとして、食とカフェ、ベーカリー、グリーンを展開 / 2階:住まいに関するフロアとして、生活雑貨の販売からリフォーム/リノベーションに関するサービスを展開 /
3階:生活の基本が揃うフロアとして、衣料品、日用消耗品を展開
無印良品 公式ウェブサイト 店舗案内:https://www.muji.com/jp/ja/shop/detail/046625