中東・サウジアラビアの西海岸に沿った28,000km²の土地と水域に、高級リゾートを建設する、リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)の大型プロジェクト「レッド・シー・プロジェクト(The Red Sea Project)」が進行中です。
開発エリアに含まれる紅海(The Red Sea)には大小の島々が90以上点在し、渓谷、休火山、歴史的文化遺産なども有しています。
メインのハブ島として、プロジェクトの中心となるシュライラ島に建設される大型施設〈コーラル・ブルーム(Coral Bloom)〉のビジュアルとコンセプトが、サウジアラビアのディベロッパーと、ホテルのデザインを担当する設計事務所よりそれぞれ発表されました。イメージ動画も公開されています。
#The Red Sea Development Company YouTube 公式チャンネル「Coral Bloom designs at The Red Sea」(2021/02/11)
指揮を執るのはサウジの皇太子
開発を担うのは、このプロジェクトを推進するために設立された、ザ・レッド・シー・デベロプメント・カンパニー(The Red Sea Development Company: TRSDC)。サウジアラビアの公的投資基金(PIF)が100%出資された非公開の株式会社で、同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子が会長を務めます。
ジョン・パガーノ氏(TRSDC CEO)コメント:「サウジアラビアでしか見られない素晴らしい動植物からインスピレーションを得た、コーラル・ブルームに訪れる人々は、目にするものすべてに心揺さぶられ、贅沢な体験を存分に楽しんでいただけることでしょう。シュライラ島(Shurayrah)は、コーラル・ブルームのゲートウェイとして、画期的な建築とサステナブルなデザインの世界的なスタンダードとなることを目指しています。これは、単に環境を保護するだけでなく、リジェネラティブ(Regenerative)なアプローチを適用することによって達成されます。」(TRSDCプレスリリースより引用)
https://www.theredsea.sa/en
TRSDCでは、2040年までに希少種保全効果の30%アップを実現することを掲げており、生物多様性を高めるため、島々の75%は手を加えられることなく、そのまま残されます。シュライラ島は、開発のために選ばれた残りの25%、22ある島のうちの1つです。
ホテルの設計はフォスター+パートナーズ
再生可能な高級リゾート観光地をコンセプトに掲げた〈コーラル・ブルーム(Coral Bloom)〉のホテルの設計とデザインを担当するのは、ノーマン・フォスター率いるアメリカの建築事務所、フォスター アンド パートナーズ(Foster + Partners)。現地時間2月11日に同社もニュースリリースを発信し、公式ウェブサイトにも情報を掲載しています。
ジェラルド・エベンデン氏(Gerard Evenden / フォスター+パートナーズ スタジオ責任者)コメント:
私たちのビジョンは、シュライラ島のありのままの自然からインスピレーションを得て生まれました。ホテルは、まるで流木のようにビーチに打ち上げられた珊瑚が砂丘に根付き、色鮮やかに花咲いた印象を与えるデザインとなっています。私たちが使用する素材や環境への影響を最小限に抑えたデザインは、島の自然環境の保護を約束します。同時に、加えられるものは、すでにそこにあるものを引き立てるように設計しています。よって、コーラル(Coral / 珊瑚)・ブルーム(Bloom / 咲く)という名が付きました。
https://www.fosterandpartners.com/
自然環境の保護と強化
「コーラル・ブルーム」では、生物多様性(バイオダイバーシティ)への配慮を中心に据え、島のマングローブやその他の生息地を破壊しないように設計されます。砂浜の自然浸食を最小限にとどめるよう配慮する一方で、島の自然環境を強化し、その修景によって、生物の新たな生息地を創出します。
イルカの形をした島には、新しいビーチとラグーンが作られます。グランドラインを上げるなどの施作は、世界的な海面上昇の脅威への防衛帯として役立ち、いかなる生物の生息地および海辺の自然を損なうことなく、島に既にあるものを維持、または強化することを目的としています。
没入型のホテル設計
シュライラ島に建設される11軒のホテルは、世界でも有数のホテルブランドで構成されます。すべてのホテルとヴィラは、島の景観をドラマチックに演出し、自然と景観の中に溶け込むように配置されます。周囲に高い建物がないことで、壮大な景色を自由に楽しむことができると同時に、島がゆっくりと姿を現していくような神秘的な感覚をゲストに提供します。
ホテルのデザインは、過去12カ月間における世界の変化や、旅行者の要望にも応えます。例えば、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行に伴い、スペースの確保や隔離といったことにも対応し、建物内には密閉された廊下がありません。
世界最大規模のプラントから再生可能エネルギーを24時間供給
プロジェクトを推進するTRSDCでは、世界最大規模の地域冷房プラントを同エリアに建設し、24時間体制で再生可能エネルギーを稼働、コーラル・ブルームを含めたエリア全体に供給し、効率的に集中冷房する計画です。
また、リゾート全体で、オフサイト(遠隔地)で製造される軽量で熱質量の少ない素材を使用することで、よりエネルギー効率の高い構造となり、環境への負荷を低減させます。
プロジェクト全体のスケジュールでは、2022年末までに、フォスター事務所がデザインする国際空港と4軒のホテルが開業予定。第一段階として計画されている残りの12軒のホテルの開業は2023年となる予定です。
そのうちの1つ、「The Red Sea Ummahat Resort」プロジェクトには、日本の事務所、隈研吾建築都市設計事務所も参加。TRSDCのYouTube公式チャンネルには、設計中のホテルのコンセプトについて、隈氏が語っているインタビュー動画や、隈氏が手がけるホテルのビジュアルも含めたコンセプトムービーなど、関連動画が多数公開されています(下記にて動画をシェア。画面上では Killa Design: Killa Architectural Designもクレジットされています)。
#The Red Sea Development Company YouTube 公式チャンネル「Designs inspired by nature at The Red Sea Project」(2021/12/01)
#The Red Sea Development Company YouTube 公式チャンネル「Progress at The Red Sea Project」(2020/11/10)
紅海(The Red Sea Project)で計画されている全ての施設が完成するのは2030年。22の島々と6つの内陸部から成る敷地に、合わせて50のリゾートが誕生。最大8,000室のホテルと約1,300軒の住宅物件を提供するとともに、高級マリーナ、ゴルフコース、娯楽施設、レジャー施設なども併設されます。
〈コーラル・ブルーム〉TRSDC プレスリリース(2021年2月15日発信 日本語版)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000074313.html
フォスター+パートナーズ 最新ニュース(現地時間2月11日リリース発信)
https://www.fosterandpartners.com/news/archive/2021/02/designs-for-shurayrah-island-in-the-red-sea-revealed/