ハヤカワ文庫に代表されるSFやミステリ、海外翻訳本の刊行で知られる早川書房(創業:1945年8月)。東京都千代田区神田多町に構える本社の1階で喫茶室・クリスティを運営していることは、よく知られています。
1988年より営業し、作家や編集者たちに愛されてきた同店がこのほどリニューアル、曜日や時間帯で異なる営業形態をとる〈サロンクリスティ〉としてオープンしました。
店舗のリニューアル企画と空間デザインを、UDSが担当。同社のプレスリリースによれば、神田という地域とのつながりをより強めることを意識して、出版文化の未来へつながる場として、読者や執筆者、翻訳者、出版業界、そして地域の人々が「集い」「読み」「創る」場を目指すとのこと。
今回のリニューアルプロジェクトは、早川書房の本社ビル改装計画に伴い、1階部分を地域や出版文化の未来に貢献できるような場にしたい、という同社の思いからスタートしたいます。
早川書房は企業理念「ONE AND ONLY」を掲げて、出版社の中でもいち早くSNSやWebサービスの活用に乗り出し、新しい企画にも積極的に取り組んでいる出版社です。そうしたオンラインサービスに加えて、本を愛する人たちのつながりを支援し、出版業界を盛り上げていくリアルな場を社屋に設けたいという構想がかねてよりあったとのこと。
プロジェクトの企画と空間デザインを担当したUDSでは、神保町にて、2018年より、企画・設計・運営を手がける書店・喫茶店・コワーキングスペースが複合した「神保町ブックセンター」を展開しているほか、近年では「下北線路街」の諸施設など、地域の魅力を引き出し、コミュニティを育む場の企画・設計・運営を各地で手がけてきました。これらの実績と知見をもとに、今回のリニューアル企画・空間デザインを行ったとのこと。
テーマ:
– 本を軸に人がつながって交流と発見が育まれ
– 新たな書き手や翻訳者を応援する場となり
– 本を届ける社員がより健やかで豊かな時間を過ごせる
上記のテーマを掲げる〈サロンクリスティ〉では、これまで同様に「喫茶室」であると同時に、歴史ある出版社が提案・構築する、新たな発信地・発信源となることを目指し、曜日や時間帯によって異なる営業形態をとる計画です(後述)。
建物正面部分は、店頭の開口部を5.5mと大きくとり、神田のまちに開かれたエントランスに。木材を用いることで、温かな印象を持たせています。
界隈にもかつて並んでいた奥に長い長屋形式を生かして、通りから奥まで見通せるとともに、奥へ進むにつれて静かで落ち着ける、発信や発想が生まれるようなモダンな空間にデザインしたとのこと。
思考・思索に集中できる、書斎のような半個室空間を用意。出版関係者の打ち合わせにも適したガラス壁と書籍に囲まれた個室なども設けられました。
平日の日中は「喫茶室クリスティ」として営業。地域の人々にもこれまで以上に日常利用の機会を増やすため、店内に新たにベーカリーを併設しています。テイクアウトはもちろん、こだわりのコーヒーなどとともに店内で飲食できます。
そして平日の夜は、地域の人々をはじめ、早川書房の読者、執筆者、出版関係者らとの交流をはぐくむバプとなり、「PUB クリスティ」として営業します。
昔から出版に関する多くのアイディアや交流、議論が生まれた「飲みの場」の風景を、オンライン全盛の今の時代にも創出することを目指しての展開です。
さらに、上記の2形態が営業しない休日には、出版・書店関係者や読者、地域の人たちに向けたコワーキング「執筆室クリスティ」になるのが、リニューアルした〈サロンクリスティ〉の大きな特徴です。
現時点で、営業は土曜日の月1回となる見込みで、閑静で落ち着いた休日の神田で、執筆や仕事、読書などに利用できる場として、未来の執筆者を支援する考えです。
所在地:東京都千代田区神田多町2-2(Google Map)
延床面積:115m²
事業主・運営:ハヤカワ
企画・空間デザイン:UDS
リニューアルオープン:2023年2月13日
「喫茶室クリスティ」
営業時間:平日 11:00-18:00
定休日:土日曜・祝日
「PUB クリスティ」
営業時間:平日18:00-22:00
定休日:土日曜・祝日
早川書房 サロンクリスティ 公式X
https://twitter.com/salon_christie
※コワーキング「執筆室クリスティ」の営業日はローンチ時点で未定
UDSプレスリリース
https://uds-net.co.jp/article/15227