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[Report]坂倉準三設計の旧上野市庁舎をホテルに再生

泊まれるモダニズム建築〈泊船 HAKUSEN〉

[Report]坂倉準三設計の旧上野市庁舎を図書館一体型ホテルに再生

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日本の近代・モダニズム建築を代表する建築家、坂倉準三が設計した三重県伊賀市にある旧上野市庁舎(1964年竣工)の旧南庁舎が、公共図書館との一体型複合施設となるスモールブティックホテル〈泊船〉(はくせん)として再生されました。

7月21日のホテル開業に先立ち、プレス関係者を対象として行われた試泊会を写真でレポートします。

坂倉準三と旧上野市庁舎

日本の近代建築を代表する建築家である坂倉準三(1901~69年)は、ル・コルビュジエに師事し、日本にモダニズム建築を広めました。

代表作には、〈旧 神奈川県立近代美術館〉〈大倉山ジャンプ競技場〉などがあり、機能性と美しさを兼ね備えたデザインが高く評価されています。建築だけでなく都市計画にも携わり、〈新宿駅西口広場〉や渋谷の〈東急会館〉など、戦後の日本の風景をつくり上げた人物の一人です。

また、〈羽島市庁舎〉〈呉市庁舎・市民会館〉〈枚岡市庁舎〉〈岐阜市民会館〉など公共建築も多く手掛けており、1964年に竣工した〈旧上野市庁舎〉(旧南庁舎)は、現存する数少ない坂倉による公共建築です。

泊船

連続する水平窓に障子が見える

〈旧上野市庁舎〉のある伊賀市は、旧上野市、旧伊賀町、旧島ヶ原村、旧阿山町、旧大山田村、旧青山町が平成16年11月1日に合併して誕生しました。伊賀地域の中心だった合併前の旧上野市庁舎を坂倉準三が設計し、2019年に現伊賀市庁舎に機能を移したのち、伊賀市の指定有形文化財となっています。

コルビュジエの影響を受けたピロティや、水平連続窓、機能性重視のレイアウトが採用された庁舎は水平ラインを強調した低層の構えによって町と人にやさしく開かれた佇まいが特徴で、この歴史的価値と建築的意義を未来に継承するため、再生されることになりました。

MARU。architectureによる文化財建造物の保存と活用の両立

建物の改修設計はMARU。architecture(マル・アーキテクチャ)が担当。ホテル、図書館、カフェなどの機能をもち、建築・デザイン・文化・宿泊体験のすべてが交差する新たな交流拠点を目指し、船谷ホールディングスグループ(本社:三重県伊勢市)によって運営されます。

坂倉準三は多くの公共建築を手掛けていますが、そのままのかたちで現存しているのはこの〈旧上野市庁舎〉(旧南庁舎)のみで、MARU。architectureは、市民に親しまれたこの〈旧上野市庁舎〉の文化財としての価値を残しながら再生するためのデザインを採用しています。坂倉準三の「建築は生きた人間のためのもの」という信念を体現した歴史的建造物である市庁舎を、まさに今を生きる市民のために再生する計画です。

保存対象との共生。指定文化財の新たな活用

指定文化財を再生するにあたり、保存対象となった部分については、手を加えることなくそのままの姿を残すことが決められました。使用されず老朽化していた煙突は、建物のアイコニックな外観を形成するために、管理・運営上の観点から撤去の話が出たものの、足元を補強して保存しています。廊下の壁も保存対象になっており、撤去して客室を増やしたり広げたりせず、幅広い廊下空間に市庁舎時代の面影が感じられます。

泊船

煙突は足元を補強して保存

泊船

2階の中庭。トップライトやコンクリート製の樋(ガーゴイル)が残されている

泊船

2階のトップライトから1階の図書館にやわらかく光が届く

打ち放しの列柱や水平連続窓が特徴的な外観

泊船

かつて議員控室や市長室が並んでいた2階廊下は、部屋側の壁が保存対象になっており、結果として幅は広い廊下空間が残る

泊船

廊下壁や枠に手を加えなかったため、客室には前室がある(Photo: hiroaki tanooka)

泊船

コンクリートの柱もそのまま客室に残し、アクセントとなっている

手すりを新設した階段。4.6mごとに均等配置した東西方向の壁柱が見える

ホテルとしての快適性、デザイン性を高めながらの再生

スタンダードツイン、スタンダードクイーンから最上級の泊船スイートといった客室、共用空間には、坂倉が自らの建築のためにデザインし、天童木工が製造している家具が置かれ、三重にゆかりのあるさまざまなアーティストの作品も飾られています。

「泊船」という名前は、この土地がかつて琵琶湖の湖底だったという言い伝えや、施設内にある図書館を「言葉の湖(うみ)」に見立て、その上に錨をおろして滞在するというイメージから着想を得ているといいます。

泊船

もともと市長室として使用されていた客室は広さ88㎡のホテル唯一のスイートルームに。タモ材の壁や窓に当時の面影を残す(Photo: hiroaki tanooka)

泊船

各客室、受付など、随所にアート作品が飾られ、身近に鑑賞できる(Photo: hiroaki tanooka)

泊船

客室に置かれた書籍は部屋ごとに異なる

泊船

旧市役所のためホテルは市街地にあり、障子は窓外の視界をやわらかく遮る狙いもある

泊船

坂倉デザインの椅子は各室にある

コーナースーペリアキッチン付きの客室(Photo: hiroaki tanooka)

泊船

天童木工が手掛ける坂倉デザインの家具は共用部にもある

泊船

レセプションサイン(Photo: hiroaki tanooka)

施設概要

名称:泊船(はくせん)
開業日:2025年7月21日(伊賀市中央図書館は2026年春オープン予定)
所在地:三重県伊賀市上野丸之内116 旧上野市庁舎 SAKAKURA BASE
客室数:19室(バリアフリー客室含む)
運営:船谷ホールディングスグループ

設計:MARU。architecture
家具:天童木工
スタイリング:NOTA&design
ロゴ・サイン:UMA / design farm
アート:安永正臣、壺田太郎、藤本玲奈

 

トップ写真および特記なき写真撮影:TEAM TECTURE MAG

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坂倉準三建築・旧上野市庁舎がホテル〈泊船〉として2025年夏開業予定

MARU。architectureが図書館一体型スモールブティックホテルへの改修設計を担当

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