ラグーンを守りつつ共生するスクエアな桟橋

メキシコに位置する世界最大の淡水サンゴ礁を探検する〈エコパーク・バカラル〉

CULTURE 2025.08.07

〈エコパーク・バカラル（Ecoparque Bacalar）〉設計：コレクティボc733（Colectivo c733）

メキシコのキンタナ・ローに位置する〈エコパーク・バカラル（Ecoparque Bacalar）〉は、世界最大の淡水サンゴ礁であるバカラル・ラグーンに設計された、動植物群への影響を最小限に抑えながら、その環境を探検できる桟橋です。

メキシコを拠点とする建築デザイン集団コレクティボc733（Colectivo c733）が設計しました。

注目ポイント

都市化によりラグーン湖岸に残る唯一のマングローブ林

建築プログラムを最小限に縮小し、自然環境を尊重する設計

地形や植生への干渉を回避する高低差のある200m四方の桟橋

地元木材を活用し、柱・梁・基礎を兼ねる効率的な構造システム

（以下、コレクティボc733から提供されたプレスキットのテキストの抄訳）

バカラル・ラグーンは、世界最大の淡水サンゴ礁であり、生きたストロマトライト（シアノバクテリア類の死骸と泥粒などによって作られる層状の構造をもつ岩石）が存在する数少ない場所の1つである。

この地質学的構造は、生命進化の過程を現在に伝える貴重な存在である。また、ラグーンに面するバカラル村の湖岸には、同地域に残された唯一のマングローブ林が存在しているが、都市化により極めて脆弱な状況に置かれている。

環境負荷を抑えた設計戦略

プロジェクトの主な戦略は、求められた建築プログラムを可能な限り縮小し、敷地に生息する動植物群への影響を最小限に抑えながら、その環境を探検できるよう行動することであった。

訪問者がラグーンの水面をなぞるように歩くことができるよう、マングローブや既存樹木への接触を避けながら、高さを変化させた200m四方の桟橋を計画した。

地産材による効率的な構造システム

桟橋の構造体には、地元で採取され、かつ認証を受けたチコザポテ材が使用した、柱、梁、基礎の三機能を一体的に果たすよう設計された効率的な構造システムにより、必要最小限の資源で建築的安定性を確保している。

水質保全とマングローブ再生の景観戦略

景観戦略を強化するため、建築面積の削減とともに、プロジェクトは周辺環境の修復にも注力している。集落から流入する排水による水質汚染を緩和するために、自然のフィルターとして機能する凹地や雨庭が設けられ、劣化したマングローブの再生が進められている。

さらに、このプロジェクトでは、10000年にわたる地域の独自の生物多様性を木に記録しタイムライン形式で展示を行っており、訪問者が自身の環境への意識を高め、この場所の保護に努めるよう促している。

以下、コレクティボc733のリリース（英文）です。

Bacalar Lagoon is the world’s largest freshwater bacterial reef and a site of invaluable evolutionary treasure with living stromatolites. However, the area is also home to the last remaining mangrove on the shores of Bacalar, which is exposed to urban sprawl and other threats. To minimize the impact of human activity, the project’s main strategy was to reduce the requested program, act with precision, and tread lightly on the site’s rich flora and fauna.

The centerpiece of the project is a 800-meter long pier, a public and open pathway with varying heights to avoid disturbing the mangroves while providing a platform for visitors to glide over the lagoon. The solid parts of the pier house facilities such as a research laboratory and services area, while the shade of tall trees covers an open plain. The project also includes an efficient structural system built with certified local wood, finding the right balance to act as a column, beam, and foundation at the same time.

The landscape strategy is designed to mitigate water pollution through natural filters, depressions, rain gardens, and the rehabilitation of degraded mangroves. The project reduces the amount of built space, reinforcing the strategy and the site’s natural systems. Additionally, the project features a museum exhibit in the form of a timeline of the unique biodiversity of the area, recorded on the wood, inviting visitors to become more aware of their environment and to conserve the site.

コレクティボc733 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/c733_/

ラグーンを守りつつ共生するスクエアな桟橋