現在の倉敷市出身の建築家、浦辺鎮太郎(うらべしずたろう / 1909-91)の回顧展です。生誕110年を記念した、没後初となる大規模な展覧会であり、昨年の10月から12月にかけて〈倉敷アイビースクエア〉で開催された展覧会が、浦辺が手がけた作品が残る横浜の地に巡回するもの。会期中、関連イベントとして、みかんぐみの曽我部昌史氏、京都工芸繊維大学教授の松隈 洋氏らが登壇するシンポジウムも4回にわたってオンラインで配信されます(要申し込み)。
浦辺は、岡山県児島郡粒江村(現・倉敷市粒江)に生まれ、旧制第六高等学校を経て、1930年に京都帝国大学工学部建築学科に入学し、武田五一(1872-1938)、藤井厚二(1888-1938)らの薫陶を受けました。卒業後は、倉敷絹織(現・クラレ)に入社。そこで、2年先輩だった大原總一郎(1909-68)と運命的な出会いを果たします。浦辺は同社の営繕技師として、地道な設計活動に約30年にわたって従事。1961年に〈大原美術館分館〉、1963年には〈倉敷国際ホテル〉の設計に携わり、戦後に手がけた作品約300のうち約2割が倉敷に建てられています。自身の事務所(倉敷建築事務所)を設立して独立したのは1964年、55才のときでした。
浦辺の仕事で特筆されるのは、倉敷の伝統的な町並みと調和する近代建築の在り方を追求するなかから、クラフト(手仕事)とインダストリー(工業化)を融合させ、日本の近代建築の新しい境地を切り拓いた点にあります。1974年の〈倉敷アイビースクエア〉では、赤煉瓦造の紡績工場を宿泊施設へと用途転用(コンバージョン)する、当時としては先駆的な試みを実践し、翌年の日本建築学会賞作品賞を受賞しています。
〈倉敷市民会館〉(1972)や〈倉敷中央病院〉(1975-81)、〈倉敷市庁舎〉(1980年)では、装飾や屋根、素材の色や質感などを統合して、華やかさと豊饒さを併せもつ建築をつくり上げています。そして、その仕事は横浜市の都市デザイン室長で都市プランナーの田村 明(1926-2010)との出会いによって横浜へと展開し、〈大佛次郎記念館〉(1978)や〈横浜開港資料館〉(1981年)[*]、〈神奈川近代文学館〉(1984年)などを手がけます。これらの建築を通じて、同時代に隆盛したポスト・モダニズムとは一線を画した、独自の建築世界を切り拓いていきました。
*フライヤーおもて面の建築:横浜開港資料館(1981年) 撮影:奥村浩司(Forward Stroke Inc.)
昨年から今年にかけて開催されるこの展覧会は、営繕技師の時代から晩年までの、浦辺鎮太郎の仕事、その全軌跡を辿るものです。横浜会場では、浦辺の仕事が果たした倉敷や横浜のまちづくりへの貢献について、新たな展示も設けられています。地域に根ざし、伝統や風土と対話しながら近代建築のあり方を問い続けた浦辺の仕事が、これからの建築やまちづくりへ大きな手がかりを与えてくれるものとなるでしょう。(en)
「建築家浦辺鎮太郎の仕事 横浜展 -都市デザインへの挑戦」
会期:2020年11月14日(土)~12月13日(日) ※会期中無休
開場時間:10:30-18:30(入館は18:00まで)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館2Fスペース(神奈川県横浜市中区新港1-1-1)
入場料:一般 1,000円、大学生 500円、高校生以下無料
※「M meets M – 村野藤吾展・槇 文彦展」会期中、相互割引を実施(半券提示で入館料100円割引)
主催:浦辺鎮太郎建築展実行委員会
後援:神奈川県、横浜市、一般社団法人DOCOMOMO Japan、公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部、一般社団法人日本建築学会
特別協力:浦辺設計
会場:リモートシンポジウム(Zoomウェビナー)
定員:500名(開催前日17:00までに要申込)
受講料:無料
※各回ともCPD認定対象プログラム
第1回「ウラチンがヨコハマへやってきた!」
開催日時:2020年11月13日(金)18:00-20:00
司会:曽我部昌史(神奈川大学教授 / みかんぐみ共同主宰)
パネリスト:重村 力(神戸大学名誉教授 / 神奈川大学客員教授 / いるか設計集団)
中井邦夫(神奈川大学教授 / NODESIGN一級建築士事務所共同主宰)
鈴木伸治(横浜市立大学教授)
#浦辺鎮太郎建築展実行員会 YouTube公式チャンネル:浦辺鎮太郎ヨコハマ金曜セミナー第1回「ウラチンがヨコハマへやってきた!」2020年11月13日(2020/11/18)
第2回「工業化と協同への夢」
開催日時:2020年11月20日(金)18:00-20:00
司会:松隈 洋(京都工芸繊維大学教授)
パネリスト:
花田佳明(神戸芸術工科大学教授)
和田耕一(和田建築設計工房主宰)
柳沢 究(京都大学大学院准教授)
第3回「倉敷のまちづくりと浦辺鎮太郎」
開催日時:2020年11月27日(金)18:00-20:00
司会:松隈 洋(京都工芸繊維大学教授)
パネリスト:
重村 力(神戸大学名誉教授 / 神奈川大学客員教授 / いるか設計集団)
竹原義二(無有建築工房主宰)
楢村 徹(倉敷建築工房・楢村徹設計室主宰 / 広島大学客員教授)
第4回「異相の建築家ウラチンが求めたもの」
開催日時:2020年12月4日(金)18:00-20:00
司会:笠原一人(京都工芸繊維大学助教)
パネリスト:
笠原一人(京都工芸繊維大学助教)
西村清是(浦辺設計代表取締役)
ディベート参加者(予定):
松隈 洋(京都工芸繊維大学教授)
重村 力(神戸大学名誉教授 / 神奈川大学客員教授 / いるか設計集団)
花田佳明(神戸芸術工科大学教授)
曽我部昌史(神奈川大学教授 / みかんぐみ共同主宰)
中井邦夫(神奈川大学教授 / NODESIGN一級建築士事務所共同主宰)
鈴木伸治(横浜市立大学教授)
聴講方法:氏名、所属、連絡先メールアドレスを記載して、事務局宛にメール送信
送信先:浦辺鎮太郎建築展実行委員会事務局(担当:中川)
セミナー申込専用メールアドレス:urabeten@gmail.com
※CPD認定を申請する場合はその旨を記載すること
申込締切日:各回とも開催前日の17:00まで
展覧会公式ホームページ:https://urabeten.jp/