COMPETITION & EVENT

展覧会「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史のある風景と反復進行」

会場設計をALAの梅澤竜也氏が担当、GYRE GALLERYにて9/25まで

2022年8月22日初掲、8月26日会場設計コンセプト寄稿を追記

東京・表参道のGYRE GALLERY(ジャイル ギャラリー)にて、展覧会「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史のある風景と反復進行」が8月15日より開催されています。会期は9月25日まで。

本展では、戦後に語られた日本の「空虚(ヴォイド)」を前提に、すでにこの世を去った作家と、現在アート界の第一線で活躍している、大山エンリコイサム氏、金氏徹平ら次世代の日本の作家たちの作品によって、戦後の美術家たちを逆照射し、意味から解き放たれた中心のない空虚な戦後美術史のある風景を浮かび上がらせることを試みています。

会場の設計を、ALA INC.を主宰する建築家の梅澤竜也氏が担当しています。

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場エントランス

出品作家:河原 温(1932-2014)、三島喜美代(1932-)、中西夏之(1935-2016)、高松次郞(1936-1998)、赤瀬川原平(1937-2014)、三木富雄(1937-1978)、北村 勲(1942-2008)、北山善夫(1948-)、青山 悟(1973-)、金氏徹平(1978-)、加茂 昂(1982-)、大山エンリコイサム(1983-)、須賀悠介(1984-)、MIKA TAMORI(1984-)、国民投票(1992-)

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

会場構成について
2022年は戦後77年で、明治維新から太平洋戦争終結までが77年となる。つまり日本人の身体性が近代化と戦後とを等分に経過したことを意味する。展覧会では戦後美術を主に扱いながら、ロラン・バルトの「表徴の帝国」における日本的空虚をメインテーマとして、作品が選ばれている。

ギャラリー入口には黒い発砲スチロール製のゲートをレイヤー状にたて、その日本的空虚が漂う展示世界への象徴的な境界をつくった。発砲スチロールは98%が空気でできているため、そのヴォイドな物質性が展覧会テーマと親和があると考えた。
発砲スチロールを構成するスチレンの分子構造は、リモネンやアセトンといった有機溶剤に触れると結合して、融解する特徴を持つ。その分解と結合を繰り返す特徴を活かした構造体を考えた。

具体的には、高さ3mを超える5つのレイヤを同材の筋交いで連結し、自立させる。そこに除光液を吹き付け、発砲スチロールを溶かしていく。各レイヤー上で筋交いにあたる部分のみテープで保護することで、それ以外の部分がドロドロになる。比重が低い発砲スチロールだからこそ可能なリダンダンシーの高い構造によって、自立限界の緊張感と非物質的な表象を会場にて実現した。(梅澤竜也 / ALA INC.)

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

会場風景

開催概要
フランスの哲学者ロラン・バルト(1915-1980)は、「表徴」が溢れている中心のない空虚な日本に注目し、それを「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」と表現した。天皇、都市、女形、すき焼き、礼儀作法、パチンコ、学生運動も表徴であって、意味から解放された日本文化の自由度を描写した。そして、「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」は、西欧的な「意味」への脅迫的な執着からの解放という捉え方を提示した。日本文化は、記号群(シニフィアン)の連鎖が意味(シニフィエ)によって停止されることなく連鎖し展開していく。この「日本」の捉え方を別の角度によって反転すると「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残る」という自決する数ヶ月前に遺した三島由紀夫(1925-1970)の言葉が今の日本に反響する[*1]。ロラン・バルトと三島由紀夫の双方が捉えた日本の「空虚」を前提にして、現代活躍している次世代の日本の作家によって戦後美術家たちを逆照射(反復進行[*2])し、意味から解き放たれた中心のない空虚な戦後美術史のある風景を浮かび上がらせていく。

*1.1970年(昭和45)7月7日付の産経新聞夕刊に掲載された三島由起夫のエッセイ
*2.反復進行(独:Sequenz)とは、音楽用語の1つ。ある楽句を音高を変えながら反復させることを指す。ドイツ語「ゼクヴェンツ」(Sequenz)に由来して「ゼクエンツ」とも呼ばれる

河原 温 作品

河原 温 1958年制作
材質:インク・紙、サイズ:608×449mm Courtesy of NAGOYA GALLERY

今年8月に太平洋戦争終結から77年が経過する。77年というのは明治維新から太平洋戦争終結までと同じ長さである。つまり、1868年から1945年までが77年間、そして1945年から2022年までが同じく77年間である。戦前と戦後の長さが同じになる。このような歴史的連続性を前提にして、「戦後美術史のある風景と反復進行」をテーマにした展覧会を企画した。

国民投票〈起承転結〉

国民投票〈起承転結〉 1997年制作
材質:黒板にチョーク・ミクストメディア、サイズ:1050×1420mm

本展に出品される作品が、作品単体では完結されず時代を超えて反復から連鎖へ、そして転移していく様態を提示し、結果的に全ての出品作品は自ずと時代的連続性を表象することとなる。このことを本展では「反復進行」[*2]と呼んでいる。本展の構成趣旨は、「日本」の戦前や戦後の時代精神を担った作家と現代活躍している新たな世代を代表する作家へと連繫し、時間の連続性を浮かび上がらせ、さらに昭和、平成、令和を通してそれぞれの時代精神を対象化し、そしてわれわれが今後何処へ向かおうとしているのかを問いかけていくものである。(本展企画者 飯田高誉)

北山善夫〈主題の喪失 3〉

北山善夫〈主題の喪失 3〉 2010年制作
材質:鳥の子紙にインク、サイズ:447×370mm Courtesy of MEM

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

GYRE 吹き抜け空間での展示

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

GYRE 吹き抜け空間での展示

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

GYRE 吹き抜け空間での展示

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史のある風景と反復進行」展

会期:2022年8月15日(月)〜9月25日(日)
開廊時間:11:00-20:00(GYRE 営業時間に準じる)
休廊日:8月22日(月)
会場:GYRE GALLERY
所在地:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F(Google Map
主催:GYRE、スクールデレック芸術社会学研究所
企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
企画協力:高橋洋介

会場設計:梅澤竜也(ALA INC.)
デザイン:乗田菜々美(graphic potato)
意匠協力:C田VA(小林丈人+髙田 光+太田 遼)
機材協力:Suga Art Studio
撮影協力:幸田 森
PRディレクション:HiRAO INC
協力:The Kyoto Shimbun、LEESAYA、MEM、NAGOYA GALLERY、Mizuma Art Gallery、SCAI THE BATHHOUSE、Takuro Someya Contemporary Art、Yumiko Chiba Associates

「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展

作家プロフィール・展覧会詳細
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/void-of-nippon77/

スクールデレック芸術社会学研究所 概要
https://www.sgurrdearg.com/about/


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暮らしの香り 山中湖アトリエ
撮影:西川公朗、ライトパブリシティ、エイム

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