スイス現代美術を代表する映像インスタレーション作家、イヴ・ネッツハマー(Yves Netzhammer)による展覧会「イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い」が、栃木県宇都宮市の宇都宮美術館にて3月10日より開催されています。
本展は同作家の日本における初の個展となります。
デジタル・アニメーションの虚空間と奇妙なオブジェを掛け合わせ、土地の記憶の深層に潜行して起源の謎を照らし出すネッツハマーが、大谷採石場という巨大な地下空洞を宿す街、宇都宮と出会います。
イヴ・ネッツハマー(Yves Netzhammer)プロフィール
1970年スイス北部の都市シャフハウゼン生まれ。建築製図やデザインを学んだのち、1997年より作家活動を開始。ピピロッティ・リスト(1962-)の次の世代を担う映像インスタレーション作家として注目を集め、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレではスイス館代表を務めた。
これまでにサンフランシスコ近代美術館(2008年)、ベルン美術館(2010-11年)など各地で個展を開催。大学や病院など、公共建築と一体化したプロジェクトも手がけ、現代的な感性と機知にあふれた作品で知られる。
長編デジタル・アニメーション映画『旅する影』を2024年に公開予定。
スイス現代美術の「今」を体現する作家、イヴ・ネッツハマーは、通常の語りの論理を超えて展開するデジタル・アニメーションの映像に、自動機械など風変わりなオブジェを掛け合わせ、世界の起源や自己の根拠をめぐる問いが忘却の淵に押しやられながらもなお明滅する領域を、繊細に描き出してきました。
本展では、これまでの代表的な映像作品を紹介するとともに、宇都宮の大谷石(おおやいし)の採掘場跡である地下空洞に触発され、作家が竹を用いて現地で制作した大規模な新作インスタレーションが披露されています。
また、本展の会場である、宇都宮市の市政100周年を記念して「うつのみや文化の森」の敷地内に建設された宇都宮美術館(設計:岡田新一設計事務所、松井源吾+ORS事務所)。作品が設置される土地や建築の記憶を肌で読み解くネッツハマーが、周囲の森の情景を建物内に効果的に取り込んだ美術館建築および空間に対し、自身の作品で対話を交わすことを試みています。
本展に分け入るための3つのキーワード
[線]
ネッツハマーの表現の起点は、コンピューターによるデジタル・ドローイングの純化された線にあります。ドローイングの航跡それ自体はエレガントなまでに明晰でありつつ、描かれたイメージには、世界に対する違和の痛みを感じさせるような奇妙さが漂います。線は、ロープや針金などを用いてさらに現実の三次元空間へと展開されます。[人像]
ネッツハマーのデジタル・アニメーションには、顔をもたず、性別もさだかでない抽象的な〈人像〉が繰り返し登場します。映像の中で、それらは有無を言わさぬ状況の展開に巻き込まれ、ときには血を流し、煩悶し、危ういコミュニケーションに身を投じます。〈人像〉は、無防備な傷つきやすさと同時に、変容へと開かれた可塑性を感じさせる存在だと言えるでしょう。[潜る]
設置される場や建物の深層記憶に感応するネッツハマーの作品には、地下や水中へと潜る〈人像〉がたびたび現れます。宇都宮の大谷採石場跡、さらに近隣の足尾銅山跡の地下空間を訪れ触発されたネッツハマーが、われわれの深層に広がる空洞にどのように潜り、なにを照らし出すのか?
会期:2024年3月10日(日)〜5月12日(日)
会場:宇都宮美術館
所在地:栃木県宇都宮市長岡町1077(Google Map)
開館時間:9:30-17:00(最終入館時間 16:30)
休館日:月曜(4月29日、5月6日を除く)、4月30日(火)、5月7日(火)
観覧料:一般 1,000円、高校生・大学生 800円、小学生・中学生 600円
※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保険福祉手帳の提示で本人と介護者1名まで無料
※宇都宮市在学または在住の高校生以下は無料(「宮っ子の誓いカード」または学生証の提示が必要)
※3月17日(日)と4月21日(日)の「家庭の日」は割引設定あり
※4月2日(火)「市民の日」は宇都宮市民は観覧無料(住所が確認できる身分証明書などの提示が必要)
TEL:028-643-0100
主催:宇都宮美術館、下野新聞社
後援:在日スイス大使館
助成:スイス・プロ・ヘルベティア文化財団
構造:SRC造
建築規模:B1F、2F
延べ床面積:9,388m²
設計:岡田新一設計事務所、松井源吾+ORS事務所
施工:大林組、渡辺建設、中村土建、日豊工業
竣工:1996年
宇都宮美術館 公式ウェブサイト
http://u-moa.jp/
SNS
https://twitter.com/utsunomiya_moa
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