COMPETITION & EVENT

展示ブースから考えるサステナブルな取り組み

[Report]オルガテック東京2024

5月29日から31日まで、東京ビッグサイトにて「オルガテック東京2024」が開催されました。オルガテックはドイツ・ケルンで70年の歴史があるオフィス家具の専門展示会で、東京での開催は今年が3回目となります。163ものブランドが出展して開かれた同展示会では、鮮やかな色合いの家具やパビリオンのような大型ブース、軽やかなファブリックを用いた装飾など、各社さまざまなブース設計が見られました。

ここでは会期終了後の廃棄物が問題とされる展示会ブースにおいて、解体後の再利用を見据えてデザインされたサステナブルな企業ブースをレポートします。

「ブースから家具へ」ブース使用材料の再利用率78%!

自社工場へ戻り再利用される材料でつくられたブース(写真提供:アダル)

昨年より展示ブースにおける大量廃棄物の課題に取り組んでいる業務用家具メーカーのアダル(福岡県福岡市)は、スペインの建築家、ミゲル・フィサクからインスピレーションを受けたブースデザインを展開。「Use and Reuse」をコンセプトに、自社の家具製造で使用されているウレタンフォームやウレタンチップなどを用いてブースを制作し、展示会終了後は再び家具製造に活用されます。

壁面を構成するウレタンは30㎜の厚みで、ソファの装飾として使用されるボタン締めをブースの装飾兼壁面への固定材として使用。ボタンを外すことで容易に解体でき、自社の製造工場でソファ内部の木部緩衝材として再利用される予定です。

「身近で安価な材料の新しい一面」を引き出すデザインを考えたというブース受付カウンター(左)と壁面サンプル(右。写真提供:アダル)

商品が置かれる展示台はウレタンチップと廃材を再利用したプレカット材、ベニヤ板で構成され、それぞれ再利用しやすくするため接着剤は使われておらず、解体後はこちらもソファ内部の隅木や木部緩衝材に再利用されます。展示台だけで見ると再利用率は96%にもなります。

アダルは今年、ブースコンセプトやデザイン性などで審査される「ORGATEC TOKYO Awards」の準グランプリを受賞しました。

約3000本の塩ビパイプで神秘的な空間を表現した最大面積のブース

会場中央でひときわ目立つ大きなブースを構えるイトーキは「SHIFT DESIGN」をイベントテーマとし、新しいワークプレイスや家具の提案を行いました。

ブースに使用されているのは約3000本の塩ビパイプ。時折揺れる塩ビパイプがそれぞれのブランドエリアを区切りつつ一体感も感じられる展示空間で、使用された塩ビパイプはオルガテック終了後、すべてリサイクルされる予定だといいます。

ブースデザインのテーマは「家具と空間の関係性についてのリファレンス」。木々と霧からインスピレーションを得た独特な雰囲気を醸し出す(Photo: OOKI JINGU)

創業以来、海外特許品の輸入販売や海外企業とのコラボレーションを行ってきた同社。今回はITOKIブランドに加え、Knoll、STELLAR WORKS、esPattio、Poul Henningsen Furniture、PROJECT J1890 NEW YORKの計5つのグローバルブランドを展示し、「オフィス家具のプラットフォーマー」としてのイトーキを表現するブースとなっており、「ORGATEC TOKYO Awards」で「準グランプリ」および「出展者が選ぶベストブース」を受賞しました。

コンテナボックスが窓に! ブランドの世界観を体験する旅に出るライナー

コクヨはAny way、SAIBI、DAYS OFFICEの3ブランドを、「KOKUYO Central Station」で発車を待つ3台の列車に見立てたブースのインテリアとして展示。カジュアルな客車や食堂車のようなインテリアでブランドを表現した車両へ乗り込み、ブランドの世界観を体験できる趣向を凝らした構成です。

「理想の”はたらく”のありかたを探す旅」をコンセプトにしたストーリー性のあるコクヨブース(写真提供:コクヨ)

始発駅を模したブースは木工部材や経師貼り、トラスのシステム部材などを組み合わせた構造で容易に解体できるように設計され、ライナーの窓を表現している壁面は実際に物流で使用されている半透明のコンテナボックスによってつくられています。会期後はそのまま再利用されるとのことです。

ガラスブロックのように光を通すコンテナボックス。会期後は解体され物流拠点で再利用される

 

次回、オルガテック東京2025は2025年6月3~5日に開催されます。

トップ画像: イトーキブース(Poul Henningsen Furniture) / Photo: OOKI JINGU
特記なき写真: TECTURE MAG編集部

 

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