2024年9月19日初掲、9月22日会場写真とテキスト追加
現代イタリアを代表する建築家・デザイナーであり、アーティストとしても活動する、ミケーレ・デ・ルッキ(Michele De Lucchi|1951-)の日本初公開となる作品が披露される展覧会「六本木六軒:ミケーレ・デ・ルッキの6つの家」が、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3にて9月20日より開催されています。
ミケーレ・デ・ルッキ(Michele De Lucchi)
建築家、デザイナー、アーティスト。AMDL CIRCLE 主宰。
1951年イタリア、 フェラーラ生まれ。1970年から80年代にかけて、前衛的なデザイナー集団・アルキミアやメンフィスの中心的人物の1人として活動。1988年から2002年まで、1908年創業のタイプライターの製造・販売会社であるオリベッティのデザインディレクターを務めたほか、1987年には世界的ベストセラーとして知られる照明器具〈トロメオ〉(Artemide)のデザインでコンパッソドーロ賞を受賞。ヨーロッパの有名企業の家具デザインを手がけるとともに、文化施設、インダストリアル、住宅など多様な建築プロジェクトを実現してきた。2000年には伊国のアゼリオ・チャンピ大統領(当時)よりイタリア共和国オフィサーの称号を授与される。2001年ヴェネチアIUAV教授。2006年キングストン大学より名誉博士号授与。2008年よりミラノ工科大学デザイン学部教授。国立アカデミア・ディ・サン・ルカ(ローマ)、アカデミア会員。2018年には建築誌『domus』の編集長を務める。2022年コンパッソ・ドーロ・キャリア賞受賞。2024年アカデミア・デッレ・アルティ・デル・ディゼーニョ(フィレンツェ)、アカデミア会員、フランス共和国文化通信省より、芸術文化勲章・オフィシエを受勲
20年以上にわたり、ミラノとアンジェーラ(ヴァレーゼ県)の工房で、ドローイング、絵画、木彫のオブジェ・模型の制作に取り組む。これらの制作活動が、建築形態の本質を追求する原動力、職業上のプロジェクトのインスピレーションの源となっている。2003年にはパリのポンピドゥー・センターが彼の作品の多くを収蔵したほか、欧米および日本の主要な美術館もデザイン作品を収蔵、そのヒューマニスティックなアプローチが国際的にも評価されている。
彼が創設・主宰する学際的なスタジオ・AMDL CIRCLEは、建築、インテリア、デザイン、グラフィックなどさまざまな分野で表現力豊かで戦略的なプロジェクトをクライアントに提供している。
本展は、2018年に交わされた、デ・ルッキと三宅一生(1938-2022)との対話をきっかけにして始動。建築家としての活動とともに、手仕事への情熱からデ・ルッキが長年取り組んでいる創作活動の1つ、彫刻〈ロッジア〉シリーズより、木製とブロンズ製のそれぞれ3点の「ロッジア(=6つの家 [セイ カーゼ] と名付けられた作品)」を見ることができます。制作過程の映像も公開され、安藤忠雄の設計で知られる21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3の空間にてインスタレーションとして展開されています。
「六本木六軒:ミケーレ・デ・ルッキの6つの家」は、ミケーレ・デ・ルッキが手がけてきた建築形態の研究を、21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3の空間のために構成したものです。人々が生きる空間とはいかなるものか。自分自身と他者、人と都市、あるいは自然と共に生きるための助けとなる、健全な建物とはなにかを模索する場となっています。
タイトルの「六本木六軒」とは、会場があるエリア・六本木が「6本の木」を意味すること、その由来はかつてこの地に6軒の武家屋敷があったとされる1説からとられています。「6つの家」および「6つの家族」の意も含まれるとのこと。
本展で展示されている6つの作品は、多岐にわたるデ・ルッキのアートワークのなかの〈ロッジア(イタリア語で”涼み廊下”の意)〉と名付けた彫刻シリーズに位置付けられます。デ・ルッキはこの6つの住宅(SEI CASE / セイカーゼ)を「呼吸する建築、光を通す透明な家である」と表現しました。
本展でデ・ルッキは「間(あわい)の空間」という考えを探求したとのこと。それは、家の内と外を物理的に分割するものではなく、内で営まれる生活と外の環境を結びつけ、2つが融合する場を指します。
この企図を反映して、〈ロッジア〉の壁にあたるディテールには、日本家屋の障子と、ヨーロッパの住居における窓のフレームを想わせる意匠の要素が見られ、洋の東西は分かれるものの、両者には類似性があるとデ・ルッキは語っています。
この6つ彫刻作品は、一見すると同じ素材であるかのように見えますが、素材は2種類で明確に異なり、木製(ウォールナット材)とブロンズでつくられています。
会場で流れているメイキング動画でも明らかになっていますが、デ・ルッキはまず自らの手で作品の模型をつくって構想を進め、そこから木製の〈ロッジア〉をつくり上げています(2015年)。
彼にとって、建築的な作品をつくるにあたっての模型製作は、同時に2つを体感することができない建築の内と外の空間を同時に、1つのものとして捉えるために必要な行為であるとのこと。
そしてブロンズの〈ロッジア〉は、デ・ルッキ謹製の木の〈ロッジア〉を元に、職人の手により鋳造のための型がとられ、制作されています。
木とブロンズという全く異なる2つのマテリアルを用いたことについて、デ・ルッキは次のように語っています(2024年9月19日に会場で開催されたプレスカンファレンスでの説明より要約)。
「木は、人類が最初に出会った、魅力的かつ文明史的にみても重要な素材でした。ただし、それをさらに美しいものへと加工するには、青銅という金属の発見と鋳造技術の発展まで待たねばなりませんでした。つまり、素材の本質は異なりますが、木とブロンズは密接に関わっていると私は考えています。
そして、日本とイタリアには、職人の手仕事への深い敬意(リスペクト)が存在します。今回の展覧会で、木とブロンズを用いて〈ロッジア〉をつくり、1つの空間に配置することは、これら異なるもの同士を結びつける架け橋となるでしょう。」
「〈ロッジア〉は、伝統的な日本の茶室を想わせると同時に、建物の内と外との間に連続的な空間をつくり出そうと試みる、現代の先端建築を想起させます。自然の驚異的な力と人間のはかない本質を共存させるため、建築と人と自然との関係はますます重要なものとなり、私たちは生き方の新たなふるまいを模索する必要があるのです」(ミケーレ・デ・ルッキ コメント / プレスリリースより)
6つの彫刻作品を据えた台座もまた、デ・ルッキが本展のためにデザインしたものです。
素材は無垢のオーク。表面には、木材を安定させ、耐水性や防腐機能などを高めるアセチル酸化処理を施しています(制作:UniFor社)。
会期:2024年9月20日(金)〜10月14日(月・祝)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
所在地:東京都港区赤坂9丁目7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン(Google Map)
開館時間:10:00-19:00
※六本木アートナイト特別開館時間:9月27日(金)、28日(土)10:00–22:00
休館日:火曜
入場料:無料
企画:ミケーレ・デ・ルッキ
特別協賛:三宅デザイン事務所
技術協賛:UniFor
*.UniFor社:技術協賛企業。1969年イタリアで設立(現在はMolteni Group傘下)。オフィス家具システムの開発・製造、カスタマイズデザインを手がけるワークプレイス・ソリューションの先端企業。建築の文化的サポートを数多く手がけている。
開催日時:2024年9月21日(土)11:00-11:45 ※終了しています
言語:イタリア語(日本語逐次通訳)
参加費:無料(予約不要、座席なし)
21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3 ウェブサイト
https://2121designsight.jp/gallery3/