東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して2024年10月1日に開校した東京科学大学の大岡山キャンパス(東京都目黒区)にある東京科学大学博物館[*1]の主催で、企画展示『東京科学大学博物館 2025年特別展示 篠原一男と篠原研究室の1960年代 -「日本伝統」への眼差し』が4月19日から5月2日にかけて開催されます。会場は、同キャンパス内にある、創立70周年記念講堂[*2]2階ギャラリーにて。
関連して、会期初日に「篠原一男生誕百年記念シンポジウム」も開催されます(聴講無料、予約不要)。
*1.東京科学大学博物館:東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学の統合に伴い、東京科学大学博物に改称。本館は旧称東工大大岡山キャンパスの正門脇に位置し、建築家の篠原一男の設計で知られる百年記念館(建物および施設の沿革については同博物館ウェブサイト「博物館ごあいさつ」を参照)
*2.70周年記念講堂:建築家の谷口吉郎(1904-1979)をはじめとする、当時の東工大建築学科の教員と職員からなる復興部が設計を手がけ、1958年頃に竣工(施工:清水建設)。同キャンパス内に現存する本館、西1号館と並び、2013年7月に文化庁の登録有形文化財(建造物)(詳細は文化庁「文化遺産オンライン」および旧東工大ウェブサイト「キャンパスみどころ紹介」ページを参照)
会期:2025年4月19日(土)〜5月2日(金)
会場:創立70周年記念講堂
客席数:611
所在地:東京都目黒区大岡山2-12-1 東京科学大学(旧東工大)大岡山キャンパス内 CH-1
開場時間:10:30-17:30
休館日:なし・会期中無休
主催:東京科学大学博物館
メッセージ
東京工業大学のプロフェッサー・アーキテクトとして
篠原一男は、谷口吉郎、清家 清から続く「東工大のプロフェッサー・ アーキテクト」の系譜を継ぐ建築学科の教授/建築家である。
その抽象的で象徴性の強い一連の住宅作品の意匠は、「住宅は芸術である」という思想の表明とともに建築界の注目を集め、1972年に「〈未完の家〉以降の一連の住宅」で日本建築学会賞(作品)を受賞する。
篠原の鋭敏な感性は、やがて「美」の対象を現代都市東京の風景にまで拡げ、それを「カオスの美」と称して自らの創作原理に取り込み、代表作である〈東京工業大学百年記念館〉に結実させた 逝去後の2010年、ヴェネツィアビエンナーレは他界した芸術家に対しては異例のヴェネツィアビエンナーレ記念金獅子賞を故人の篠原に授与した。これは、篠原が世界的水準で後の世代に多大な影響を与え続けている事実を示している。「日本伝統 への強い関心 ―その構成原理の追求―
始まりは「日本伝統」への強い関心であった。東京物理学校(現・東京理科大学)数学科を卒業し東京医科歯科大学で数学の教鞭を執っていた篠原は、学会の合間に訪れた奈良の古社寺でその美に強く惹かれ、決意して1950年に東工大の建築学科に学士入学する。清家 清のもとで学び、1953年に図学講座の助手として本学教員としての歩みを始めた篠原は、1954年に処女作〈久我山の家〉を発表した。
—民家はきのこである— 1960年の著書『住宅論』(鹿島出版会)で土地の生活に根ざした作為のない民家の美しさをそう讃えた篠原は、その伝統的な空間の原理を「平面の分割」と「土間」に見出し、それを創作の手法として〈から傘の家〉(1961)や〈白の家〉(1966)などの名作を発表し、注目を集める。
1962年に助教授となった篠原は、篠原研究室の活動として3年間にわたり学生とともに伝統的集落の実測調査を実施した。それは民家の内部空間に感じた「美」の構成原理を外部との関係性の中で捉え直し、伝統的集落の美しさを創作原理として捉えようとする更なる試みであった。——次世代への遺産継承
篠原自身が「第一の様式」と呼んだ1960年代の住宅作品は、竣工から60年を過ぎた今日、篠原の作品を慕う次世代の手に渡り、大切に保存修復工事が行われている。
篠原の設計活動、芸術表現の元となった設計図面やスケッチ、写真や模型もまた、本学の博物館にて大切に保存継承するべく、アーカイブ化が進められている。
そして、歴史的建造物としての評価[*3]を受けた百年記念館には、 谷口吉郎設計の創立70周年記念講堂、清家 清設計の事務局1号館とともに、過去と未来を繋ぎ、大岡山キャンパスにアイデンティティを与え続ける存在としての役割が期待されている。(山﨑鯛介 東京科学博物館 教授)*3.歴史的建造物:百年記念館、70周年記念講堂ともに、日本におけるモダン・ムーブメントの建築としてドコモモジャパンに選定されている(70周年記念講堂はNo.190、百年記念館はNo.289 / 詳細は DOCOMOMO Japan ウェブサイトを参照)
篠原一男プロフィール
1925年 静岡県生まれ
1947年 東京物理学校(現在の東京理科大学)卒業
1947-50年 東京医科歯科大学で数学の教鞭を執る
1950年 東京工業大学建築学科学士入学
1953年同大学建築学科卒業、同大学図学講座助手(1962年に助教授、1970年より教授を務める)
1979-80年 ヨーロッパ5都市での個展開催
1980-83年 北米5都市での個展開催
1982-1986 同大学建築学科教授
1984年 東京での凱旋帰国展開催、同年イェール大学客員教授
1986年 東工大を退官、名誉教授。同年に篠原アトリエを設立、主宰
2006年 神奈川県内にて没
日時:2025年4月19日(土)14:30-17:00
会場:創立70周年記念講堂(Google Map)
登壇者:
山﨑鯛介(東京科学大学博物館教授
大塚 優(東京科学大学助教)
木津直人(東京科学大学助教)
坂本一成(東京工業大学名誉教授)
白澤宏規(東京造形大学名誉教授)
聴講料:無料(予約不要)
企画:東京科学大学博物館
キュレーター:山﨑鯛介
アシスタントキュレーター:小倉宏志郎
後援:Docomomo Japan、建築史学会、TIT建築設計教育研究会冬夏会
協力:篠原一男生誕百年企画委員会、東京科学大学山崎鯛介研究室
東京科学大学博物館ウェブサイト
https://www.cent.titech.ac.jp/
本展と開催時期を同じくして、東京・乃木坂にあるTOTOギャラリー・間にて、「篠原一男 空間に永遠を刻む——生誕百年 100の問い」が開催されています。