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金沢21世紀美術館 デザインギャラリー 企画展「ALTEMY PARK IN PROGRESS」:建築デザインスタジオ・ALTEMY(アルテミー)がSANAA建築の空間に仕掛けるささやかなトリックを見逃すな!

金沢21世紀美術館 デザインギャラリー 企画展「ALTEMY PARK IN PROGRESS」

建築デザインスタジオ・ALTEMY(アルテミー)がSANAA建築の空間に仕掛けるささやかなトリック

きょう、ロッカーの鍵をなくした人がいる。
きょう、プールの入り口で、お土産を落としてしまった人がいる。
そんな金沢21世紀美術館で起きているそれぞれの物語に、
ALTEMYが建築を通して変化を与える21年目の日常。

 

石川県金沢市にある金沢21世紀美術館にて、建築デザインスタジオ・ALTEMY(アルテミー)による企画展「ALTEMY PARK IN PROGRESS」が5月20日より開催されています。観覧は無料。5月30日には関連プログラムとして、「建築展という敷地」と題して、金沢21世紀美術館館長の鷲田めるろ氏、ALTEMYのメンバーらが登壇するディスカッションも開催されます(定員制、聴講は有料、要申込)。

ALTEMY(アルテミー)は、2019年に東京で設立された建築デザインスタジオです。代表を務める建築家の津川恵理氏のほか、戸村 陽、小西隆仁、丁 周磨の各氏がメンバーとして名を連ねます(プロフィールは後述)。

本展は、開館から21年目を迎える金沢21世紀美術館において、蓄積されてきた日常を再定義し、2025年の風景を静かに変容させることを企図して開催されます。

金沢21世紀美術館 外観

金沢21世紀美術館 外観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 内観

金沢21世紀美術館 内観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 外観

金沢21世紀美術館 外観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 内観

金沢21世紀美術館 内観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 外観

金沢21世紀美術館 外観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館

メッセージ

建築デザインスタジオ・ALTEMYは、建築と人との関係性を改めて問い直し、日常に豊かな変化を与えてきました。今回、金沢21世紀美術館の建築を再読し、その空間にささやかなトリックを仕掛けることで、訪れる人々は日常を疑うことになります。

ニコラ・ブリオー[*1]が『関係性の美学』を著した1998年から、6年後の2004年3月に金沢21世紀美術館は開館しました。まさにブリオーが標榜した関係性を築くためのアート作品が、金沢21世紀美術館には建設時に入れ込まれるかたちで開館を迎えました。たとえば、フロリアン・クラールの〈アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3〉では、知らない他者と声を介してつながるための装置となりました。そして Instagram の登場は、通称”ウサギ椅子”[*2]が、映え写真の聖地ともなる思わぬ効果も生みました。こうした来館者の抱く金沢21世紀美術館のイメージが、強く一般に浸透しています。

しかし、こうしたマジョリティの体験を反映してつくられてきた20年間のイメージに、日がな一日を過ごす来館者の姿は投影されていません。私たちは、椅子に寝転ぶ地元の来館者に、ぐるぐると美術館を廻りつづける小さな来館者達に、迷いながらロッカーの鍵を探す外国から来た来館者に、またラッパ[*3]に声をかけられない気恥しさを感じる来館者に対して、どう居場所を提供し続けることが出来るでしょうか。

この展示ではALTEMYと共にマジョリティを捉えるのではなく、とはいえマイノリティのみを捉えるのでもなく、それぞれの個(インディビジュアル)に目を向けます。今、この賑やかな美術館で、いかに個と向き合っていくかという課題にも直面しています。ALTEMYが仕掛けるささやかな建築が、来館者の身体と呼応しながら、公園のような金沢21世紀美術館はさらに輝いていきます。この展示を通して、マジョリティを解体しながら、21年目の日常を一緒に考えたいと思っています。


*1.ニコラ・ブリオー(Nicolas Bourriaud, 1965年-):フランス出身の理論家・キュレーター
*2.通称”ウサギ椅子”:金沢21世紀美術館を設計したSANAA(サナア)がデザイン、マルニ木工より販売されているチェア、現称〈SANAAチェア〉を指す。”ラビットチェア”とも称される。2004年に同館が開館してより、館内に置かれている
https://webshop.maruni.com/c/series/nextmaruni/g2946-23
*3.ラッパ:恒久展示作品の1つ、フロリアン・クラール〈アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3〉を指す

フロリアン・クラール〈アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3〉2004

フロリアン・クラール〈アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3〉2004
金沢21世紀美術館蔵
撮影:渡邉 修
写真提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 外観

金沢21世紀美術館 外観(撮影:渡邉 修)
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 内観

金沢21世紀美術館 内観(撮影:渡邉 修)
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 内観

金沢21世紀美術館 内観(撮影:渡邉 修)
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 内観

金沢21世紀美術館 内観(撮影:渡邉 修)
提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 内観

金沢21世紀美術館 内観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館
交流ゾーンにあるミュージアムショップは、本展会場のデザインギャラリーと同様、入館料なしで利用することができる

本展の特徴

日常にふとした気づきを与える「交流ゾーン」
ALTEMYがデザインしたささやかな仕掛けが、美術館のあちらこちらにそっと忍び込みます。
訪れる人々はその仕掛けによって日常の景色がいつもとは異なる表情を見せることに、徐々に気が付くでしょう。こうした仕掛けは、日常を疑い、新たな視点で自らの感覚を再確認するための刺激として働きます。他者の視線、声、影といった痕跡が浮かび上がり、それによって自分自身が他者とゆるやかにつながっていることを実感します。

誰かの日常を垣間見る「デザインギャラリー」
デザインギャラリーでは、個々の来館者が「誰かの日常」を共有し、他者の体験に静かに共感するための空間です。ここでは、ALTEMYが観察した日常の小さな物語が、インスタレーションを通じて提示されます。
デザインギャラリーでは、そうした日常の物語を訪問者自身が共有し語り合えるような仕掛けでもあります。それは直接的なコミュニケーションではなく、静かな共感を促す、言葉に依らない交流の場として機能します。

そして作られる金沢21世紀美術館の「21年目の日常」
本展が目指すのは、金沢21世紀美術館に蓄積されてきた日常を再定義し、開館から21年目を迎える2025年の風景を静かに変容させることです。この美術館は関係性の美学に基づく、賑やかで公園的な場所を提供してきました。その一方で、共有される日常というイメージから外れた個々の存在や孤独な時間まで、目を向けられてきませんでした。しかし、居場所を提供し続けることは公園を標榜してきた当館において、とても大事です。ALTEMYはそのマジョリティが築いてきた日常を解体し、来館者それぞれが個として過ごす時間にささやかな魔法をかけようと試みます。それは、「公園のような美術館」を回復する試みでもあります。
21年目の日常とは、固定されたマジョリティのイメージから解放され、より繊細で多層的な日常が息づく美術館の新たな風景です。


——以上、テキストは本展プレスリリースより

 

金沢21世紀美術館 外観

金沢21世紀美術館 外観
撮影:渡邉 修
提供:金沢21世紀美術館

 

出展者プロフィール

津川恵理、戸村陽、小西隆仁、丁 周磨による建築デザインスタジオで一級建築士事務所。津川が代表を務める。
必ずしも、建物にのみその結果を求めるのではなく、インテリア、ランドスケープ、プロダクト、ヴィジュアル・アート、インスタレーション、モビリティ、ファッションに至るまでを、建築の波及する範囲として等価に扱いながら、デザイン提案をおこなっている。

ALTEMY 近影

右から、丁 周磨、津川恵理、小西隆仁、戸村 陽のALTEMYメンバー

ALTEMYのデザイン理念に通底するのは、定常化された日常に、デザインによって新たな循環を生み出し、人の感性がより開放されるデザインを目指している(金沢21世紀美術館での本展も、まさに建築をつくることで、新しい日常を来館者にもたらす
ことを目指している)。
これまでの主なプロジェクトに、コロナ禍にポーラ美術館の受付空間のためにデザインされたパーテーション〈Spectra-Pass〉(2021年8月より導入)、神戸三宮駅前の広場を再開発した〈神戸市サンキタ広場〉(2021)、幼児の安全面に配慮しつつ隆起させた床が特徴的な認可保育園〈まちの保育園 南青山〉、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2024」のためのインスタレーション〈都市の共動態〉などがある。2040年に向けて東京の中心部の道路デザインを手掛ける「SHIBUYA PARK AVE. 2040 DESIGN COMPETITION」では最優秀賞を受賞している。

ALTEMY〈Urban Experiment〉(2019)

ALTEMY〈Urban Experiment〉(2019)
都市の歩行空間に漂う浮遊体が、感性に働きかける

ALTEMY〈Spectra-pass〉(2021)

ALTEMY〈Spectra-pass〉(2021)

ALTEMY〈阪急神戸三宮駅前サンキタ広場〉(2021)

ALTEMY〈阪急神戸三宮駅前サンキタ広場〉(2021) photo: 生田将人

ALTEMY〈Weaving Behavior〉(2023)

ALTEMY〈Weaving Behavior〉(2023)

ALTEMY〈まちの保育園 南青山〉(2024)

ALTEMY〈まちの保育園 南青山〉(2024)photo: GION

ALTEMY「渋谷公園通りデザインビジョン 触れる都市のマチエール」

ALTEMY「渋谷公園通りデザインビジョン 触れる都市のマチエール」イメージ(2024)

ARTEMY Website
https://www.alt-emy.com/

ALTEMY
PARK IN PROGRESS

会場:金沢21世紀美術館 デザインギャラリー、交流ゾーン
所在地:石川県金沢市広坂1丁目2-1(Google Map)
会期:2025年5月20日(火)〜2025年10月5日(日)
開場時間:10:00-18:00(金・土曜は20:00まで)
休場日:月曜(7月21日、8月11日、9月15日は開場)、7月22日、8月12日、9月16日
観覧料金:無料
主催:金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
協賛:LINNAS Design、OMO5金沢片町 by 星野リゾート
後援:北國新聞社
グラフィック:西村祐一(Rimishuna)
キュレーター:本橋 仁(金沢21世紀美術館レジストラー)
問合せ先:金沢21世紀美術館(TEL.076-220-2800)


関連プログラム:ディスカッション「建築展という敷地」

概要:形而上の次元をも含む広大な思考として「建築」が建ち上がる場として、いかに建築展は構成可能でしょうか?
金沢21世紀美術館で開催される「PARK IN PROGRESS」は、美術館のなかの展示ではありながら、建築を拡張するための建築展であるという自負を持ちながらキュレーションを行いました。つまり、建築展は、建築のオルタナティブな敷地ともなり得るという考えを持っています。そこで、本展覧会の展示をさらに深めるためのディスカッションを行いたいと思います。
折しも、日本建築学会が発行する会報誌『建築雑誌』の2025年5月号では、本展キュレーターの本橋 仁が編集した「建築展という敷地」という特集が発行されます。本展、そして特集を振り返りながら、建築展の可能性について考えます。
なお、本企画は、2025年2月27日に京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labで実施されたトークイベント「ICAM22報告会:ICAM22から考える建築アーカイブズ・キュレーションの現在と未来」に続くもので、建築展を巡る一連のディスカッション・シリーズの2回目として実施されるものです。(文:本展キュレーター・金沢21世紀美術館レジストラー 本橋仁)

日時:2025年5月30日(金)15:00-18:00(開場 14:30)
会場:金沢21世紀美術館 シアター21
定員:100名
参加費:一般 1,000円、学生 500円
主催:金沢21世紀美術館
共催:金沢工業大学建築アーカイヴス研究所、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab、けんちくセンターCoAK(Center for Co-Architecture Kyoto)
協賛:LINNAS Design、OMO5金沢片町 by 星野リゾート

コメンテーター
川勝真一(京都芸術大学教授。CoAKディレクター)
山崎泰寛(京都工芸繊維大学教授)
三宅拓也(京都工芸繊維大学准教授)
勝原基貴(金沢工業大学講師)
鷲田めるろ(金沢21世紀美術館館長)
津川恵理(ALTEMY)
戸村 陽(ALTEMY)
小西隆仁(ALTEMY)
丁 周磨(ALTEMY)

日時:2025年5月30日(金)15:00~18:00(開場 14時30分)
会場:金沢21世紀美術館 シアター21
定員:100名
参加費:一般1,000円 学生: 500円
参加方法:Peatix案内ページより要申し込み(詳細は下記URL イベント案内ページを参照)
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=25&d=2191
主催:金沢21世紀美術館
共催:金沢工業大学建築アーカイヴス研究所、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab、けんちくセンターCoAK(Center for Co-Architecture Kyoto)
協賛:LINNAS Design、OMO5金沢片町 by 星野リゾート

登壇者(予定):
川勝真一(京都芸術大学 教授/CoAKディレクター)
山崎泰寛(京都工芸繊維大学 教授)
三宅拓也(京都工芸繊維大学 准教授)
勝原基貴(金沢工業大学 講師)
鷲田めるろ(金沢21世紀美術館館長)
津川恵理(ALTEMY)
戸村 陽(ALTEMY)
小西隆仁(ALTEMY)
丁 周磨(ALTEMY)
井上 岳(GROUP)

ラウンド1:ALTEMYとの議論
登壇者:津川恵理、戸村 陽、小西隆仁、丁 周磨、川勝真一、井上 岳、鷲田めるろ
モデレーター:本橋 仁

ラウンド2:『建築雑誌』2025年5月号特集記事を読んで
登壇者:山崎泰寛、三宅拓也、勝原基貴、本橋 仁
モデレーター:井上 岳

金沢21世紀美術館 外観

金沢21世紀美術館 夜間外観
撮影:中道 淳/ナカサアンドパートナーズ
提供:金沢21世紀美術館

本展詳細 / 金沢21世紀美術館ウェブサイト
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=65&d=1835

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