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[Report]サローネサテリテ常設コレクション展が〈イタリアパビリオン〉でスタート

「サローネサテリテ常設コレクション展」〈イタリアパビリオン〉にて開始

[Report]サローネサテリテ創設者が語る 日本のデザインとの関わり

大阪・関西万博〈イタリアパビリオン〉で、複数の式典でイタリアの魅力を発信する「イタリアウィーク」が9月7日に始まった。これと同時に「サローネサテリテ常設コレクション展」も開幕。TECTURE MAGではオープニングとコレクション展、またサローネサテリテ創設者兼キュレーターのマルヴァ・グリフィン氏を招いたトークイベントの様子を取材した。

華やかなオープニングともにスタートしたサテリテ展

「イタリアウィーク」式典。〈イタリアパビリオン〉と〈大屋根リング〉をイタリア国旗の3色のリボンが結んだ。提供:Italy Expo 2025 Osaka

〈大屋根リング〉の間にかけられた3色のリボンの帯が、祝祭の雰囲気を醸し出した〈イタリアパビリオン〉。「イタリアウィーク」は、館前の広場で披露された徳島の阿波踊りを皮切りに、大阪・関西万博イタリア政府代表 マリオ・ヴァッターニ氏やフィリッポ・マナーラ在大阪イタリア総領事による挨拶で始まった。

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同じ9月7日からは、「サローネサテリテ・パーマネントコレクション1998-2025」も〈イタリアパビリオン〉内でスタート。サローネサテリテは、1961年にスタートした世界最大規模の家具・デザインの祭典「ミラノサローネ国際家具見本市(Salone del Mobile.Milano)」で、1998年から始まったイベント。“国際的若手デザイナーの登竜門”とうたわれ、佐藤オオキ氏、田村奈穂氏、佐野隆英氏、川本真人氏、氷室友里氏など日本人デザイナーも多く出展してきたことで知られている。

今回の展示は、サローネサテリテで発表された後に企業によって製品化された、47点のセレクションを紹介するもの。家具や照明器具、小物などが天井が高いゆとりある空間に並べられ、じっくりと見ることができる。

〈イタリアパビリオン〉内の特設スペースで47点のセレクションを展示。提供:Italy Pavilion, Expo 2025 Osaka

サテリテ創始者と日本人デザイナーが影響力を語る

同日の午後には、サローネサテリテ創設者であり現在もキュレーターをつとめるマルヴァ・グリフィン氏と、過去にサローネサテリテに参加した日本人デザイナーによるラウンド・テーブルが開催された。マルヴァ・グリフィン氏は、今回のイタリア館での展示の実現について謝辞を述べた後、自身は約40年前から関わっているミラノサローネについて紹介。

トークイベントで語る、サローネサテリテ創設者兼キュレーターのマルヴァ・グリフィン氏。提供:Italy Expo 2025 Osaka

「ミラノサローネは世界的に最も重要な家具の展示会で、比類ない規模を誇ります。2025年には、約2000人のデザイナーが展示を行いました。あわせて1年おきに照明専門の展示会『エウロルーチェ』とキッチンの展示会『エウロクチーナ』、そして『国際バスルーム見本市』も開催しています」。

そしてマルヴァ氏は1998年に自ら発案して設立した、35歳以下の若手デザイナーによるプロトタイプ展示「サローネサテリテ」についても振り返った。「多くの若いデザイナーに声をかけました。若いクリエイティビティを、メーカー企業に知ってほしいと願ったのです」と振り返った。2025年には、サローネサテリテへの応募は700件を超え、過去最高を記録している。

今回の「常設コレクション展」は、2024年の香港に続き、世界への巡回を始めたタイミングとなる。マルヴァ氏は日本の大阪・関西万博 イタリア館で展示できることを喜び、日本人デザイナーとの関わりを紹介。「これまで58カ国から1万5千人ほどの若手デザイナーがサテリテに出展しましたが、その中でも最も多いのが日本人デザイナーで、226人が参加しています。毎年選出しているサテリテ・アワードでは、これまで日本人は9名が受賞しました。サテリテに出展した若手デザイナーはその後も、キャリアを積んでいます」と成果を強調した。

「デザイントーク」にて。左より Tommaso Nani(mist-o)、長澤一樹(SUPER RAT)、マルヴァ・グリフィン、米谷ひろし(トネリコ)、鈴木 僚(HONOKA)、喜多華子(喜多俊之デザイン研究所)の各氏。提供:Italy Expo 2025 Osaka

トークセッションに登壇した米谷ひろし氏(トネリコ代表)は、2005年サローネサテリテに出展した「MEMENTO」が最優秀賞を受賞したときのことを回想。「それまでに出展した1年目と2年目は、眼の前を来場者が素通りしていき、ずいぶん滅入りました。それでもマルヴァさんは校長先生のような方で、大丈夫と励ましてくれた。それで3回目まで続けようと決心してインスタレーション作品を発表し、受賞したのです。自分たちの存在を評価してもらったことで、人生がガラリと変わりました」。

2024年に「UTSUWA – JUHI SERIES」で最優秀賞を受賞したSUPER RATの長澤一樹氏は「卒業旅行でサローネに訪れ、次にミラノに来るときはサテリテだと決心しました。事務所を独立してすぐに出展できて本当に嬉しかったし、受賞したこともあって一気に多くの方々に触れ合うことのできました。若手デザイナーにはぜひ挑戦してほしい」と語った。やはりサテリテ・アワードを2023年に最優秀賞を受けたHONOKAの鈴木 僚氏は、受賞後にたくさんの声がけを受け、メーカーと協業するプロジェクトがいくつも動いていることを紹介。サテリテの影響力の大きさを強調した。

マルヴァ氏は改めてサローネサテリテに参加して著名になった日本人デザイナーの名前を列挙し、サテリテの400を超えるパーマネントコレクションが揃うアートウッドアカデミーの施設も紹介。「2026年4月のミラノサローネで会いましょう」と締めくくった。

マルヴァ・グリフィン・ウィルシャー|Marva Griffin Wilshire

©Gerardo Jaconelli

サローネサテリテ創設者、キュレーター
インターナショナル・リレーション・アンバサダー
ベネズエラ生まれのマルヴァ・グリフィン・ウィルシャーは、イタリア・ミラノが第2の故郷となり、現在、ミラノサローネ国際交流大使、同済大学デザイン・イノベーション学部(D&I)客員教授。1998年にサローネサテリテを立ち上げ、2014年5月に「ゴールデン・コンパス・ライフタイム・アワードXXIII」を受賞。2017年にAmbrogino d’Oro、2021年にミラノ工科大学より名誉デザイン修士号、2024年には米国プロビデンスのロードアイランド・スクール・オブ・デザインより名誉美術博士号を授与された。2001年よりニューヨーク近代美術館(MoMA)のフィリップ・ジョンソン建築・デザイン委員会のメンバー。2016年よりグローバル・イタリアン・デザイン大使。

マルヴァ・グリフィン氏のコメント

大阪・関西万博のイタリア館で開催される『サローネサテリテ・パーマネント・コレクション1998-2025展』では、サローネサテリテが1998年の第1回開催以来推進してきた、国際的なクリエイティビティとイタリアの産業との常に実りある出会いを記念して、展示する製品をイタリア企業の製品に絞っています。

この出会いによって、多くの若手デザイナーが成長するための肥沃な土壌を見つけ、イタリアの卓越したものづくりと向き合い、ビジョンを形にすることができました。このエキシビションは、すべてが始まったその最初の瞬間に敬意を表し、同時に、達成された成果を高めるものです。それは今日、才能の出現を物語るだけでなく、文化的で生産的なコラボレーションの模範を物語るものです。(ミラノサローネ国際家具見本市 提供)

SaloneSatellite Permanent Collection 1998-2025 Exhibition 概要

Courtesy Salone del Mobile.Milano

場所:Expo 2025 大阪・関西万博 イタリアパビリオン
期間:2025年9月7日(日)- 20日(土)
キュレーター:マルヴァ・グリフィン・ウィルシャー(Marva Griffin Wilshire)サローネサテリテ 創始者 兼キュレーター
展示・グラフィックデザイン:リカルド・ベッロ・ディアス、アリアドナ・ピネート
プロジェクトコーディネーター、コンサルタント:ポルツィア・ベルガマスコ
主催事務局:キアラ・ギラルディ
参加デザイナー:Aatismo, Adriano Design, Pierfrancesco Arnone, Felicia Arvid, AZ Design/Andrea Zanini, Enrico Azzimonti & Jordi Pigem, Alessandra Baldereschi, Big-Game, Cristina Celestino, Anna Citelli e Raoul Bretzel, Carlo Contin, Alessandro Corina e Paolo Stella, Cristophe de la Fontaine & Stefan Diez, en&is/Isabella Lovero e Enrico Bosa, Francesco Faccin, Francesco Forcellini, Francisco Gomez Paz, Davide Groppi, Himuro Design Studio, Zsuzsanna Horvath, Hsiang Han Design, Patrick Jouin, Makoto Kawamoto, Lanzavecchia + Wai, Alessandro Loschiavo, Xavier Lust, Francesco Librizzi, Marcantonio Raimondi Malerba, Benedetta Mori Ubaldini, Satyendra Pakhalé, Mikael Pedersen, Daniel Ribakken, Takahide Sano, Oki Sato/Nendo, Studio Truly Truly, Studioventotto, Studio-if, Nao Tamura, Carlo Tamborini, David Trubridge, Vittorio Venezia/Martinelli Venezia, Voon Wong & Benson Saw, Sebastian Wrong, Zanellato Bortotto.

取材協力:ミラノサローネ国際家具見本市 https://www.milanosalone.com/

Text & 特記なき写真撮影:Jun Kato

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