「大阪・関西万博」で多種多様なかたちが生み出された、トイレなどの共用施設。
トイレをはじめ、休憩所、展示施設、ギャラリー、ポップアップステージ、サテライトスタジオの計20施設は、公募型プロポーザルで選出された若手建築家たちにより設計されたものです。
[大阪・関西万博Reoort]若手建築家が設計したトイレ、休憩所、展示施設、ギャラリー、ポップアップステージ、サテライトスタジオなど20施設をエリアごとにまわってみた!
審査を担当したのは、建築家の藤本壮介(2025年日本国際博覧会 会場デザインプロデューサー)、平田晃久(京都大学教授)、吉村靖孝(早稲田大学教授)の各氏。
大阪・関西万博の開幕直前には、審査員3名と設計を担当した建築家たちが完成したての各施設を巡り、講評し合う会が行われました。
TECTURE MAGでは、この会に合流して施設を見学。藤本氏、平田氏、吉村氏に施設を見学しての率直な感想や意見、また若手建築家たちに期待することを現地で伺いました。
施設や見学会の雰囲気とともに、各自の評価をご覧ください。そして、実際に万博会場で20組の施設を巡り、ご自身の目で確かめていただければと思います。
藤本壮介氏による総評
藤本壮介|Sou Fujimoto
1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。現在、東京とパリの2都市に事務所を構え活動する。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では「2025年日本国際博覧会」会場デザインプロデューサーに就任。
主な作品に〈House N〉(2008年)、〈武蔵野美術大学 美術館・図書館〉(2010年)、〈House NA〉(2011年)、ロンドンの〈サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013〉(2013年)、〈L’Arbre Blanc〉 (2019年)、〈白井屋ホテル〉(2020年)、ハンガリー・ブダペストの〈House of Music〉、〈マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設〉(2021年)などがある。
(今回のインタビューより抜粋・まとめ)
「次々見て歩くと、違いがすごく面白いんですよね。トイレのつくり方1つとっても、全体の空間としてつくっていく人もいれば、中のブースのところも丁寧に設計している方もいたり。そして、皆さんがチャレンジングなことをやっている。それは僕が最初に若手を登用しようと意図したところでもあるのですが、当然ただのチャレンジではなくて、これからの社会の中で建築がどういうふうに社会を良くしていくのか、あるいは新しい価値観を生んでいくのかというところが深く考えられています。
(中略)
特に今回面白いなと思うのは、リユース・リサイクル、それから自然のエネルギーを使ってどういうふうに快適な場所をつくるのか、あるいは周辺の環境とどう調和するのかというすごく現代的な課題に対して、彼らなりの新鮮な視点でチャレンジをしていることです。
(中略)
やはり、若いというのは素晴らしいですね。ビジョンとパッション、アイディアがあって。ただアイディアがあっても、すぐ実現できるわけではありません。いろんな議論があったり、制約があったりする中で、粘り強く実現していく。そのエネルギーと発想の柔軟さがあるので、僕は今回の万博で、この20組のつくったものを見て歩くだけでも、とても価値があると思います」
平田晃久氏による総評
平田晃久|Akihisa Hirata
1971年大阪府生まれ。1997年京都大学大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所を経て、2005年平田晃久建築設計事務所を設立。現在、京都大学教授。
主な作品に〈桝屋本店〉(2006年)、〈sarugaku〉(2008年)、〈BloombergPavilion〉(2011年)、〈kotoriku〉(2014年)、〈太田市美術館・図書館〉〈Tree-nessHouse〉(2017年)、〈9hoursProject〉(2018-2020年)、〈八代市民俗伝統芸能伝承館〉(2021年)、〈ホントカ。小千谷市ひと・まち・文化共創拠点〉(2024年)などがある。
(今回のインタビューより抜粋・まとめ)
「(若手建築家による施設は)自由だと感じました。どこまでが建築だということに対して、少しタガを外しているというか。全体として、1つのものにまとめ上げなければいけないという強迫観念から、もう少し自由に別の全体像みたいなものを想定しているような人もいて、面白いなと。それは別に若い人だけの話ではなくて、建築全体の関心事でもあるし、自分も頑張らなければと思いました。
(中略)
中規模・小規模のものに対しての彼らの密度感とか、部材とかディテールに関する詰め具合に対しては、新たにすごく刺激を受けました。それぞれ考えていることが全然違うし、考えのスコープが変わってきているのは明らかに感じる。その辺はすごく面白いなと思って見ていました」
吉村靖孝氏による総評
吉村靖孝|Yasutaka Yoshimura
1972年愛知県生まれ。1995年早稲田大学理工学部建築学科卒業、1997年同大学院修士課程修了。1999-2001年文化庁派遣芸術家在外研修員としてオランダのMVRDVに在籍。2005年吉村靖孝建築設計事務所を設立。2013-2018年明治大学特任教授。現在、早稲田大学教授。
主な作品に〈Nowhere but Sajima〉(2008年)、〈中川政七商店新社屋〉(2010)年、〈Red Light Yokohama〉(2010年)、〈TBWA/HAKUHODO〉(2012年)、〈Window House〉(2014年)、〈フクマスベース〉(2016年)ほか。主な著作に『超合法建築図鑑』(2006年 彰国社)、『EX-CONTAINER』(2008年 グラフィック社)、『ビヘイヴィアとプロトコル』(2012年 LIXIL出版)などがある。
(今回のインタビューより抜粋・まとめ)
「自分で穴を開けたとか、そういう話も含め、すごく気合いが入っているなと。いいなと思いました。ただ、本物の木や石が使われているところでは、なにかしらアピールしてほしいなと思いましたね。
(中略)
今回、(参加した建築家の)みんなが仲間になったということだと思うので。これからも一緒に、建築の追求ができたらなと思います。
Interview, text, photo and movie: Jun Kato