2023年7月18日初掲、7月19日「鋼板製パーツ」の画像4点を追加
日建設計と瀬尾製作所(富山県高岡市)は、建物の環境性能を高める脱炭素型外装システム〈Envi-lope01〉を共同で開発。東京・神田神保町に今年3月に竣工した新築ビル〈神保町SFI〉に実装しています。(瀬尾製作所2023年6月27日プレスリリース)。
〈Envi-lope01〉は、リング状のプレス金物(鋼板製パーツ)をワイヤーですだれ状に編み、建物の外壁のさらに外側にダブルスキン・ファサードとして取り付けるもので、既設・新築を問わずに設置することができます。
大都市圏に多い中小規模のビルでの設置を想定し、日照制御や風通し、透明性を操作して、建物の環境性能を向上させ、現代社会が求める脱炭素社会の実現に貢献することを目指して開発されました。
日建設計と瀬尾製作所では、2019年に建物の環境負荷を低減させる新たな形状のファサード開発に着手、約3年をかけて〈Envi-lope01〉を完成させました。
主要部材には、高い耐久性能を有する、日本製鉄の高耐食メッキ鋼板「ZAM®」を採用(日本製鉄2023年7月4日ニュースリリースより)。雨樋の鎖樋(くさりとい)をはじめとする各種金属製品の製造・販売を事業とする瀬尾製作所が有する高いプレス技術をベースに、日本製鉄の鋼板の深絞り加工技術における知見を融合させ、製造されています。
〈Envi-lope01〉は、絞り加工による鍋型の円筒部材の底面(直径180mm)を3種類の形状にカットし、適所に円筒を配置。それぞれの円筒はワイヤー2本でつなぎ合わせ、連続させた円筒を1列ずつ建物に取り付けることで、ファサードの面が構成されます。
このファサードはある程度の奥行きがある円筒で構成されるため、外部からの斜め方向は視線を遮り、正面方向では抜け感けと風通しを確保しています。
さらに、ワイヤー構造の特性を活かし、直線的な面だけではなく、3次元の面を自由につくりやすいこともデザインの特徴です。
〈神保町SFI〉に施工された〈Envi-lope01〉の環境性能を計測したところ、屋内への日射の熱負荷を約65%低減しているとのこと。
さらに、周辺の建物形状から太陽の日周運動から建物への日射の変化を解析し、全穴形状のほか、円筒状鋼板製パーツの底面の切り欠きに相違がある2種類を組み合わせ、約20%の日射を空に向けて再帰反射させています(見付開口率は70%確保)。
夏場の日射を低減させることは、空調の稼働を抑え、建物の省エネルギー化につながります。
さらに一般的にビルのファサードとして用いられアルミルーバーと比較した場合、鋼材の使用量を削減できるため、ファサード製造時に発生する二酸化炭素の排出量も低減しているとのこと。
所在地:東京都千代田区神田神保町1-41
設計:日建設計
規模:9階建て
ファサード加工:瀬尾製作所
素材提供:日本製鉄 / 高耐食めっき鋼板「ZAM®️」(使用量:約8トン)
竣工:2023年3月
1935年(昭和10)に瀬尾治七が高岡市白金町に創業(当時は鋳物の花瓶底板をプレスでつくることを主な業務とした)。1960年代に鎖樋の製造を開始。金属の板や棒から「曲げ」、「溶接」、「絞り」の技術で、日用品や美術工芸品、雨樋などを製作。2010年に雨樋の鎖樋(くさりとい)の自社ブランド「SEO Rain Chain」を立ち上げ。〈Envi-lope01〉は、鎖樋を作る過程で得た技術を活用して開発された。日建設計が設計して2016年に竣工した〈コープ共済プラザ〉のファサードを形成する計720本の鎖樋の製造を担当している。
瀬尾製作所 / SEO Rain Chain ウェブサイト
https://rainchains.jp/