PROJECT
PROJECT2023.04.25

エンガワハウス / nLDK

アップデートした縁側で災害に備え 余白をもたらす家

(English below)

100年に一度の災害に備え、長大な堤防を海岸線に築造する。防災の観点から至極まっとうであるが、非日常への備えが「海が見える」という日常の愉しみを奪ってしまうことにはやり切れなさは感じる。できれば日常も非日常も豊かにするものであってほしい。

日本国内で建築する以上、災害のリスクは免れない。いかに災害に備えるかと同時に、その設えを日常の豊かさにも寄与させる。本プロジェクトのメインテーマである。

計画敷地は昭和40年代に山の裾野を開拓した住宅地であり、土砂災害のリスクを有していた。当該敷地はイエローゾーンに当たり、建築上の制限はないが、建築主の不安を少しでも払拭するためレッドゾーン(原則建築不可、擁壁の設置や土砂高さまでRC造などで建築することが求められる)の建築条件を一部計画に取り込むこととした。

一方で建築主の夫は在宅の際、そのほとんどの時間を庭で過ごされていた。そこで室内と庭の連続性を考慮し、また敷地を選んだ決め手が敷地南側の公園に植えられた桜の美しさであったので、室内から公園を眺望できることも配慮した。

これらの与件を「エンガワ」で実現しようと考えた。縁側は奈良時代にその原型が見られ、大正時代には庶民の住宅にも広く取り入れられた。室内と庭を曖昧につなぐ日本独自の建築要素である。しかし住宅の狭小化に伴い庭がなくなったこと、高気密高断熱を重視し外へ開くことが嫌われるようになり、姿を消しつつあった。ここ数年、省エネ指向や災害経験から、外に開き自然エネルギーを取り入れることが見直されつつある。本プロジェクトでは伝統的な縁側をアップデートしエンガワとして提案している。

コンクリートで地盤より1mの高さのエンガワをつくり、非常時には土砂を堰き止め、日常では雨や日射を遮りながら庭に大きく開き、庭、そして公園を住宅に取り込む。またその幅を伝統的な縁側より広くとり、リビングのようで、しかし確固とした用途はもたず、住人に生活の余白を供する。

自然を愛でるとともに畏怖の念をもつ、日本固有の自然観を計画の主軸に捉えた。(近藤陽子+近藤直人)

A house with an updated ENGAWA that contributes to the margins in preparation for disasters

The site faces a park with some beautiful cherry blossoms, but the hill behind the park has a risk of landslide.

We designed a house that has a 1-meter heights concrete platform. It prevents the house from landslides and provides a good view of the park. We designed it like traditional Japanese ENGAWA.

It has no function, so residents do nothing there. They just hang out. Also, it provides a comfortable environment by cutting off the sun lay in the summer and rain.

We updated traditional Japanese ENGAWA to modern concrete ENGAWA.

※ ENGAWA is a porch-like wooden floor outside a Japanese-style room facing the garden on the ground floor. (Yoko Kondo + Naoto Kondo)

【エンガワハウス】

所在地:大阪府
用途:戸建住宅
クライアント:個人
竣工:2021年

設計:nLDK
担当:近藤陽子+近藤直人
構造設計:片岡構造
施工:IFA住宅設計

撮影:笹倉洋平

工事種別:新築
構造:木造
規模:地上2階
敷地面積:210.67m²
建築面積:82.64m²
延床面積:115.11m²
設計期間:2020.05-2021.01
施工期間:2021.02-2021.08

【engawa house】

Location: Osaka, Japan
Principal use: Residential
Client: Individual
Completion: 2021

Architects: nLDK
Design team: Yoko Kondo + Naoto Kondo
Structure engineer: Kataoka Structure
Contractor: IFA Corporation

Photographs: Yohei Sasakura

Construction type: New Building
Main structure: Wood
Building scale: 2 stories
Site area: 210.67m²
Building area: 82.64m²
Total floor area: 115.11m²
Design term: 2020.05-2021.01
Construction term: 2021.02-2021.08

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