CULTURE

石上純也氏が手がける 湖を優しく横断する〈水の美術館〉

自然のような長大さと優しさを併せもつ環境としての建築

CULTURE2024.02.01

@Archi-Exit

〈水の美術館〉石上純也建築設計事務所

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〈水の美術館〉石上純也建築設計事務所

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石上純也建築設計事務所が設計した〈水の美術館〉がオープンしました。中国山東省日照市に位置する人工湖を横断する、湖と同じ1kmほどの長さをほこります。湖の水面に触れるように静かに伸びつつ緩やかにうねる屋根による、長大でありながらも優しい自然のような建築となっています。

同時に建築の内側に湖の水を引き込むことで、建築の内側に湖から連続する水面という新たな自然と、まるで湖面を滑るかのように延びる新たな陸地を生み出します。

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優しい巨大さ

茫漠とした広大な風景は、中国で建築を考えるうえでとても重い課題である。

建築という矮小な存在では、中国という巨大な環境に対して、対等な関係を築くことが難しい。小さな住宅であっても、大きな建物であっても、どこか防御的な、環境から切り離し閉じざるを得ないというような諦めのような雰囲気を感じてしまう。

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巨大な環境の中で孤立するように建つ中国の建築は、どこか寂しげである。この印象は、街の中でも、街から離れた環境であっても同様に思うことである。だからこそ、建築と周辺環境との間に良好な関係を築くという、あたりまえのことが中国ではとても難しい問題になるのだ。

中国においていかにして、環境と建築を対等な存在として捉えることができるか。できるかぎり環境と建築を近付け、できるかぎりその境界のあり方を曖昧にし、できるかぎり僕たち人間にとって自然を優しい存在にしていけるのか。このことがプロジェクトの主題である。

〈水の美術館〉石上純也建築設計事務所

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湖を横断する、自然のような長大さと優しさを併せもつ建築

これは、中国山東省日照市の開発地域に計画する展示スペースとビジターセンターとショップなどを兼ねた複合施設のプロジェクトである。現在、展示スペースにはチョコレートとそれに関連するアート作品を展示しているが、将来はその内容を自由に変えられるように計画している。

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敷地は開発地域のエントランスに近いエリアの人工湖の水上であり、この場所を訪れる人びとはまずこの建物を通り、開発された地域に向かうことになる。延床面積は約20,000m²。

敷地である湖の上に、湖と同じ1kmほどの長さで、端から端までその水面にそっと触れるように、建築と環境を新たに同時に静かに延ばしていく。湖という透明な水平面を建築の内側へと引き込み、水面という人間が歩くことが叶わない環境に、まるでその湖面を滑るかのように延びていく床面を新しい陸地として想像する。

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建築の内側に生み出す新たな自然

水の中に沈んで建つ列柱とその上に帯のように浮かぶ屋根面。その内側に引き込まれる新しい水面と地面との境界。これらのことを同時に想う。等間隔に反復する柱は新しい水面を規定し、その水面がつくり出す水際は新しい地面を規定する。建築の内側に新しい外側が生まれる。

僕たちと優しく寄り添うことができる新しい自然が、建築の内側に現れるのである。

〈水の美術館〉石上純也建築設計事務所

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列柱の各柱間にはガラスがはめ込まれている。ガラスは場所によっては開くことができ、心地のよい季節には開放し、柔らかく肌をなでる風を建築の内側に誘い込む。ガラスの下部の水中に沈んでいる部分には隙間が空いており、湖を満たす水が室内に自然と導かれる。

建築の内側に生まれる新しい自然の環境の中で、 内側の風景が外側の風景に滲み出すようなランドスケープを感じる。その中をゆったりと歩いていく。

〈水の美術館〉石上純也建築設計事務所

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ある場所は大きな陸面の上に展示物が置かれ、ある場所の陸面は細まり大きな水面に囲まれる。ある場所は天井が高くなりたくさんの光と周辺の景色を取り込み、ある場所は低くなり天井面が水面に反射するとともに、低い光が水面を這うように滑り込み反射し天井面に映り込む。

中間期に開かれる開口からは、外側の湖面のさざ波がリズミカルに揺れ動く水面として建築の内側に伝わる。冬季には外側の湖面は凍る。氷結面の下の液体はガラス下部の隙間を通して建築の内側と繋がり、留まり、春を待つ。

〈水の美術館〉石上純也建築設計事務所

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湖上をひと筋の風が通り過ぎるかのように、巨大な風景と同じスケールの長大な建築が現れる。柔らかい屋根の湾曲は、あるところでは低くたれ込み湖面と背後の山の斜面とを連続させ、あるところでは空に向かって大きく開き建築の内側を外の風景の中に溶け込ませる。

中国における風景の問題に対し、建築を優しい巨大な環境として捉え、今までにない自然と人工との関係性を模索する。孤立するように建つ建築が自然環境と仲よくなり、お互いを触れ合うことのできる存在にしていく。

建築の内側に自然環境を発見し、建築の中に芽生えた新しい外としての性質を通して、周辺の自然との友好な繋がりを築いていく。このことによって自然と人間との新しい関係が生み出される。それをつくり出すことがこのプロジェクトの目的である。(石上純也)

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Plan

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Elevation

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Section

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Section

建築概要

題名:水の美術館
所在地:中国山東日照
施主:Shandong Bailuwan Co.,Ltd
主用途:美術館

設計:石上純也建築設計事務所
担当:Junya Ishigami, Zenan Li, Zhirui Lim, Sellua Di Ceglie, Rui Xu, Tong Zhang, Cing Lu, Yuxuan Zhou, Zhixuan Wei, Yunyi Zhang, Hanyang Zhou, Junwei Jason Tan, Anping Song, Yichen Ji

構造:XinY structural consultants
担当:Xin Yuan

設備:Environment-friendly solution to Building services Engineering
担当:Xueqin Yin

照明アドバイザー:Environment-friendly solution to Building services Engineering
担当:Xueqin Yin

家具デザイン:石上純也建築設計事務所
担当:Junya Ishigami, Zenan Li, Rui Xu, Yuxuan Zhou, Jason Tan, Anping Song, Yichen Ji

石材工場:Sichuan Yutong Stone Co., Ltd

監理:石上純也建築設計事務所
担当:Junya Ishigami, Zenan Li, Zhixuan Wei, Rui Xu, Cing Lu, hanyang Zhou, Qinxuan Li, Yunyi Zhang

施工(鉄筋コンクリート部分):Beijing Yihuida Architectural Concrete Engineering Co.,Ltd

構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上1階,地下1階
敷地面積:18,417m²
建築面積:15,810m²
延床面積:20,220m²
設計:2016年12月〜2019年7月
工事:2019年8月〜2023年12月
竣工:2023年12月

石上純也建築設計事務所 公式サイト

http://jnyi.jp

 

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