妹島和世、豊久将三、渋谷慶一郎、和泉侃が参画、〈ポーラギンザ〉12/12リニューアルオープン

"新しい自分に出会うフローラの森"をコンセプトに妹島氏が空間全体をプロデュース

CULTURE 2025.09.05

化粧品ブランドのポーラは、店舗改装のため今年4月1日より一時休業中の旗艦店〈ポーラギンザ〉のリニューアルプロジェクトの概要を発表しました（2025年9月4日プレスリリース）。

空間全体を妹島和世氏がプロデュース

ポーラの企業理念である「Science. Art. Love.」のもと、施設全体のコンセプトとして「SENSE OF LOVE」を掲げます。これらに基づいて、空間全体のプロデュースを建築家の妹島和世氏が担当。妹島氏のほか、照明家・豊久将三氏、音楽家・渋谷慶一郎氏、嗅覚のアーティストとして知られる和泉侃氏もプロジェクトに参画。国内外の第一線で活躍するアーティストとの共創により、あらゆる感性を刺激し、世界を愛する力までも育むような空間とサービスの提供を目指すとのこと。

©︎ Kohei Omachi

「新しい自分に出会うフローラの森」

「ポーラの新しい空間は咲きあふれるフローラ（ラテン語：花や植物）に包まれた、森のような新しい庭です。フローラは壁面に影を落としながら、呼吸するようにゆっくりと動いています。この空間に足を踏み入れると人々は突然、いつもの時間の流れと少しだけ異なるフローラの時間に迎え入れられます。薄明るく柔らかい、心地よい光の中をめぐりながら、一人ひとりが自分との対話をゆっくりと愉しみ、まだ見ぬ自分に出会います。
この空間の呼吸とともに音楽が生まれます。瞬間ごとにかわりつづける音の響きと光の気配が重なり合い、その時そこにいる人だけの特別な体験が生まれます。
フローラの森の下には、その森を支える静謐な空間が広がっています。森のささやきの音が作り出す、静けさに溢れた空間では、自分がやってきた日常の光が遠くから少しだけ差し込み、さらに自分を開放する深い旅へと導かれます。」（妹島和世）

妹島和世（せじまかずよ）プロフィール
建築家、東京都庭園美術館館長
茨城県生まれ。1981年日本女子大学大学院修了。1987年妹島和世建築設計事務所、1995年西沢立衛ともにSANAA（サナア）を設立。2010年第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合ディレクターを務める。
これまでの主な受賞に、日本建築学会賞*、ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞*（イタリア）、プリツカー賞*（米国）、芸術文化勲章オフィシエ（フランス）、芸術選奨文部科学大臣賞*、村野藤吾賞、高松宮殿下記念世界文化賞、王立英国建築家協会2025ロイヤル・ゴールド・メダル*（英国）などがある。
主な建築作品に、金沢21世紀美術館*、Dior表参道*、犬島「家プロジェクト」（岡山市）、ニューミュージアム*（米国・ニューヨーク）、2009年サーペンタインギャラリーパビリオン*（英国・ロンドン）、Rolexラーニングセンター*（スイス・ローザンヌ）、ルーヴル・ランス*（フランス・ランス）などがある。　注.文中の*印はSANAAとして

フロアイメージ

1F コスメティック / COSMETICS

ポーラギンザリニューアル後の空間イメージ（1F）

1Fで来訪者をいざなうのはシンボリックなフローラの森。
不完全な対称性を持つ七角形の柱たちが、生命を育むゆらぎを静かに宿しながら、外と中の世界をつなぎ、ポーラギンザに流れる時間をゆったりと支えています。すべての壁面から降り注ぐ柔らかく心地よい光に包まれながら、無限に変化を続ける心地よいサウンドが響く。それは絶えず変化を繰り返す、一期一会のアートです。日々の喧騒から離れ、あらゆる感性を刺激し、自己との対話を促してくれる空間が広がります。そこでは、未知なる自分への扉をひらく、ポーラプロダクトとの出会いも待っています。

B1F エステティック / ESTHETIC

ポーラギンザリニューアル後の空間イメージ（B1F）

有機的な空間は、1FからB1Fへと続きます。完全個室のフロアには、柔らかな光、土のぬくもりや木漏れ日を想起させる香りが満ちています。まるで自然に抱かれるような感覚の中で、心と体の「潜在美意識」への旅が始まります。

音楽・音響プロデュースは渋谷慶一郎氏

サウンドインスタレーション Abstract Music POLA version
『Abstract Music』は、建築・自然・アート・公共空間といった多様な環境と融合することを前提に生まれた、生成型のサウンドインスタレーション作品です。
私自身の膨大なサウンドデータが、プログラムによってリアルタイムに組み合わされ、加工・変型されながら絶えず変化し、二度と同じ瞬間が訪れることはありません。
今回、妹島さんがつくられた、新しく有機的で仮想の森のような空間からインスピレーションを受け、音楽と音響のすべてをプロデュースしました。音は空間を自在に動き、雲や風、あるいは膜のように、絶えず形を変えていきます。
複数の音の層が広がることもあれば、ひとつの音が空間を満たす瞬間、そして静寂が訪れることもあります。
この空間には、従来のBGMやプレイリストは存在しません。恒久的に設置されたこのサウンドインスタレーションだけが音楽として存在し、空間の一部として新たな響きを生み出し続けています。無限に変化し続ける音楽と仮想の森に響く囁きが、この空間を訪れる人々の新たな知覚の扉を開くことを願っています。（渋谷慶一郎）

渋谷慶一郎（しぶやけいいちろう）プロフィール
音楽家。東京藝術大学作曲科卒業。先鋭的な電子音楽からピアノソロ、オペラ、映画音楽、サウンドインスタレーションまで幅広く手掛け、東京とパリを拠点に活動。生と死、テクノロジーと人間の境界を作品を通して問いかけている。
2012年に人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』を発表、パリ・シャトレ座を皮切りに世界巡回。2018年にはアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を日本、欧州、中東にて上演。2021年に新国立劇場の委嘱新制作にてオペラ作品『Super Angels』を作曲、東京フィルハーモニー交響楽団と共演。2022年以降はアンドロイド・オペラ『MIRROR』をドバイ万博やシャトレ座で上演、2024年東京凱旋公演を実施。2025年にはパリ・グランパレでソロコンサート『MIRROR Ghost』を発表。これまでに数多くの映画音楽も手掛け、「ミッドナイトスワン」の音楽で第75回毎日映画コンクール音楽賞、第30回日本映画批評家大賞映画音楽賞を受賞。2026年9月に開催される第一回「前橋国際芸術祭」にアーティストとして参画。2027年に大規模な新作劇場作品を発表予定。

照明プロデュースは豊久将三氏

「この森のような空間を包む全ての壁は、ある波長の光とその逆位相の光が互いに溶け合い、ゆるやかに明滅しながらやわらかく光を放ちます。一瞬として同じ姿を見せないその光景は、空気感を伴いながら訪れる人々の身体にさまざまな感覚を呼び覚まします。

これまでに体験したことのない、心地よい光と闇の密接不可分な移ろいのなかで、もし光が霧のような質量を感じ、昇華した存在になったなら—目と脳が交わすやりとりを通じて、心と肌に潤いをもたらすやわらかな光を、ここに創造しました。」（豊久将三）

豊久将三（とよひさしょうぞう）プロフィール
照明家。個々の建築空間や美術作品に対して「オリジナルの光を創ること」を一貫したコンセプトとして、美術館を中心に様々な照明設計、光の表現活動を行っている。これまでに手がけたプロジェクトに、MoMA Contemporary Japanese Textiles展などの展示照明、東京国立博物館・法隆寺宝物館、ポーラ美術館、原美術館ARC 觀海庵、サントリー美術館、根津美術館、三菱一号館美術館、アーティゾン美術館（日本・東洋美術展示室）などの展示室照明、国内外アートコレクターの自邸の光の設計、PRADA Beauty、BVLGARI GINZA TOWER Club Floors、ミキモト銀座4丁目本店、MIKIMOTO New York Flagship Boutiqueなどの店舗照明、Dior表参道、Gucci銀座、ポーラギンザ、oak表参道などのファサード照明、西武鉄道Laviewの車両照明、Leeum, Samsung Museum of Artのコミッションアートワーク製作などがある。

体験に寄り添う香りを和泉侃氏が担当

「新しい体験に寄り添う香りとして、対になる2つの香りを設計しました。構造は、この空間が大切にしている“違和感と安定の往復”という考え方に着想を得たものです。異なる世界を行き来する中で、自分の内側にある感覚や美意識が少しずつ磨かれていく——そんな体験を香りでも支えたいと考えました。
ひとつめは、サイエンスとクラフトマンシップ、静けさと刺激といった異なる要素が交差する場所から生まれ、現在のポーラを象徴する香り。ふたつめは、植物や土のぬくもり、記憶の静けさに包まれながら、自身の感覚に静かに気づいていく香りです。音や光の演出とともに、嗅覚のレイヤーが空間体験を立体的に支え、個々の記憶と感性にやわらかく触れていきます。」（和泉侃）

和泉侃（いずみかん）プロフィール
アーティスト / Olfactive Studio Ne（オルファクティブ・スタジオ・ネ）ディレクター
香りを通して身体感覚を蘇生させることをテーマに活動するアーティスト。植物の生産・蒸留や原料の研究を行い、五感から吸収したインスピレーションのもとに創作活動に励む。作家活動と並行し、香りを設計するスタジオ「Olfactive Studio Ne」を発足。調香の領域にとらわれないディレクションで、チームと共に香りで表現される世界の可能性を広げている。

コンセプト”SENSE OF LOVE”

ポーラギンザ施設コンセプト

愛せる人は、幸いだ。
どんな時も、何があっても、世界から美しさを見出し、
自分を愛し、日々を愛し、未来を愛することができたなら。
それこそが、本当の自由だ。
今、愛する才能を開花させよう。
自分の中に深く潜り、耳を澄まし、語りかけ、
心と体の潜在美意識を呼び覚まそう。
あなたが、世界にたったひとつのあなたの人生を、
愉しみつくせるように。

POLA GINZA