12月は、ものや建築をつくるだけでなくどう受け継ぐか、「継承の技術」を考えるきっかけとなるイベントが開催されます。地域に根付く文化や資源、身体になじむ椅子の形、デザインの思想、そして月面に挑む新たな技術。それぞれが、“これから何を残し、どう未来に渡すのか”という問いを投げかけています。一年の中で最も忙しさを感じる12月、少し立ち止まって、ものや場所の”続いていく力”に触れに出かけてみませんか?
かつて“木のまち”として栄えた新木場を舞台に、工場や倉庫をひらき、街に眠る素材や技術、人とのつながりを再発見する地域回遊型イベントです。倉庫に眠る木材や副産物を紹介する「マテリアルライブラリー」、木粉を使った3Dプリントなど新しい発想を促す展示、職人や企業と直接言葉を交わせるガイド企画など、三つの体験テーマを通じて“木の産業の現在地”を体感できます。街の積み重ねを“かさねなおす”試みとして、素材と地域の未来を考える貴重な機会となっています。
SHINKIBA CREATIVE HUB
会期:2025年12月11日(木)〜2025年12月13日(土)
エリア:新木場、辰巳エリア
日本のポストモダンを代表する倉俣史朗、小松 誠、高崎正治の仕事を通して、デザインと建築の思考を再検証する展覧会です。家具、造形、インテリアなど多分野にわたる3名の実践を通じ、当時の社会背景や造形思想が現代にどのような示唆を与えるのかを探る構成となっています。現代の設計実務においても、素材への姿勢や空間の“意味”の扱い方を考え直す手がかりとなる内容です。
甦るポストモダン──倉俣史朗、小松誠、髙﨑正治、デザインの人間主義
会期:2025年11月24日(月)〜2025年12月21日(日)
エリア:武蔵野美術大学 美術館展示室3
国内外の建築家・デザイナーによる名作椅子31脚が一堂に並ぶ展覧会。倉俣史朗、シャルロット・ペリアン、ジャン・プルーヴェ、ディーター・ラムスなど、近現代デザインを象徴する作品が、素材使いや構造美、地域性といった多様な視点から再発見できる内容となっています。会場では実際に「試座」でき、椅子が生まれた背景やデザイン哲学を体感できるのも大きな魅力。消費ではなく“継承する暮らし”を提案するリノベるのプロジェクトの一環として、デザインの原点を改めて見つめる機会となる展示です。
建築家の椅子31脚展
会期:2025年11月28日(金)・11月29日(土)・11月30日(日)・12月6日(土)・12月7日(日)
会場:リノベる表参道オフィス
月面での生活を前提に、竹中工務店が構想する“宇宙建築”を紹介する展示です。短期滞在用から長期滞在型までの居住モジュール、クレーターを利用した大規模施設「ルナタワー」、月面作業を支援する小型群ロボットなど、建築・都市計画・宇宙工学が交差するプロトタイプが並び、竹中工務店が2023年に立ち上げた研究組織 TSX(Takanaka Space eXploration)による計画・研究成果を体系的に紹介し、「月で暮らす」という極限環境に建築がどう応答できるのかを提示する内容となっています。
宇宙のくらしをつくる建築展 Lunar Architecture by TAKENAKA
会期:2025年12月10日(水)~2025年12月14日(日)
エリア:建築会館ギャラリー
能登半島・珠洲市の共同浴場「海浜あみだ湯」を舞台に、震災後に保全された能登瓦へ新たな視点を投げかける企画展です。失われつつある地域産業の背景を手がかりに、山本 基、七尾旅人、仮( )-かりかっこ-、宮崎竜成、大和 楓、池田杏莉らが、それぞれのアプローチで瓦と地域の記憶を読み解きます。素材が持つ土地性を再考し、災後の風景と向き合う本展は、建築・地域文化・素材研究の観点からも注目される試みとなっています。
アウトサイド
会期:2025年11月11日(火)〜2025年12月16日(火)
会場:海浜あみだ湯
このほかにも、『TECTURE MAG』ではさまざまなイベント情報を紹介中です(随時更新)。お見逃しなく!
参照元:株式会社博展リリース、武蔵野美術大学美術館・図書館ウェブサイト、outside.exhibition公式Instagram、リノべる株式会社リリース、株式会社竹中工務店リリース
トップ画像:©︎SHINKIBA CREATIVE HUB 実行委員会