高品質であることはもちろんのこと、アートの領域にまで広げて空間ビジュアルを創出するBROCK PARTY(ブロックパーティー)。「こういう絵をつくれる人たちって、日本にいるんだな」。SUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻 誠氏がBROCK PARTYの仕事を初めて見たときの率直な感想だ。
創業18期目を迎える同社が追求するのは技術力にとどまらず、見る者の心を動かす情緒を表現し、空間の物語を伝える力である。AI活用も進む今、ビジュアル制作会社と設計者との協働によって、何が生まれているのか。また、BROCK PARTYが新たに取り組んでいる「ビジュアルコンサルティング」とは何か。谷尻氏とBROCK PARTY 山田将太郎氏と野口洋平氏との対話から、建築表現と協働の新しい可能性が浮かび上がる。
谷尻 誠(以下、谷尻):BROCK PARTYとの付き合いは、1年半ほどになりますね。SUPPOSE DESIGN OFFICEにはパース担当が2人いるのですが、(山田)将太郎からBROCK PARTYで制作したビジュアルを見せてもらったときに「ちゃんと情緒がある絵をつくれる会社が日本にあるんだな」と思ったんですよ。

谷尻 誠氏(SUPPOSE DESIGN OFFICE)
山田将太郎(以下、山田):ありがとうございます。BROCK PARTYは創業17年で今18期目なんですが、これまで営業をしたことがなくて。(谷尻)誠さんとは仕事をしたいと思っていたのですが、「CHANGER」という誠さんがつくったコミュニティに参加して、仕事の話というよりスノボやサーフィンの話から仲良くさせていただきましたね。

山田将太郎氏(BLOCK PARTY)
谷尻:遊びからお互いの理解が生まれて、仕事をするようになったね。SUPPOSEはパース業者の営業をたくさん受けるのですが、「自分たちでつくるもののほうがいいな」と思うことが多かったんです。クオリティというよりも、画角とかセンスの部分で。
山田:誠さんに会ったとき、誠さんはちょうど「Mietell(ミエテル)」のサービスを立ち上げて準備をしていたところでした。MietellのパースではAIを活用する方針で、自分としてもAIを使っていきたかったので、協業するようになりましたね。
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谷尻:ただ、「AIにやってもらえる」と思っている人は、AIを使えないんですよ。AIを使い倒してAIを理解した人が初めて、AIを使えるようになる。Macが出たとき、誰でもデザインできるという勘違いがあったことに似ているなと思います。
山田:AIでプロンプトで生成した画像をPhotoshopや、さらに別のAIをかけるなどして、どんどんブラッシュアップしていく必要がありますね。簡単なように見えても、意外と難しいんです。

谷尻:建築は、ただモノができればいいということではなくて、建物とほかの関係性を考えてつくることができるかが重要です。建築中の現場の確認でも、スタッフが写真を撮ってくると、だいたいイマイチなんですよ。伝えるべきことがわかっていないでただ撮ってくると、わかっている人が撮る写真との差が大きい。ビジュアルも、建物だけとか限られた範囲のインテリアをつくればいいというものじゃなくて、伝えるべき内容や文脈が読み取れる人は、表現が変わってくる。
山田:どんな人がどのような気持ちで、どういう背景でつくろうとしているのかを丁寧に読みとることで、ストーリーを伝えることができると考えています。
谷尻:Mietellで求めていたことは、まさにそういうところでした。建物だけというよりは、敷地全体の空気感も伝えないといけない。でも、こういうことを言っても、ピンとこない人はけっこういるんですよね。パースのクオリティを上げることばかりにとらわれている人もいる。僕は将太郎に、あまり指示しないよね。図面だけ送って、アングルについては何も言わない。

山田:本当にそうですね(笑)。僕たちのほうで想像して15カットぐらいをつくって、送ると「ありがとう」「いいね」という反応だけがあって、ほぼ採用されます。

BROCK PARTYでのビジュアル制作の様子
谷尻:細かく指示するのだったら、SUPPOSEの内部でやればいいからね。自分たちでも予想していなかった風景を見せてもらいたい。誰かと仕事するって、そこに意味があるのかなと思う。
山田:誠さんは間違いなく「まかせ上手」です。ある程度の部分は委ねてくれて期待されると、それに応えたいというところから考え始めるので、やる気になるんですよね。
谷尻:設計者って、プレゼンで資料をたくさんつくるじゃないですか。論破していくというか、クライアントを納得させるように畳みかける内容が多いと思うんです。でも僕は、話が長いのがイヤなんですよ。資料が多いと、「何枚も資料をめくるけど、いつ提案が出てくるの?」と思われてしまう。それよりは、最初に「これです」ってバーンといいビジュアルを見せて、相手に興味を持ってもらいたいんです。そっちのほうが本質的だなと。ビジュアルを見てもらってから聞かれることに対して答えていくと、コミュニケーションが一方通行ではなくなります。
山田:多くを語らないほうが伝わることも、ありますよね。
谷尻:プレゼン資料って、左脳で理解させて説得しがちじゃないですか。でもビジュアルは右脳で伝わって、見た瞬間に「綺麗」とか「なんだろう」という感動や驚きがある。だから右脳先行・左脳後行がいいなと、いつも思っていて。
山田:僕たちは、いろんなホテルなどを訪れて滞在するのが好きなんですよ。そうして重ねた体験があるので、図面を見たときに「ここに遊びに行ったらこういう感覚になるだろうな」とイメージします。直近でパースを制作した誠さんの北海道・旭川の案件は、天井の一部がガラス張りでした。雪が降る地域だし普通であればガラス天井なんて避けられると思うのですが。どうやったら魅力的に表現できるかと試みたのは、夜に部屋を真っ暗にして、寝ながらガラス越しに星空を眺められる体験です。

谷尻氏が北海道・旭川で進めるプロジェクトのビジュアル
野口洋平(以下、野口):僕たちは最近、パースというよりはアートにしたいと思っているんです。説明的なCGが多い中で、建築を美しく見せられるアートのようなビジュアライズができたら、建築の価値をもっと高められるのではないかと考えています。

野口洋平氏(BLOCK PARTY)
谷尻:雪が深々と降る静かな景色を眺めながら、暖かい部屋で時間を過ごせたらきっと豊かな時間だなっていうのはみんながわかる。だとしたら、見慣れた青空バックのパースではなく雪が降るシーンをつくるほうがいいし、雨が降っていても心地よさを伝えることができるかもしれない。その場の空気感みたいなものは、絵からもやっぱり漂うからね。

北海道、ニセコで進めるプロジェクトのビジュアル
山田:これまではコンペやプレゼン用のCG制作を主に手掛けてきたのですが、これからは我々が「ビジュアルコンサルティング」と呼んでいる領域を広げていきたいと考えています。
例えば、CGを気に入ってくれたクライアントが新しいブランドをつくる際、「ロゴやホームページ、パンフレットの制作、サイン計画までBROCK PARTYにお願いできないか」と相談を受けることが増えてきました。こうしたケースでは、不動産や建物の魅力を最大限引き出せるようにCGクリエイター、アートディレクター、グラフィックデザイナー、Webディレクターなど、プロジェクトごとに最適なチームを編成します。ビジュアルの起点となるCG表現から、ロゴ、Web、パンフレット、サイン計画に至るまで、世界観を一貫させたトータルブランディングを提供しています。

ブランディングに関わるビジュアル全般を手掛けた「THE GRANDDUO(ザ グランデュオ)」
野口:フェイスネットワークが東急電鉄沿線を中心に展開する高級賃貸マンションブランド「THE GRANDDUO(ザ グランデュオ)」が、まさにその例ですね。従来のグランデュオシリーズでは、建物ごとに異なるサイン計画が採用されており、それぞれに個性があり魅力的でした。一方で、「THE GRANDDUO」ではサインデザインを統一することで、街の中での視認性とともに、ブランドとしての一貫性と認知度を大きく高めています。

野口洋平氏(左)と山田将太郎氏(右)
山田:インテリアのビジュアルでは、僕たちがスタイリングしながら家具などを提案して、そのまま実際に取り入れられるようなこともあります。高品質なビジュアルをベースとして多岐にわたる提案を行うのが、ビジュアルコンサルティングの意味するところです。

「THE GRANDDUO」のビジュアルでスタイリングした例
谷尻:建築も土地も、基本的には形がまだないものを売る業界です。それを世の中に伝えたり、購入してもらう必要があるときに、美しいビジュアルから背景と物語が伝わってくれば、興味をもってもらえる状況をつくりやすくなると思うんですよね。
山田:誠さんと取り組んでいる「Mietell」では、そうした狙いがありますよね。また最近では、高品質のビジュアルで不動産のEC販売を成立させるビジネスモデルが拡大しています。建築業界ではコンペやプレゼンのときにCGパースを制作することが当たり前ですが、一般消費者にも認知されるようになりました。CGを活用したビジュアルが事業成否に直結する時代に移行し、デベロッパーや不動産会社から問い合わせを受けることも増えています。
野口:それでも、デベロッパーや不動産系の会社はどうしても利回りなどの数字に目が行きがちで、デザインの要素が足りていない場合もあります。そこに我々が入ってトータルでよりよく見せることができれば、不動産の流動性はもっと上がると考えています。BROCK PARTYではビジュアルコンサルティングを主軸としていくため、プロジェクトごとにふさわしいチームを組んでいく体制を整えているところです。
山田:もともとBROCK PARTYという名前は、レゴブロックのように組み合わせることと、ドラクエのパーティーのような多技能の仲間が集うという意味合いがあります。これまでBROCK PARTYはCG制作に特化してきた側面がありますが、ビジュアルコンサルティングへの拡張に合わせて、アートディレクターなども含めた多様な才能と技能をもつチーム編成をしていきたいと考えています。

BROCK PARTYのオフィス。現在は2フロアに分かれている
(2025.10.30 BROCK PARTYにて)
Photo: toha(特記を除く)
Interview & text: Jun Kato