[建築と経営のあいだ]「チームで続ける」ための組織設計術 再生建築研究所・神本豊秋 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
[建築と経営のあいだ]「チームで続ける」ための組織設計術 再生建築研究所・神本豊秋

「チームで続ける」ための組織設計術 - [建築と経営のあいだ研究所]再生建築研究所・神本豊秋

BUSINESS

独立後、いざ仕事が回り始めた途端に立ちはだかる「経営」の壁。
「建築は好きだけど、組織やマネジメントは苦手」──そんな声をよく耳にします。

しかし実際には、スタッフの採用、設計体制の構築、プロジェクトの継続、理念の可視化…。
“続けていく”ためには、建築と経営の両輪が不可欠です。

今回話を伺ったのは、7年でスタッフ20名規模に拡大した再生建築研究所・神本豊秋氏。
アトリエ型から脱却し、チームで継続可能な組織を築いてきたその軌跡からは、“言語化”と”伝えること”が事業と組織の推進力となることが見えてきました。

* この記事は「建築と経営のあいだ研究所(通称:あいだけん)」の動画コンテンツを、TECTURE MAGで編集したものになります。


■注目したい4つの組織設計術

1. 組織のカタチと進化 アトリエ型からチーム構築へ
2. 建築家のビジョンとブランド構築
3. 経営における武器とはなにか
4. 組織維持と経営ポリシー「運」と「縁」の力

 

神本 豊秋氏 再生建築研究所 代表取締役 近影

神本 豊秋(再生建築研究所 代表取締役)

1981年大分県生まれ。近畿大学九州産業理工学部卒業後、青木茂建築工房に8年間勤務。2012年、神本豊秋建築設計事務所設立。同年、東京大学生産技術研究所(川添研究室)特任研究員に着任し、東京大学総合図書館の改修に参加。2015年、再生建築研究所設立。同研究所で改修設計した「ミナガワビレッジ」に2018年5月より入居、運営も行う。文部科学省CO-SHAアドバイザー、文化庁 建築文化フェロー、国土交通省モデル調査事業 外部委員。


注目したい4つの組織設計術

1. 組織のカタチと進化 アトリエ型からチーム構築へ

神本 「最初は自分のやってきたアトリエ的な“文鎮型”組織を目指していたが、10人を超えたとき限界を感じました。1人で全てを見るやり方は、コミュニケーションが1/10に分散されて無理だと気づきました。」

高橋 「行き届かなくなるので、組織は10人ぐらいが適切だと聞きます。神本さんがそう思わない理由はなぜでしょうか?」

神本 「“文鎮型”と呼ばれるアトリエ型の設計事務所をロールモデルにすることの限界に、途中で気づいたんです。それまでは、得意ではなくてもマネジメントや営業は1人で行うのが当たり前だと思い込んでいたのですが、これらはチームで分業するものなのだと分かりました。アトリエを複数作るようなイメージでチームを作って、その下のレイヤーとして、僕より設計ができる方々に組織を見てもらい、彼らを僕が並列で見る。つまり、僕がいなくても設計ができるようなチームを作るのが、僕は組織だと思っています。

建築と経営のあいだ ©︎再生建築研究所

スタッフ主導のプロジェクト見学会の様子

2. 建築家のビジョンとブランド構築

渋谷「独立時からビジョンやブランドは固まっていたのですか?それとも、徐々に作り上げいかれたのですか?

神本 「後者ですね。「運」や「縁」といった要素も大きいですが、異業種の経営者や先輩方との関わりの中で、はじめて“ミッション・ビジョン・バリュー”という言葉を知りました。

自分から『再生建築をやっています』と言っている以上、それをまわりの人に正しく伝える方法をちゃんと持たないといけない、そう気づかせてくれる出会いがありました。それをきっかけに、自分なりにミッションやビジョンを言葉にしてみたところ、その動きに導かれるように、事務所の“芯”のようなものがおぼろげながら見えてきました。その芯は、客観的には比較的クリアに見えているみたいで、それがきっかけでご縁をいただくこともあれば、逆に『まだぼんやりしている』と指摘を受けることもあります。ただ、いずれにせよ言葉にすることで縁が広がったと感じています。建築と同じように、組織としてもバックボーンというか芯のようなものを持つ必要性を感じています。」

建築と経営のあいだ ©︎再生建築研究所

3. 経営における武器とはなにか

渋谷 「ご自身がどう感じていらっしゃるかは別として、私たちや一般的な建築設計者の視点から見ると、神本さん、そして再生建築研究所は、「武器を持っている設計者」「武器を持っている事務所」と映っているのではないかと思います。

そのうえでお伺いしたいのが、その武器をどう活かすか、どう磨いていくか、どう社会に届けていくか、といった点です。 神本さんご自身が工夫されていることや、同じように何かしらの武器を持っている建築家の方々に向けて、伝えたいメッセージやエールがあれば、ぜひお聞かせいただきたいです。

神本 「僕達の場合は「再生建築」が武器だと言っていただくことがよくあります。ただ、僕自身はそれが特別なことだとはあまり思っていません。「再生建築ってすごい」とか、「たまたま20年前から取り組んでいたから波に乗れたんだね」、と言われることもあるのですが、どんな分野でも、最初はとっつきにくいものだと思うんです。僕にとっては、たまたま「再生建築」が自分に合っていたというだけで、それは決して僕だけの専売特許ではないと思っています。

誰しも自分に合った“武器”のようなものを必ず持っていると思うので、あとはそれをどう研ぎ澄ませていくか。そこが一番大切なのだと感じています。僕自身、もともとは“なまくらの鉄の棒”のようなものでしたが、それを“真剣”にしていくためには、やはり真剣に取り組み、手を動かし、考え続けることが必要だと感じています。」

建築と経営のあいだ ©︎再生建築研究所

渋谷 「なるほど、、、そのような予感はしました。おそらく多くの建築家は、その研ぎ澄ませ方に悩んでいると思うのですが、神本さんご自身は、その「研ぎ澄ませ方」をどのように見つけてこられたのでしょうか?」

神本 「僕が意識してきたのは、「建築のことは建築の人に聞く」という枠にとらわれないことです。たとえば、ある仕組みが通らない理由を知りたいときには、その仕組みに対して“NO”を出している側、つまり、通らない理由を抱えている当事者に直接聞いてみるようにしています。これは、人付き合いやコミュニケーションと近いかもしれませんが、「できない」と言っている人がいれば、「なぜできないのか?どうすればできるようになるのか?」と、 まるで小学生のように素直な気持ちで聞きに行くようにしています。

それに加えて、「考えていることを一度“外に出す”」ことも大事だと思っています。たとえばレクチャーなどの場で言葉にしてみると、自分の中でも整理されるし、フィードバックを通してさらに研ぎ澄まされていく。隠さずにオープンにすることで、物事はもっと面白くなっていくということは、実感として強く持っています。」

建築と経営のあいだ 再生建築研究所

4. 組織維持と経営ポリシー「運」と「縁」の力

渋谷 「試行錯誤しながらとはいえ、25人規模の組織を運営できているのはすごいことだと思います。日々、いろいろ模索しながらだとは思いますが、組織をよくしていく、あるいは維持していくために、神本さんが特に大切にしていることや、気にしていることはありますか?」

神本 「ポジティブであることというか、これまでを振り返って強く感じるのは、「運」と「縁」の存在です。これまで自分を育ててくれたのは、間違いなくこの二つだったように思います。

私は何かに迷ったとき、必ず“難しい方”を選ぶようにしているんです。その選択が正解かどうかは分かりませんが、困難な道のりのほうが、最終的に自分にとって大きな糧になると感じています。」

渋谷 「その選択が、結果的に「運」と「縁」に繋がっていると信じているということでしょうか?」

神本「そうですね。例えば、私たち再生建築研究所を応援してくださっているディベロッパーのひとつに、東急グループさんがあります。このご縁のきっかけは、実はかなり偶然に近いものでした。

昔、締切間際の時期に、先輩から飲みに誘われたことがありました。ギリギリの状態の中だったのですが、「ちょっとだけなら」と逆算して渋谷へ向かいました。そのとき、二次会で訪れたバーで、たまたま隣に座った方に話しかけたら、東急の方で。自分のやっていることをお話ししているうちに名刺交換となり、後日ご連絡をいただきました。やり取りをする中で、「再生研でできることはないですか?」という話になったことが、結果的に今に繋がっています。直接その方と仕事をご一緒したことはないのですが、もう10年以上のお付き合いになります。今でも定期的に近況をご報告していて、この方をきっかけに東急グループさんとのご縁が広がりました。そのおかげで、今に至るまで継続してお仕事をいただける関係性が築けています。

振り返れば、始まりは本当に些細な、説明のつかないような偶然の積み重ねでした。もし、あのとき「営業的」に何かを狙って話していたとしたら、絶対繋がっていなかったと思います。だからこそ僕は、「縁」や「運」、そして「ポジティブさ」といった目に見えない力を大切にしています。」

建築と経営のあいだ ©︎再生建築研究所


【建築と経営のあいだ研究所について】

建築と経営のあいだ研究所

©︎建築と経営のあいだ研究所

「建築と経営のあいだ研究所(通称:あいだけん)」は、建築士に特化した会員制の動画メディアで、設計力だけでは足りない時代に必要な「経営思考」や「マネジメント」といった知識の学び場です。経営学の論理(建築設計事務所経営論)と、実践的なインタビュー・ショートレクチャーを組み合わせ、インプットとアウトプットのサイクルで習慣化を目指しています。毎月更新のゲスト対談や動画視聴、マーケティング、ブランディング、プロジェクト管理、企業会計など、会員限定セッションを通じた学習コンテンツも充実。

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