愛知県を拠点に、注文住宅の設計・施工を手掛ける株式会社ホームランディック一級建築士事務所。優れた性能とデザインを高い次元で両立させた、妥協のない家づくりを追求しています。YouTubeを通じた発信でも注目を集める同社は今、ハイエンド住宅や、住まいの枠を超えた新たな設計領域へと活動を広げる転換点にあります。その背景にある家づくりの思想と、これから同社が目指す設計のあり方について、代表の伊岐見恭子氏をはじめとする、同社の設計スタッフにインタビューしました。
伊岐見恭子 氏(代表取締役・以下、伊岐見):ホームランディックは、創業から35年目を迎えます。創業者はゼネコンの現場監督出身で、一級建築士事務所としてスタートしたのち、自社での施工体制を確立してきました。現在は「性能とデザインの両立」を前面に打ち出していますが、その根底にあるのは、創業期から培ってきた構造や耐震性への強いこだわりです。そうした確かな基本があるからこそ、その上にデザイン性を積み重ねていくことができると考えています。

伊岐見恭子 氏。
伊岐見:住宅業界を見渡すと、デザインに力を入れるあまり性能や暮らしやすさが置き去りになっていたり、逆に耐震性や断熱性といった数値を追求する一方で、デザインが画一化していたりと、性能とデザインのどちらかに偏っている事例も少なくありません。
ですが、私たちが掲げているのは、「強く、賢く、そして美しく。」という哲学のもと、飽きのこない美しいデザイン、快適で安心な暮らしを支える性能、そして納得できるコストパフォーマンスのすべてを大切にする家づくりです。常に「自分たちも心から住みたい家をつくること」を軸にしながら、クライアント一人ひとりの想いに寄り添うようにしています。

Photo: ToLoLo studio
伊岐見:性能とデザインを高い水準で両立させるために、設計と施工を一気通貫で担えることは、私たちの強みの1つです。
畠山 氏(設計スタッフ):実際に、私たちのオフィスでは、設計チームのすぐ隣に施工チームがいます。細部の納まりや施工方法について、「このデザインを現場でどう表現し、実現するか」と悩んだとき、その場ですぐに相談できる環境にあります。
一般的な設計事務所では、自分が引いた図面が実際の形になるまでにどうしても時間がかかります。特に若い設計者にとっては、自分が描いたデザインに対するフィードバックが得られるまでにタイムラグがあり、どこに課題があったのかを実感するまでの期間が長くなりがちです。
その点、ホームランディックでは設計と現場が近いので、自分が設計したものが「かたち」としてフィードバックされるまでのサイクルが短い。これまでの自社物件で蓄積してきた納まりや施工の知見を参照しながら設計を進められるので、図面上のアイデアをより具体的な解像度で検討できます。やりたいデザインを実現するまでの距離が、物理的にも心理的にも近いことは、設計者として成長するうえでとても良い環境だと思います。

Photo: ToLoLo studio
伊岐見: 積算の面でも設計施工一体の強みが生きてきます。設計の初期段階から、かなり確度の高い金額を提示できるんです。設計をすべて進めたあとに施工会社に見積もりを取った結果、大幅に予算を超えてしまい、計画を見直すことになれば、クライアントにとっても設計者にとっても大きな負担になります。
設計者がデザインや性能だけでなく、施工性やコストまで含めて家づくり全体に責任を持つ。それはクライアントにとっての安心感につながりますし、設計者にとっても大きな学びになります。近年は住宅価格が上昇しているからこそ、予算との整合性を早い段階から確認しながら設計を進められることの重要性が高まっています。設計・施工・積算が近い距離にあることは、今の時代だからこそ大きな価値を発揮すると考えています。

Photo: ToLoLo studio
伊岐見:住宅の価格は上がり続けています。だからこそ私たちは、単に「価格が上がった住宅」をつくるのではなく、その価格に見合う価値を考えなければなりません。私たちは今後、よりハイエンドな住宅、さらに店舗やクリニックなどの非住宅分野への展開を本格的に計画しています。
ハイエンド住宅では、クライアントのご要望もより具体的になります。暮らし方や趣味、所有しているもの、来客との関係、将来的な使い方など、設計に反映すべき情報が非常に多くなる。そこに対して、デザインだけでなく、性能、施工性、コストの整合性まで含めてトータルで提案できることこそ、私たちの体制がもっとも活きる部分だと考えています。
また、ハイエンド住宅に取り組むことで、これまで出会いにくかった素材や納まり、空間の考え方にも触れることができます。そこで得た経験や引き出しは、これまで手掛けてきた注文住宅にも還元できるはずです。

写真提供:ホームランディック
伊岐見:その「住宅の枠を超える」という意味で、ハイエンド住宅へのシフトと同時に本格化させていきたいのが、店舗やクリニックなど、住宅以外の領域です。
住宅市場が縮小傾向にあるなかで、住宅に閉じない設計領域をもう1つの柱として育てていくことは、会社としての経営基盤を強くすることにもつながります。設計者が安心して挑戦し続けられる環境をつくるためにも、住宅だけに閉じない多角的な展開は重要だと考えています。
また、住宅はどうしても、「家族とはこうあるべき」「間取りはこうあるべき」という固定観念に、クライアントだけでなく設計者もとらわれやすいところがあります。だからこそ、住宅以外の領域で得た自由な発想や空間構成の考え方を、住宅設計にも持ち帰ることで、私たちの設計の幅を広げることにつながると思っています。

写真提供:ホームランディック
島田 氏(設計スタッフ):私は前職で店舗設計に携わっていました。これから会社が本格的に力を入れていく住宅以外の領域で、前職での経験を活かして自分の力をしっかりと発揮していきたいと考えています。
ホームランディックに入社して住宅設計に携わるなかで、さまざまなビルディングタイプを横断して経験できることの面白さも感じています。入社してすぐは自分のこれまでの経験を活かせるか不安な部分もありましたが、それぞれの設計で得た視点を行き来できることは、設計者としてのキャリアの幅を広げることにもつながっていると思います。
畠山:ホームランディックは、年齢やキャリアに関係なく、「やりたい」と手を挙げたことに挑戦しやすい会社です。たとえば、スタッフの発案から、自社オリジナルの造作キッチンを開発するプロジェクトが立ち上がり、現在は外部の専門業者と協働しながら進めています。
また、「家具までトータルでデザインしたい」という声から動き始めているプロジェクトもあります。住宅設計を軸にしながらも、デザインにまつわる領域であれば、自主性次第で幅広く関わっていけるフィールドだと思います。

設計スタッフの畠山 氏(右)と島田 氏(左)。
伊岐見:私たちがYouTubeを始めたきっかけは、コロナ禍でした。人と直接会う機会が減り、従来のように見学会を開くことも難しくなったことから、動画での発信を始めました。最初から大きな反響を想定していたわけではありませんが、動画を通じてご依頼をいただくようになり、結果的に会社にとって大きな転機となりました。
以前は、見学会にお越しいただかなければ、実際の住宅を見ていただくことができませんでした。ですが今は動画を通じて、空間の雰囲気や動線、素材の見え方まで事前に共有することができます。そのため、クライアントも具体的なイメージを持った状態で相談に来てくださることが増えています。
畠山:クライアントとの打ち合わせでも、YouTubeはとても役立っています。図面やパースだけでは伝わりにくいことも、「このように見えます」と動画をお見せしながら説明できる。クライアントにとっても完成後のイメージを持ちやすくなりますし、私たちにとっても共通言語として非常に使いやすいです。
また、YouTubeを通じて、他社の工務店や設計者、建築家とのつながりも生まれています。社内の設計力を高めるためには、外部の良い事例を見て学ぶことも大切です。自社の中だけで完結せず、外に学びに行ける姿勢は、ホームランディックらしいところだと感じています。
伊岐見:自分が設計した建築が世の中に大々的に発信されることは、設計者にとっても大きなモチベーションになります。インプットとアウトプットの双方が循環する、設計者としても刺激的なサイクルができていると思います。
また、私たちがこれまで培ってきた発信力は、住宅以外の領域とも相性が良いのです。商業分野を開業するクライアントにとっては、空間のデザインだけでなく、認知を広げることも極めて重要です。私たちが設計した空間をYouTubeで発信することで、ブランディングや集客の面でも協力できる可能性があります。

写真提供:ホームランディック
伊岐見:今回募集しているのは、住宅でも、店舗やクリニックなど住まいに閉じない領域でも、やりたいことがあり、その実現に向けて自ら提案し、判断しながら進めていける方です。
設計者として専門性を高め、設計チームの核となってくださる方はもちろん歓迎です。一方で、希望があれば、将来的にマネージャーとしてチームを率いてくださる方にも来ていただきたいと考えています。これから開拓していく領域も多く、また私たちは愛知県を中心に活動を広げてきましたが、現在は東京で進めているプロジェクトも複数あります。活躍の場はさまざまな用意できると思いますので、意欲のあるかたはまず、応募してきてくれると嬉しいです。

写真提供:ホームランディック
辻 氏(設計スタッフ):私の前職はハウスメーカーの設計部でした。ただ、実際には分譲住宅の設計が中心で、自分の「家」に対する考え方が、少しずつ凝り固まっていく感覚がありました。
ホームランディックでは、クライアント一人ひとりに向き合いながら設計することができます。自由度がある分、もちろん責任も伴いますが、その人の暮らしに深く向き合い、自分たちも心から住みたいと思える家をつくりたいという考えに共感できる方には、とてもやりがいのある環境だと思います。
他社と合同で勉強会を行うこともありますし、計だけでなく施工まで担う会社だからこそ、現場から学べることも多いです。図面上では気づきにくい納まりや施工上の工夫など、設計者としての視野を広がりを日々感じています。

設計スタッフの辻 氏(右)。
伊岐見:アトリエ設計事務所で働いている方にも、おすすめできる職場環境です。設計の自由度は持ちつつ、プライベートの時間もしっかり確保できますし、お給金や福利厚生の面においても、実績を出している方にはきちんと報いたいと考えています。
私たちは「デザインビルダー」と銘打っていますが、設計、施工、そして発信まで含めて、設計会社の新しいあり方をつくっていきたい。私たちと一緒に成長していける方をお待ちしています。

伊岐見恭子 氏(右奥)と、ホームランディックのスタッフ。
インタビュー:5月11日 ホームランディック小牧店にて
トップ写真:ToLoLo studio
そのほか特記なき撮影:福田 駿