東京・虎ノ門5丁目の麻布台ヒルズ ギャラリーにて、音楽家の坂本龍一氏(1952-2023)が2017年に発表したアルバム『async』をベースに制作されたインスタレーション作品を展開する「RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO – TOKYO」が8月28日より開催されています。
本作は、坂本氏の楽曲をもとに、アーティストの高谷史郎氏(1963-)が映像を制作、さらに坂本氏が構想した「設置音楽」のコンセプトに基づいて、サウンド・エンジニアで音響ディレクターのZAK(ザック)氏が展示空間にあわせた立体音響を設計。これらが1つになって鑑賞者に圧倒的な体験をもたらす複合型・没入型のインスタレーションです。「async(アシンク)」という、非同期を意味するタイトルの通り、高谷が制作した映像は、坂本氏の音曲に呼応しつつも完全には同期せず、音と映像の関係は絶えず変化し続けます。
本作が初めて公開されたのは、坂本氏の逝去後、2023年10月から12月にかけて京都にて開催された「AMBIENT KYOTO 2023」にて。会場の1つ、京都新聞ビル地下1階(旧地下印刷工場跡)を舞台に「坂本龍一 + 高谷史郎 | async – immersion 2023」として発表され、大きな反響を呼びました。
#AMBIENT KYOTO 2023 – Official Video / RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI〈async – immersion〉(2026/07/30)
作品について
坂本龍一さんが、2017年の発表当時、「あまりに好きすぎて、誰にも聴かせたくない」と表現した『async』。アルバムのアートワークを依頼していただいたのを機に、ニューヨークの坂本さんのスタジオを訪ねて撮影、その後、5.1chサラウンドのBlu-ray版『async – surround』を発売することになり映像を制作、ワタリウムでの〈坂本龍一|設置音楽展〉(2017年)ではインスタレーション「async – drowning」を制作、ニューヨークのアーモリーでのコンサート〈RYUICHI SAKAMOTO: async AT THE PARK AVENUE ARMORY〉(同年)の映像担当……と、さまざまなかたちで関わらせてもらいました。
もともとこのアルバムの制作時に坂本さんの中には「設置音楽」という、「音」を空間に立体的に設置して聴いてもらいたいという考えがありました。「AMBIENT KYOTO 2023」で、初めて〈async – immersion〉を展示した際、京都新聞ビル地下の広大な印刷工場跡地の空間に合わせて、坂本さんの理想とする環境を目標に、ZAKさんのディレクションのもと、マルチトラックで立体的な音響空間を体験できるインスタレーションとして制作しました。
映像は、坂本さんのスタジオの機材やピアノ、庭、空・雲や水の波紋、アイルランドやモロッコ、東京、ドイツの風景、そして坂本さんが出会った東日本大震災の津波で被災したピアノ。「async」(非同期)のコンセプトに基づき、一部テキスト部分などを除いて、基本的に映像と音楽は同期していません。音と映像の関係が絶えず変化する流れの中で作品を体験する、それは、反復するけれど同じことは二度と起こらない、波や雨の波紋を見ている時と同じ体験です。
高谷史郎
〈async – immersion〉はその後、東京都現代美術館での大規模回顧展「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」(2024-2025)でも展示されたほか、香港の現代美術館・M+(エムプラス)やベルリンなど各地で展開。展示空間にあわせて再構築されていますが、本展では、2023年の京都会場と同等の横幅26.4mの巨大スクリーンを用意。「AMBIENT KYOTO 2023」以降初めて、発表時と同等のスケールで体験することができます。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI | async – immersion 2026|Photo: Satoshi Nagare

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI | async – immersion 2026|Photo: Satoshi Nagare
『TECTURE MAG』では、開幕前日に開催されたメディア向け内覧会にて、作品を鑑賞。出席した高谷氏への囲み取材にも参加しました。

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG
「オリジナルのサイズで再び展示ができる機会を得ましたこと、とても嬉しいです。設置音楽という坂本さんが考えたコンセプトをもとに、音、映像、音響、空間、そしてそこに鑑賞者が入ることで生まれるサウンドインスタレーションを、坂本さんに体験してもらうことは叶いませんでしたが、関係者一同、亡き坂本さんに捧げる気持ちでつくりました」

メディア内覧会でのフォトセッションに応じる高谷史郎氏 Photo: TEAM TECTURE MAG
高谷史郎氏プロフィール
1984年京都市立芸術大学在学中に「ダムタイプ」のメンバーとして活動を始め、さまざまなメディアを用いたパフォーマンスやインスタレーション作品の制作に携わり、世界各地の劇場や美術館、アートセンターで公演や展示を行う。1998年からダムタイプの活動と並行して個人の制作活動を開始。近年の主な活動としては、2021年、坂本龍一とのシアターピース『TIME』をオランダ・フェスティバルで世界初演。2022年にダムタイプは坂本龍一を新メンバーに迎え、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展・日本館で新作《2022》を展示。2023年にアーティゾン美術館(東京)で、ヴェネチア・ビエンナーレ帰国展「ダムタイプ|2022: remap」展示。2024年春、『TIME』を東京・新国立劇場およびロームシアター京都で上演。現在、インスタレーション《WINDOWS》をミュージアムタワー京橋(東京)で展示中。
shiro.dumbtype.com
「本展では、京都とほぼ同じサイズのスクリーンに映像を流していますが、空間によって音が全て変わってしまうため、坂本さんの〈async〉のサウンドファイルを元に、ZAKさんが調整して、先刻まで丁寧に音響を配置していました。ゆえに、京都会場と全く同じ作品ではなく、東京都現代美術館会場とも”別物”と言えるサウンドインスタレーションになっています。この7月まで開催していた香港や、開催中のベルリンでも同様に、ある程度のフォーマットに落とし込んであるものを、コアの部分は変えずに、展開する空間にあわせて再構築して展開しています。
作品の素材としては、坂本さんの楽曲が14曲、1時間ほどあり、映像は2時間ほどの尺がありますが、この2つが同期せずにズレながら展開していくため、全てを見るためには2日ほどかかるでしょう(笑)。ただ、すべての尺を見てほしいわけではなく、実際にこの場を訪れて、坂本さんの音をこの空間の中で体験してもらうことで、インスタレーションとして成立するのではないかと僕は考えています。滞在が何分何秒であれ、その人の記憶の中から何かが引っ張り出されるような、そんな感覚を味わってもらえればと思います」(2026年8月27日 メディア内覧会での作品解説と、当媒体からの質疑への応答を要約)
坂本龍一氏プロフィール
故・坂本龍一氏 Photo: Neo Sora ©︎2020 KAB Inc.
1952年東京生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了。1978年〈千のナイフ〉でソロデビュー。同年、YMOの結成に参加。1983年に散開後は『音楽図鑑』、『BEAUTY』、『async』、『12』などを発表、革新的なサウンドを追求し続けた姿勢は世界的評価を得た。映画音楽では『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞作曲賞を、『ラストエンペラー』でアカデミー賞作 曲賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞など多数受賞。『LIFE』、『TIME』などの舞台作品や、韓国、中国、日本での大規模インスタレーション展など、アート界への越境も積極的に行なった。環境や平和問題への言及も多く、森林保全団体「more trees」を創設。また「東北ユースオーケストラ」を設立して被災地の子供たちの音楽活動を支援した。2023年3月28日逝去。
sitesakamoto.com
アーティスト:坂本龍一 + 高谷史郎
音響ディレクション:ZAK
映像プログラミング:古舘 健、浪川 作(7ild3)
サウンド・プログラミング:濱 哲史
グラフィック・デザイン:南 琢也
会期:2026年8月28日(金)~10月25日(日) ※会期中無休
開場時間:平日:10:00-19:00 / 土・日曜・祝日:10:00-20:00(最終入館は各日とも閉館30分前)
会場:麻布台ヒルズギャラリー
所在地:東京都港区虎ノ門5丁目8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階(Google Map)
観覧料:以下の通り
料金(大人料金):
平日:2,200円(前売)/ 2,500円(当日)
土・日曜・祝日:2,500円(前売)/ 2,800円(当日)
※「前売」は観覧前日までに観覧券販売サイトでの購入が必要
※ 高校生以下無料(受付時に生徒手帳の提示要)
※ 障害者手帳の提示で本人と付き添い1名まで無料
※ 小学生以下は保護者同伴要
主催:AMBIENT KYOTO 実行委員会(TOW / Traffic)

Photo: TEAM TECTURE MAG
公式ウェブサイト
https://ambientkyoto.com/
SNS
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