FEATURE
ヴェネツィアと高田馬場を結び、リアルタイムで進行する「Dear Takamizawa House」@ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉にて5/31まで開催
FEATURE2021.05.13

ヴェネツィアと高田馬場をリアルタイムでつなぎ、展覧会の新たな可能性を示す「Dear Takamizawa House」@ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉にて開催【内覧会Report】

高田馬場に新たな場〈BaBaBa〉がバババと爆誕!

2021年5月13日初掲
5月23日会期変更

東京・高田馬場の印刷工場跡をリノベーションした、ケーススタディスタジオ〈BaBaBa(バババ)〉が2021年4月22日にオープンしました。
設計を、長坂常氏が率いるスキーマ建築計画が手がけています。

ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉外観

ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉外観(Photo: Takumi Ota)

こけらおとしとなるエキシビションとして、第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(VBA)日本館展示チームと連動した企画展「Dear Takamizawa House」が、6月13日(日)まで開催されます(5月30日までの会期を延長)

〈BaBaBa〉を開設したのは、大阪で1949年に電話工事会社として創業し、現在は情報通信システムの提案から設計、構築、施工、運用、保守サービスまでを行なっているアンダーデザイン(under design)。2018年に「あらゆる企業を挑戦のステージへ」を掲げて現在の社名に改組して、代表取締役社長を務める川口竜広氏が率いる、歴史と革新を併せもつ企業です。ITインフラと空間プロデュース、アートを融合させることで、先進的なワークスペースを構築することを目指しています。

ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展連動企画 EXHIBITION「Dear Takamizawa House」@BaBaBa

EXHIBITION「Dear Takamizawa House」プレス内覧会当日の外観

かつては印刷工場だったビルの1Fにオープンした〈BaBaBa〉の上の階には、アンダーデザインの東京オフィスが浜松町から2020年3月に移転して入居。このオフィスの内装設計も、スキーマ建築計画が手がけています。

〈BaBaBa〉外観(画面右の屋台は"モバイルバー")
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展連動企画 EXHIBITION「Dear Takamizawa House」会場風景

〈BaBaBa〉オープン第一弾の企画展「Dear Takamizawa House」は、大きく2つの展示で構成されます。
1つは、VBA日本館展示のモチーフとなっている、旧「高見澤邸」が解体されていく様子を、建築家で写真家のヤン・ヴラノブセキ氏が撮り下ろした作品の展示。もう1つは、フロアの中央に展示されている作品の数々。会場の左奥では関連書籍が置かれ、その反対側にはモニターが数台設置され、時間帯によっては、職人らしき人物が作業する様子が映し出されています。

これらの展示がまとまって1つのエキシビジョンになっていますが、鑑賞するには、ある程度の予備知識が必要です。

コロナで開催延期となった「第17回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」のリベンジ展

第17回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展は、本来であれば、昨年5月から11月にかけて開催される予定でしたが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大のため、翌年に開催が延期されています(その間の活動資金への支援を求めて実施されたクラウドファンディングについては、【TECTURE MAG】にて報じたとおり・本稿フッターにリンクあり)。

日本館展示のキュレーターを務める門脇耕三氏(同氏のTwitterより)

第17回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示プロジェクトチーム

テーマ:ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡(英題:Co-ownership of Action : Trajectories of Elements)
キュレーター:門脇耕三(明治大学准教授・アソシエイツパートナー)
参加建築家:長坂 常(スキーマ建築計画代表)、岩瀬諒子(岩瀬諒子設計事務所代表)、木内俊克(木内建築計画事務所代表)、砂山太一(京都市立芸術大学専任講師・sunayama studio代表)、元木大輔(DDAA代表)
フォトグラファー:ヤン・ヴラノブセキ(VVAA)
施工協力:福元成武(TANK)
参加デザイナー:長嶋りかこ(village®代表)
リサーチャー:青柳憲昌(立命館大学准教授)、樋渡 彩(近畿大学講師)
エディター:飯尾次郎(スペルプラーツ代表)
アドバイザー:太田佳代子(CCA「c/o Tokyo」キュレーター)
主催:国際交流基金

日本館展示詳細
https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/arc/17/index.html

日本館展示 公式ウェブサイト
www.vba2020.jp/

人との縁から生まれ、発展したプロジェクト

旧高見澤邸から解体され、ヴェネツィアに運ぶ予定の資材は、長坂氏から相談を受けたアンダーデザイン代表の川口氏が、〈BaBaBa〉のオープンを準備中だった1Fを、一時的な保管場所として提供したという経緯があります(資材保管の様子や〈BaBaBa〉およびアンダーデザイン東京新オフィス施工の様子とオープンまでのストーリー、スキーマ建築計画に設計を依頼した背景などが、同社のウェブサイトにて公開されています)。

アンダーデザイン
「Road To BaBaBa Vol.1-9~BaBaBa誕生までの裏側~」

https://underdesign.co.jp/

明けて2021年の春、ようやくヴェネツィアでの展示が始まるのですが、TANKをはじめとする日本館の施工チームは、今年もイタリアに渡航することができません。
そこで、現地での設営は現地の職人だけで行い、日本からオンラインで指示を出すことに。リアルタイムで現地と日本(高田馬場)をつなぐ通信システムを、アンダーデザインが提供し、双方のインフラも同社が構築しています。

VBAへの技術協力のため、高速通信パッケージをオリジナルでデザイン

上の写真、バックヤードに置かれている黒いボックスは、インフラの一式をコンパクトに収納したもの。長距離輸送にも耐えられるよう、アンダーデザインがオリジナルでパッケージ化しています。ヴェネツィアビエンナーレ日本館には固定の通信回線がなかったため、このコンパクトなモバイルでの仕様が、今回の企画展の実現に大きく寄与しています。

ヴェネツィアと高田馬場が同時進行しながらそれぞれで進化する展覧会

ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館の展示は、「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」と題して、建築としては全く無名の、東京・世田谷に建っていた昭和期の木造住宅(高見澤邸)をヴェネチアまで運び、再構築して展示するというもの。高度なデータ解析と日本の現代建築&施工技術により、解体された木造民家から新たな建築の可能性を探り出すことを目的としています。

ヤン・ヴラノブセキ氏が撮影した、解体前の旧高見澤邸の内外観の写真作品のほか、会場に展示されているのは、VBA日本館展示に参加している、建築家の長坂 常、岩瀬諒子、木内俊克、砂山太一の各氏それぞれが、担当するパートで制作した、高見澤邸を解体して出た古材を再利用したモックアップや、本展のためにコンセプトを再構築したものです。

なお、取材した4月21日時点で制作中だった、旧高見澤邸の屋根を再構築し、現地でベンチとして再生した作品(デザイン:元木大輔氏)のモックアップが、5月11日に搬入されています。

前述の通り、本展の会場と、現地はリアルタイムでつながっており、会場に設置されたモニターには、現地の様子が映し出されます。会場に制作チームが在廊し、細かな施工指示を出したりやりとりする様子もそのまま公開されます。

本展は、日本館の設営と同時進行するため、展示物が毎週追加されていく予定。最新のネットワーキングがどこまで建築をサポートできるのか、本展はそれらを検証する試みでもあります。

ヴェネツィアでの会期終了後の新たな展開

なお、ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展の会期終了後、展示はオスロに運ばれ、家具などに再生することが決まっています。これは、日本館展示に参画している長嶋りかこ氏から投げかけられた、「もし廃棄するのなら、わざわざ日本からイタリアまでゴミを持っていくに等しい。そのことを建築家としてどう考えているのか」という提言に対し、建築家たちが応えたものであり、「ふるまいの連鎖」というテーマにも即しています。

本展は、ヴェネツィアでの展示をそっくりコピーしているのではなく、コロナ禍という現在進行形の事態や、環境問題への人々の意識の高まりといった世相も透けて見え、構成も独自のものとなっています。

リアルとオンラインメディアが交差する「裏側を見る/つくる/つなぐ」をコンセプトに掲げる、BaBaBaのこけら落としにふさわしい企画展です。
なお、会期中の関連イベントは、BaBaBaの公式インスタグラムなどで発表されます。(en)

雨水タンクをモバイルバーに転用した屋台(内覧会時は受付として利用)

EXHIBITION「Dear Takamizawa House」概要

ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展連動企画
EXHIBITION「Dear Takamizawa House」

会期:2021年4月22日(木)〜5月30日(日)6月13日(日)
会場:BaBaBa 東京都新宿区下落合2-5-15 1F(Google Map
開場時間:12:00-19:00(土・日曜・祝日 11:00-18:00)
入場料:無料(予約不要)
※COVID-19対策を実施(入場時はマスクを着⽤のうえ会場⼊⼝にてアルコール除菌剤を使⽤)、来場が集中した場合には入場制限あり
主催:アンダーデザイン
協力:第17回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示チーム

日本館展示詳細
https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/arc/17/index.html

VBA日本館展示 公式ウェブサイト
www.vba2020.jp

ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉外観(Photo: Takumi Ota)

〈BaBaBa〉のコンセプトは「裏側を見る / つくる / つなぐ」

アンダーデザイン 代表 川口竜広氏コメント:インターネットやSNSを通じて、いつでも、どこからでも、瞬時に情報にアクセスし、簡単に共有できるようになりました。日々流れてくる情報を通じて、私たちは世の中にさまざまな活動、表現に触れることができる一方で、その裏側にある、誰かしらが試行錯誤を重ねた過程や巡らせた思考があることを忘れがちです。
ケーススタディスタジオ「BaBaBa(バババ)」は、リアルなギャラリースペースとオンラインマガジンという2つのメディアを通じて、物事の背後にあるプロセスや思想にフォーカス。1つひとつの事象を丁寧に伝達していくことを主軸に活動を行います。

可変性に富む約100m²のフリースペースには、大型プロジェクションや配信システムも完備し、多様な表現に対応。一方、オンラインメディアでは、スペースでのリアルな活動とオルタナティブにリンクしながら、自由な運動体としての展開を目指します。

ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉施設概要

施設名称:BaBaBa(バババ)
オープン日:2021年4月22日(木)
内装設計:スキーマ建築計画 / 長坂 常
施工:TANK
屋台(モバイルバー)施工:高本設計施工
所在地:東京都新宿区下落合2-5-15 1F(Google Map)
面積:95.6m²
開場時間:12:00-19:00(土・日曜・祝日 11:00-18:00)
定休日:不定休(展示内容によって異なる。VBA展は月曜休)

BaBaBa 公式Webサイトbababa.jp
公式インスタグラム @bababa_jpn
https://www.instagram.com/bababa_jpn/

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