建築家の隈 研吾(1954-)の大規模展が、東京国立近代美術館にて、2021年9月26日まで開催されます。
昨年11月の高知会場を皮切りに、長崎に巡回し、本展・東京会場が展示の最後。なお、東京国立近代美術館において、大規模な建築家の個展が開催されるのは、今回が初となります。
本展のタイトルにある「ネコ」とは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界的に拡大し、新たな生活様式が求められているなかで、人々に必要なのは、高度経済成長期のように都市を上から俯瞰する視座ではなく、都会の路地や隙間を自由に歩きまわるネコ(猫)の視点であり、建築という閉じられたハコから外に出て、人間よりももっと低い、地べたに近いまなざしで都市を眺め、未だコロナ禍にある日々の生活を見つめなおすべきではないかという、隈氏からのメッセージが込められています。
会場は、有料の第1会場と、無料で入場できる第2会場の2つに分かれています。
第1会場では、国内外に数多ある隈氏が手がけた建築作品の中から、公共性の高いものを中心に68件が選ばれ、隈研吾建築都市設計事務所による模型やモックアップなどを展示。前回の長崎会場で展示された作品数は36件ですので、本展はその倍近い点数となります。
第1会場ではこのほか、高知県梼原町の作品群を、写真家で映像作家の瀧本幹也が撮り下ろし、坂本龍一氏が楽曲をつけた特別なインスタレーションや、映画監督の藤井光氏による《アオーレ長岡》の映像インスタレーション、アイルランドのマクローリン・ブラザーズによる《V&Aダンディー》のタイムラプス映像も、これまでの巡回展と同様にあわせて披露されます。
会場内の配置は年代順ではなく、「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」という、隈氏が考える「5原則」によって分類されているのも本展の特徴です。最新作の1つで施設の設計に携わった《国立競技場》や、新潟の交流型市役所《アオーレ長岡》といった大型の公共施設から、吉祥寺のハモニカ横町の一角でリノベーションされた居酒屋まで、規模の大小を取り混ぜて展示し、その全てに、隈氏自身による解説文が付きます。
第2会場(無料展示)は映像が中心。ネコの視点から都市を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》では、隈氏が居住する東京・神楽坂で暮らす2匹のネコにGPSなどを付けて撮影・制作された映像などが上映され、彼らの”視点”を疑似体験することができます(プロジェクト名にある数字はそれぞれ「ニャンニャン」「ゴロゴロ」と読むのが正式。本展のタイトルも「ネコ」の部分は「猫の絵文字 😺」が正式な表示)。そのほか、「復興と建築をめぐるインタビュー」と題したコーナーでは、南三陸町と熊本で収録された関係者へのインタビューと、隈氏本人へのインタビューも上映され、富山市〈TOYAMAキラリ〉の空間を擬似体感できる360度VRの展示もあり。また、無料エリアである美術館ロビーフロアと前庭にも、隈作品が展示されています。
Kuma Kengo: Five Purr-fect Points for a New Public Space
会期:2021年6月18日(金)~9月26日(日)
開館時間:10:00-17:00(金曜・土曜:10:00-21:00 ※当面は20:00まで)
※入館は各日とも閉館30分前まで)
休館日:月曜(但し、7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館)、8月10日(火)、9月21日(火)
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
所在地:東京都千代田区北の丸公園3-1(Google Map)
入場料:一般 1,300円、大学生 800円、高校生以下および18歳未満、障害者手帳を提示の方とその付添者1名は無料
※混雑緩和のため、オンラインでの入場予約を推奨
※同時時開催の所蔵作品展「MOMAT コレクション・スペシャル」およびコレクションによる小企画「鉄とたたかう 鉄とあそぶ デイヴィッド・スミス《サークルⅣ》を中心に」は、入館当日に限り、本展の観覧料で観覧可能
※新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府・東京都の要請次第では、スケジュールが変更される場合あり
問合せ先電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
東京国立近代美術館 公式ホームページ
https://www.momat.go.jp/
会場レポートはこちら↓
https://mag.tecture.jp/feature/20210805-kumakengoten-report/