福岡市の中心部・天神にて、福岡市による規制緩和「天神ビッグバン」[*1]のもと、複数の再開発事業が進行しています。
そのうちの1つに、天神交差点に面した敷地にて西日本鉄道が主導する「福ビル街区建替プロジェクト」があります。
*1.天神ビッグバン:福岡市が主導する特例制度。天神交差点から半径約500m、約80ヘクタールの範囲内で、航空法の高さ制限や容積率緩和を市が独自に実施することで、古い民間ビルの建て替えを促進し、民間投資を呼び込み、新たな空間と雇用を創出することを目的とする。認定第1号は、地上19階建ての〈天神ビジネスセンター〉。該当エリアでは、旧⼤名⼩学校跡地活⽤事業による「福岡⼤名ガーデンシティ」の建設も進行中
詳細:https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kaihatsu/shisei/20150226.html#mark01
敷地が接する天神交差点は、東西に走る明治通りと、南北に走る渡辺通りがクロスする、福岡市を代表する一等地。「天神ビッグバン」が描く円の中心です。
計画地の東側には、OMA NYを率いる建築家の重松象平氏が手がけた〈天神ビジネスセンター〉が2021年10月に竣工しています。
「福ビル街区建替プロジェクト」は第1期と2期に分かれ、第1期事業の計画概要は、2018年8月に発表されています(西日本鉄道プレスリリース / PDF)。
計画地の既存建物の3つ、旧福岡ビル、天神コアビル、天神第一名店ビル(天神ビブレ)は2019年より順次解体され、最終的に出現した、東西80m×南北100mの計画地に、地上19階の複合施設、(仮称)新福岡ビルが建設されます。街区全体の建替完了は2024年12月末を予定。
(仮称)新福岡ビルの開発コンセプトは、”創造交差点 meets different ideas”。多様性と偶発性に満ち、新たなビジネスや文化を生み出す、オフィス・商業・ホテルなどの大型複合ビルが計画されています。
天神明治通り街づくり協議会[*2]が策定したグランドデザインで、まちの将来像「アジアで最も創造的なビジネス街」の実現を目指すとのこと。
*2.福岡の都心部である「天神明治通り地区」約17haを対象エリアとして、老朽建物の機能更新とともに街づくりを推進する官民連携の地権者組織。西日本鉄道、九州電力、西部ガス、福岡地下街開発、福岡市などが会員となって2008年に設立。街の将来像として2009年にグランドデザインを策定、街の将来像として「アジアで最も創造的なビジネス街」を目指している
詳細:http://www.tenjin-mdc.org/
外装デザインは、米国の建築設計事務所・KPF(:Kohn Pedersen Fox Associates / コーン・ペダーセン・フォックス)が担当。自然換気を可能とするダブルスキンを採用し、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)をはじめとする感染症対策を講じています。
このほか、最先端の高性能制震システムや、非常用発電機の設置などによる、BCP(事業継続計画)機能を強化した、ハイスペックのビルディングであり、環境に配慮した設備機器や地域熱供給システムなども採用して、DBJ Green Building認証において最高ランクの「5つ星」も取得しています(2022年5月13日 西鉄プレスリリース)。
8Fから17Fを占めるオフィスフロアは、合わせて約46,000m²(約14,000坪)、1フロアあたりの床面積は西日本では最大級を誇ります。天井高は3m、無柱での大空間となる予定です。
オフィステナントとして、九電工の入居(定期建物賃貸借予約契約の締結)が5月30日に発表され、本社機能の一部を移転するとのこと。
18-19Fには、多目的ホールなどが付帯するホテルが開業(ホテルエントランスは1F、多目的ホールは6F)。
西日本鉄道では、Plan・Do・See(東京都千代田区)と2021年12月にホテルマネジメント契約を結んだことを発表(プレスリリース)。2025年春の開業を目指して準備中です。
なお、同社は、京都・鍵屋町にある任天堂旧本社社屋を改装し、ホテルとして開業した〈丸福樓〉のプロデュースを担当しています。
ホテルの内装デザインは、建築家の中村拓志氏が率いる、NAP建築設計事務所が担当。福岡の地域性の中でも最も重要な歴史上の人物である、菅原道真公の逸話などから着想を得たデザインが要所に施される見込みです(※本稿のイメージとコンセプトは、2021年12月プレスリリース発信時点のもの、デザインは今後変更になる場合あり)。
ホテルのデザインコンセプト:
ビルのコンセプト“創造交差点 meets different ideas”の魅力を最大限に引き出す新しいホテルとして、客室の特別なプライベート感と、交流の仕掛けのあるパブリックゾーンがグラデーショナルに接続するホスピタリティ溢れるホテルを目指す。
天神の名の由来となった、菅原道真公をモチーフとした空間づくりでホテル空間を演出する。
客室数は全41室、客室面積は約40m²から65m²の広さ。福岡の眺望を堪能できるバルコニー付きの客室や、集中した作業ができる書斎を中庭に面して用意する客室などのほか、外気浴ができるテラス付きのサウナ、中宿泊者同士が交流できるラウンジなど、長期滞在を想定したコンテンツが用意される予定です(2021年12月22日プレスリリースより / PDF)。
最上階の19Fに設けられるレストランには、博多湾を望むルーフトップバーのほか、イベントの開催も可能な、ライブ感あふれるキッチン付きの交流空間・シェフズスタジオなどもしつらえられます。
中村拓志氏コメント
「ここ天神の中心で新たなホテルを創造できることを光栄に思います。建物全体のコンセプトである“創造交差点”をテーマにホテルをデザインするにあたり、多彩な体験型コンテンツを持つライフスタイル型ホテルを計画しました。すれ違う交差点に居心地の良い場所をそっと置くことで、そこに交流が生まれます。このホテルが、ここ天神にふさわしい新たなリトリートとなり、施設全体の多様性と偶発性を向上させ、“創造交差点”の象徴となるようなホテルを創っていきます。」(西鉄グループ プレスリリースより)
事業名称:福ビル街区建替プロジェクト
用途:オフィス、商業、ホテル、カンファレンス
所在地:福岡市中央区天神1丁目11番
敷地面積:約8,600m²(約2,600坪)
延床面積:約147,000m²(約44,000坪)
階数:地上19階、塔屋1階、地下4階
建物高さ:約97m
設計者:以下のとおり
基本設計:日建設計
実施設計:鹿島建設
外装デザイン:Kohn Pedersen Fox Associates(KPF / URL)
※スカイロビー、オフィス共用部、1階共用部の内装デザインも担当
商業内装デザイン:乃村工藝社
ホテル内装デザイン:NAP建築設計事務所
施工:鹿島・安藤ハザマ・松本・西鉄建設 特定建設工事共同企業体
竣工(予定):2024年12月末(ホテルを含む施設開業は2025年春)
福ビル街区建替プロジェクト ティザーサイト
https://www.nishitetsu.co.jp/new_fukubiru/