東紀州では初の児童養護施設となる〈東紀州こどもの園〉は、社会福祉法人聖マッテヤ会(津市)が熊野市内に建設中のもので、2023年7月に着工、2024年春に完成する見込みです。
本プロジェクトは、IT周辺関連製品の開発、製造、販売を行っているエレコム(大阪市、1986年設立)の創業者で現取締役会長の葉田順治氏の個人の着想と強い想いにより、スタートした活動です。
同社の発表によれば、葉田氏は三重県熊野市の出身。10年ほど前から、個人として、また同氏が代表理事を務める公益財団法人葉田財団として、子どもたちへの支援活動をさまざまに行っており、本プロジェクトもその一環とのこと。エレコム社としても、本プロジェクトの趣旨に賛同し、SDGsの活動の一環として費用の一部を寄付しています。
建設にあたり、葉田氏は三重県特産材であるスギやヒノキを使いたいと考えました。そこで、国立競技場の設計を手がけたことでも知られる建築家の隈 研吾氏にアポイントをとり、趣旨を説明したところ、建物の設計を隈研吾建築都市設計事務所が引き受けるに至ったとのこと。
設計者:隈 研吾氏コメント
今回の児童養護施設の設計にあたり、エレコムの葉田会長より、子どもたちがその施設出身だということに誇りを持って安心して暮らせるような施設をつくりたいということ、そしてその施設は”木”でつくりたいというお話をうかがい、絶対に一緒につくらせていただきたいと思い、設計に携わらせていただきました。
設計の前に、私も実際に建設予定地へ赴きましたが、熊野市の緑あふれる場所で、ここであれば子どもたちも木の空間の中で気持ちよく安心して暮らせると感じました。
今回設計させていただいた建物は、周囲の山並みに沿うようなかたちをした屋根をもつ平屋の建物です。
地元産の紀州材の中でも三重県の材を中心に使用し、外壁にも紀州材(杉・ヒノキ)をふんだんに使用しています。建物に入ると杉・ヒノキの香りがしてそれだけでも気持ちが癒されるような建物になるかと思います。外観の特長は柔らかさ、温かさです。建物は、児童養護施設と児童家庭支援センターの機能を有しています。児童家庭支援センターは、地域の方も利用いただけるような開かれたところです。建物のテーマは、「開かれる」と「守る」を両立する施設。施設の中央には熊野桜を配置する予定で、園庭には遊具エリアも設けています。季節ごとに彩りの違いを楽しんでいただけるような庭となっています。
これまでの児童養護施設は閉ざされたイメージがあったかと思いますが、この施設はこれまでのイメージを変えるようなデザインになっていますので、ここで生活した子どもはきっと大きく育ってくれるんじゃないかと思っています。
社会福祉法人聖マッテヤ会 理事長:池田修一氏コメント
私どもは三重県の社会的養育推進計画において、東紀州地区で家庭的小規模化施設を展開するミッションをいただいています。単独の法人として資力が乏しい中でどうしたものかと考えあぐねいていたところ、エレコムの葉田会長より心強いお話をいただきました。
7月に起工した建物は、既設の児童家庭支援センター「きしゅう」を中核とした、児童養護施設と子どもたちのシェルターの役割をもつ施設です。心温まる紀州産材の柔らかい雰囲気の中で隈研吾さんのコンセプトが生かされ、子どもたちが過ごせることは、本当に夢のようです。
隈氏らが述べているように、〈東紀州こどもの園〉は、子どもたちが東紀州の自然に囲まれた快適な施設で伸び伸びと育ち、地域住民の方々と交流しながら友達もつくり、プライドをもって健やかに生きていけることを願って建設されます。
さらに、卒園後も、都会に出て就労せずに地元でITエンジニアとしての職に就けるよう、ソフトウェアのプログラマーとして育成する仕組みづくりも模索中とのこと。
施主・運営主体:社会福祉法人聖マッテヤ会
設計:隈研吾建築都市設計事務所
建設地:三重県熊野市金山町内
着工:2023年7月
完成予定:2024年春
本件に関するエレコムプレスリリース(2023年8月9日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000622.000026881.html