大和ハウス工業が、奈良市に研修施設〈大和ハウスグループ みらい価値共創センター〉を2021年10月1日に開所すると発表。建物の設計監修を、建築家の小堀哲夫氏が代表を務める小堀哲夫建築設計事務所が担当しています。
奈良県は、大和ハウスグループ創業者である石橋信夫氏のゆかりの地。同グループは、創業100周年にあたる2055年に売上高10兆円を目指しており、創業者の精神を体現できる”人財”育成の一環として、地域住民と新しい価値を創出できる研修施設の開所に至ったとのこと。
建物の立地は、同グループの奈良研修センター跡地および奈良工場の一部敷地で、2019年7月に着工。従前の研修センターの約3.5倍の延床面積を有し、先進的な設備・体制を取り入れた、DX(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)技術、SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))対応の仕様とデザインによる次世代研修センターとなっています。
国内外の人々が利用することを想定し、祈祷室や、性別に依存しないオールジェンダートイレなど、ダイバーシティ対応の設備も整えたとのこと。
建物の愛称は「コトクリエ」です(由来は後述)。
1.日本で初めて、3つの国際認証、環境関連の「LEED®」、ランドスケープ関連の「SITES®」、健康関連の「WELL®」を取得予定[*1,2]
2.国内認証である「JHEP」(生物多様性)や「BELS」(省エネ)を取得[*3]
2.自然エネルギーと省エネ技術の活用によるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
3.BEMSによるエネルギー管理や在室率などの”見える化”
〈大和ハウスグループ みらい価値共創センター〉は、帯水層蓄熱システム「ATES(エーテス)」や、太陽光発電100kWをはじめとする自然エネルギーの活用など、先進的な省エネ技術を採用した環境配慮型施設です。
同規模の一般建築と比較して、約63%のエネルギーを削減でき、ZEB[*4]を実現しました。
「ATES」では、施設地下に熱源水槽を設け、年間を通して一定の温度に保たれている地下水から採熱し、夏は冷房、冬は暖房に利用することで空調エネルギーの負荷を低減します。
また、画像センサーを用いて、室内の人数を検知して空調や照明を制御することができ、省エネを図ります。
人が立ち止まると100%点灯、人が通ると25%点灯、誰もいないと消灯するシステムを採用しています。
また、同センターでは、施設における創エネ・省エネ効果や、「ATES」の稼働状況、在室率などを確認できるBEMS[*5]を導入しています。
創エネ・省エネ効果(エコ指数)では、前月の太陽光発電による発電エネルギーと省エネ設備による削減エネルギーを、一般住宅[*6]の戸数で算出。「ATES」の稼働状況では、当日削減しているエネルギー量を表示します。
空気環境では、花粉やPM2.5などの屋外の空気環境と屋内とを測定し、10分ごとに反映。在室率では、密集防止やコミュニケーションの可視化を図るため、10分ごとに1平米あたりの在室率を表示します。
建設にあたっては、企画から設計・生産・施工・施設管理までを行えるBIMを採用しました。竣工後のライフサイクル全体にもBIMを用いることで、部材生産や施設の維持・管理などの効率化を図ります。
保全作業・点検、修繕の情報をBIMに連携するシステムに記録することで、建物の資産価値を高める維持管理データの分析や、効率的な修繕対応につなげていきます。
発掘された平城京時代の遺構を活用した施設として、出土品と井戸を館内に展示しています。
また、奈良県を代表する建築物である薬師寺や東大寺のほか、若草山などの景観を一望できる特別迎賓室「丹生庵」には、外国の要人を招いたときに用いる立礼卓(りゅうれいたく)も、春日大社境内の杉を使ってしつらえられています。
これらの設備を整えた〈大和ハウスグループ みらい価値共創センター〉は、建築家の小堀哲夫氏が設計監修を担当しています。
センターの建設にあたり、施設のコンセプトの検討のため、従業員延べ150名がワークショップに参加。そこでの考えをもとに、「風・光・水を採り入れた自然を感じる研修施設」というコンセプトが策定され、建物の基本計画およびデザイン、全体の監修を、建築家の小堀哲夫氏が担当しました。
小堀哲夫氏プロフィール
1971年、岐阜県生まれ。1997年、法政大学大学院工学研究科 建設工学専攻修士課程(陣内秀信研究室)修了後、久米設計に入社。2008年、株式会社小堀哲夫建築設計事務所設立。2017年「ROKI Global Innovation Center -ROGIC-」で日本建築学会賞、JIA日本建築大賞を同年にダブル受賞。2019年に「NICCA INNOVATION CENTER」で二度目のJIA日本建築大賞を受賞する。2020年〜・法政大学デザイン工学部建築学科教授。
小堀哲夫氏コメント
ワークショップを通して生まれた「エンドレスにつながる」「生命体のように 進化・成長し続ける」という発想と、平城京の南端に位置するこの土地の記憶が融合し、〈大和ハウスグループ みらい価値共創センター〉のデザインは生まれました。この建築が新しい人財づくりの共育・共創・共生の場となることを願っています。
ンターの愛称「コトクリエ」とは、奈良の「古都」と、多種多様な人々をあらわす「個と」、未来を担う”人財”を育んでいく姿勢を示した、「子と」ともにさまざまなな「コト」を創りあげていく施設という意味が込められています。さらに、共創の英訳である コ・「クリエ」ーションをあわせたネーミングです。
〈大和ハウスグループ みらい価値共創センター〉は今後、主題である国内外の社員研修のほか、環境配慮技術のショールームとしても機能。未来を担う中学生・高校生の探究学習と連携した社員教育カリキュラムなども設定しており、地域住民や異業種の企業、研究機関との交流施設としても運営していく計画です。(en)
施設名称:〈大和ハウスグループ みらい価値共創センター〉
愛称:「コトクリエ」
デザインコンセプト:風・光・水を採り入れた自然を感じる研修施設
所在地:奈良県奈良市西九条町4丁目1-1(Google Map)
建物規模:地上4階建て、建物高さ19.66m
敷地面積:18,251.37m²(5,521.03坪)
建築面積:7,121.24m²(2,154.17坪)
延床面積:17,048.07m²(5,157.04坪)
施設内容:ホール・研修室・宿泊施設 等
研修室:150名×2室、100名×1室、80名×2室
宿泊者数:最大288名(宿泊ブース212名、宿泊個室60名、多目的個室16名)
基本計画・全体監修:小堀哲夫建築設計事務所
設計・施工:大和ハウス工業・フジタ
施工期間:2019年7月~2021年6月
開所日:2021年10月1日
大和ハウス工業 公式ページ
https://www.daiwahouse.co.jp/kotokurie/
プレスリリース
https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20210928102116.html
*1.GBCI:米国のGreen Business Certification Inc.TM(グリーン・ビジネス・サーティフィケーション社)が認証を行う国際的な評価・認証制度。LEEDはU.S. Green Building Council®、SITESは Green Business Certification Inc.TM、WELLはWELL Building InstituteTMが商標を所有
*2.取得の内訳
LEED認証
認証時期:2021年8月24日取得済み
内容:国際的な建築物環境性能評価システムで、7つの評価項目(敷地選定、水資源の保全と節水、エネルギーと大気、材料と資源、室内環境、革新性、地域別重みづけ)の合計点により格付けされる。今回の認証では、Goldランクを取得
SITES認証
認証時期:2021年12月取得予定
内容:ランドスケープ(外部環境)を10の観点(敷地のコンテクスト、設計前のアセスメントと計画、デザイン – 水、土壌と植生、材料選定、人の健康とウェルビーイング、建設、運用と維持管理、教育と運用実績のモニタリング、革新的取り組みと模範的パフォーマンス)を評価する
WELL認証
認証時期:2021年12月取得予定
内容:従業員の健康に配慮した建物環境及び業務運用の評価基準となる世界初の認証制度。9つの観点(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、材料、こころ、コミュニティ)から評価される
*3.同上
JHEP認証
認証時期:2021年9月6日取得済み
公益財団法人日本生態系協会が生物多様性の保全や回復に貢献する取り組みを定量的に評価・認証する制度
BELS認証
認証時期:2021年5月27日取得済み
建築物省エネルギー性能表示制度。新築・既存の建築物において、省エネ性能を第三者評価機関が評価し、認定する制度。今回の認証では、最高ランクとなる五つ星ランクを取得
*4.ZEB :ZEB Readyに該当。再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から、50%以上の一次エネルギー消費量を削減した建築物のこと
*5.BEMS:室内環境とエネルギー性能の最適化を図るためのビル管理システムを指す
*6.国土交通省が公布した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」で定める基準建物