社会インフラ領域のイノベーション推進と新産業創出を目指すU3イノベーションズ合同会社(U3I)と、住宅・不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」の企画・運営などを行っているLIFULL(ライフル)は、エネルギーや水など既存のライフラインに依存しない、完全オフグリッド環境の生活実装を目指し、山梨県北杜市内に実証実験施設「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳」を開所したと発表しました(2022年2月28日プレスリリース)。
ライフルでは、2019年3月に、一般社団法人Living Anywhereが推進するプロジェクト「LivingAnywhere」の考え方に基いた、場所にしばられない働き方・生き方を目指す共同運営型コミュニティ「LivingAnywhere Commons」の運営を開始。今回、実証実験施設を置いた「LivingAnywhere Commons八ヶ岳北杜」(LAC八ヶ岳)は、このコミュニティー拠点の1つです。
Living Anywhere
https://livinganywherecommons.com/
今回の開所に先行し、U3Iとライフルの2社は、完全オフグリッド環境の生活実装を目指したリビングラボプロジェクト「リビングラボプロジェクト」を2021年9月に立ち上げています(プレスリリース)。
自律分散型テクノロジーを持つスタートアップや大企業、大学・研究機関などのほか、スポンサー、将来的な事業化に向けたパートナーとなる企業を翌10月より募集していました。
当初のスケジュールに沿った今回のラボ開所は、ライフルが推進する「LivingAnywhere」の考えを実践したものであるとともに、エネルギーや水、廃棄物処理などのインフラ領域における、自律分散型テクノロジーを集積し、生活実装を進めることを目的としています。ライフラインに制約を受けない、より自由なライフスタイルと、地域社会の持続可能性の実現を目指します。
プロジェクトでは、後述する「インスタントハウス」を5棟建設。オフグリッドソーラー[*1]や小型淡水化装置[*2]などを実装し、最大2世帯が生活できるオフグリッド住環境となっているとのこと。
「インスタントハウス」は、建築技術開発を目的として設立した「LIFULL ArchiTech」において、名古屋工業大学大学院工学研究科北川啓介教授とLIFULLが共同で開発したものです。
ドーム型の生地を空気によって大きく膨らませ、内側からウレタン材を吹き付け、生地とウレタン材が一体となれば完成。高い利便性と快適性を確保しつつ、かたちと大きさ、機能なども自在に変更できるため、さまざまなシーンに対応できるとのこと。
*1.オフグリッドソーラーとは
ネクストエナジー・アンド・リソース社のソーラーカーポート「Dulight」と、オフグリッドシステムにより構成される。*2.小型淡水化装置
ワイズグローバルビジョン社の小型淡水化装置「MYZシリーズ」を採用。浄化した水を施設内で循環利用する。
同シリーズは、従来は大型の海水淡水化装置を小型化。海水からの脱塩、塩分除去だけではなく、濁水もろ過して、厚生労働省が定める水道法の基準値をクリアする真水に変え、造水できる。
・LDK棟(1棟):キッチンユニットやダイニングテーブルなどを設置。
・住居棟(2棟):ベッドやデスクなどを設置
・水回り棟(1棟):シャワー、洗濯機、洗面台、トイレなどを設置
・インフラ棟(1棟):蓄電池などの電源設備と水処理設備および給湯設備を設置
上記5棟に加え、隣接してソーラーカーポートを2棟設置。発電した電気は、インフラ棟の大容量蓄電池に充電するとともに、建物内の家電・設備類に供給されます。
また、建物内で利用された生活排水は、インフラ棟の水処理設備で浄化され、シャワーやキッチンで使う水へと循環利用されます。
ソーラーカーポートの屋根は、太陽電池モジュールを備え、必要な電気を生み出しながら、駐車場もしくは車中泊サイトとしても土地の有効活用が可能となります。オフグリッドシステムでは大容量の蓄電池も備えており、夜間や雨天日でも電力系統に頼ることなく電気を使うことができるとのこと。
2022年3月1日より「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳」にて実生活に基づく実証実験を開始いたします。実証実験はその後も継続しながら、得られた結果に基づく商用トライアルでさらに知見を蓄積した上で、2023年上期をめどにサービス提供を開始する予定です。
今後のスケジュール(予定)
2022年3月1日 第1期実証開始
2022年6月 第1期実証結果報告および第2期実証アナウンス
2022年10月 オフグリッドサービス商用トライアルアナウンス
2022年12月 オフグリッドパートナーカンファレンス(年次イベント)開催
2023年上期 オフグリッドサービス提供開始
ライフルでは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大後のニューノーマル時代の流れを受けた、2022年と以降において、グランピングなどレジャー市場におけるインフラとしてのサービス提供を計画。さらに将来的には、少子高齢化を背景に、確立が困難になっていくと予想される地方のライフラインを支えるサービスとして、市場規模1兆円以上のマーケットへのエントリーを想定しています。
#U3I YouTubeチャンネル「Utility3.0の実践:分散型技術が拓く未来(long.ver)」(2021/12/22)
LIFULL(ライフル)プレスリリース(2022年2月28日)
https://lifull.com/news/22932/