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日建設計と住友林業が「合成梁構法」を共同開発


木質梁に「のこぎり形接合」を導入、梁せいおよび階高を抑えて、中大規模木造建築の普及を強力に後押し

BUSINESS2022.06.15

日建設計と住友林業が、5月末にそれぞれプレスリリースを発表。2社の共同で、のこぎり状に凹凸をつけた木質梁と、RC床版(鉄筋コンクリ—トを用いた床版[しょうばん])を組み合わせた合成梁構法を開発したとのこと。以下は両社の発表より。

今回開発された「合成梁構法」とは、木とコンクリートの圧縮強度が近い特性を活かし、この2つを強固に接合してロングスパンを実現する構法です。
これにより、梁の高さである「梁せい」を抑えられるため、建物の階数を増やすことができ、オフィスや学校、病院などの計画などにおいて、中大規模木造建築の普及を推し進めることも可能となります。

日建設計×住友林業「合成梁構法」

開発の経緯

木材は、軽くて強く、身近な建築用材として広く使用されている素材です。中大規模建築を木造化する場合の課題として、床に用いると振動が伝わりやすく、居住性に影響があること、強度を担保するためには木材の断面を大きくする必要がありました。しかしこれでは空間を圧迫してしまいます。

これらの課題を解決するため、日建設計と住友林業は、2016年にプロジェクトチームを立ち上げ、実験と検証を繰り返し、その結果として、木質梁そのものに凹凸をつけ、RC床版とつなげる「のこぎり形接合」による「合成梁構法」の完成をみたとのこと。

日建設計×住友林業「合成梁構法」

12mスパンの実大曲げ試験の様子

「合成梁構法」の特長

「合成梁構法」は、木とコンクリートの圧縮強度が近いという特性を活かし、互いを強固に接合させる、ハイブリッド構法です。

RC床版が木造梁の剛性を高めるため、揺れにくく、鉄骨造とコンクリートスラブによる床と比べた場合でも、遜色のない揺れにくい床を実現。梁の長さは、従来の梁に比べて、倍の約12mのロングスパンを実現できるようになり、大きな床面積の中大規模建築にも対応が可能となっています。梁せいが非合成梁の場合は通常120cm程度なのに対し、90cmと約4分の3にすることができ、高層化の際には、階高を抑え、階数を増やす増床にもつながります。

また、梁せいを抑えることは、耐火被覆面積の削減、建物全体の高さの抑制となり、建築費の削減にもつながります。集成材やLVL(: Laminated Veneer Lumber / 単板積層材)などを使うことができ、木材の樹種の制約も少なくなり、汎用性の高い、非住宅の中大規模木造建築の促進に寄与できると2社では考えています。

なお、この「合成梁構法」は、2022年4月に日本ERI株式会社で構造性能評価[*1]を取得しており、床工法との組合せ自由度が高く、在来型枠工法[*2]にも活用できるとのこと。さらにはデッキプレート[*3]など、さまざまな型枠にも対応しています。

日建設計×住友林業「合成梁構法」

木ぐるみCT部材断面

「合成梁構法」は、共同で開発を行なった住友林業が展開するオリジナルの木質部材「木ぐるみ」シリーズ[*4]をはじめとする、耐火構造の木質梁に本構法を適用することも可能。木質構造でハードルの高い高層建築はじめ、建物の構造の種別や高さ、階数を問わずに活用することができます。

住友林業の「W350計画」に向けた技術開発

住友林業では、1691年の創業から350周年となる2041年に向けて、街を森にかえる環境木化都市の実現をめざす研究技術開発構想「W350計画」を2018年に発表しています。この計画のモデル建築となる木造超高層ビルの設計を、日建設計が担当。このほど開発された「合成梁構法」も、同計画における中大規模建築に活用できる技術の1つとなっています。

脱炭素社会の実現へ向けて

今後、両社は、誰もが使いやすい合成梁構法の普及とともに、国(環境省)が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」のための、温室効果ガスの実質ゼロという目標に向け、木質構造の技術開発と普及を進めていく計画です。

両社の発表資料によれば、国土の3分の2が森林で覆われている日本は、戦後に植林された人工林が伐採期を迎えているとのこと。このため、森林資源の循環や国土の保全の観点から、国産木材の積極的な活用が求められています。
これに対して、非住宅市場の木造化率は10%弱にとどまっており、国産材を含めた木材需要を増やすためには、中大規模物件の木造化、非住宅物件の木造化が重要となります。
さらに、2021年10月には、建築物一般で木材利用を促進する「改正木材利用促進法」[*5]が施行されるなど、積極的な木材利用による森林循環の必要性がいっそう高まっていることが、今回の共同開発の深い背景として存在しています。

*1.構造性能評価:建築基準法で定められていない「特殊な構造方法を用いた建築物や構法」を審査し評価することで、複雑な手続きがなく通常の確認申請で適用可能となる評価制度
*2.在来型枠工法:合板と桟木等で構成された型枠を用いてRC床版を打設する工法のこと
*3.デッキプレート:RC床版を構築するための仮設材で、薄い鋼板で構成された型枠のこと
*4.「木ぐるみFR®」および「木ぐるみCT®」がある
4-1.木ぐるみFR®:1時間耐火構造の大臣認定を取得。難燃処理した木材で荷重支持部を被覆し、耐火性能を確保した純木質構造部材で、木を現(あらわ)しにした耐火木造建築を実現
詳細:https://sfc.jp/treecycle/value/kigurumi_fr.html
4-2.木ぐるみCT®:耐火被覆材に、一般流通品であるCLTや不燃材などを使用した耐火部材で、1時間および2時間、3時間耐火構造の大臣認定をそれぞれ取得
詳細:https://sfc.jp/information/news/2021/2021-03-31-02.html
*5.脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律
詳細(林野庁):https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/

日建設計プレスリリース(2022年5月30日)
https://www.nikken.co.jp/ja/news/press_release/2022_05_30.html

住友林業ニュースリリース(2022年5月27日)
https://sfc.jp/information/news/2022/2022-05-27.html

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