戸建住宅の設計を中心に、特注家具のデザイン、製作も自社で手掛ける茅ケ崎市の設計事務所・KONARA HOUSE。自社の家具職人とチームで設計するスタイルで、近隣に取得した家具工場・Konara Factoryで家具製作も行っています。大型設備を多く導入した本格的な家具工場を構え、設計事務所を運営する理由を代表の小形 究氏に聞きました。

小形 究氏
—– こちらは実際に暮らしていたご自宅とうかがいました。ショールームにされた経緯は?
小形 究氏(代表取締役・以下、小形):私は高校卒業後にカナダの建築専門学校へ留学し、北米のデザインを勉強しました。古き良きアメリカンハウスが好きで、今もアメリカへはよく視察に行っています。日本に戻ってからは工務店で大工として建築のキャリアをスタートさせ、3年ほど現場で大工技術を学びながら、だんだん設計や監理も任されるようになりました。その後は大工技術を継承できるように大工を雇い育てる工務店のかたちで独立しました。
現在、ショールームとしているこの戸建住宅は、2009年に自分たちのやりたいことを全部詰め込んで設計、施工した元自邸です。土地を取得して開墾して(笑)、設計も施工もいろいろ試行錯誤し、とても勉強にもなりましたし、贅沢な経験だったと思います。
家族で暮らしていた当時からショールームとして運営していました。実際に暮らしているリアルさと設計スタイルを同時に見てもらえ、建てた後の暮らしを想像してもらいたかったのです。しかし、だんだんショールームの案内と子供たちの勉強時間や環境との両立が難しくなってきました。今は自宅を別に構え、こちらはそのままショールームとするほか、ハウススタジオやウエディング会場として貸し出しもしています。

Photo: Nacasa&Partners Miyuki Kaneko | 金子美由紀
—– アトリエ系事務所でここまで本格的な家具工場を運営されているのはめずらしいと思いますが、家具製作まで手掛けられているのはどのような背景があるのでしょうか?
小形:私たちが空間に納まるキッチン、洗面台、造作家具も一緒に自社でデザイン、製作してインストールしているのは、空間に合う家具まで仕上げることでまとまりや美しさが増すからです。以前は家具製作を外注していたのですが、なかなか思うようなものができず、10年ほど前から家具工場を自社につくり、家具職人も雇って内製化しました。
建築と家具の取り合いはとても調整が難しいのですが、設計、家具製作、施工、監理も自分たちでやることで納まりの美しさが各段に上がったと思います。

Photo: KONARA HOUSE
小形:今は自社に大工もいることで設計と施工がチームとなって活動でき、難しいことも面白いことも一緒に検討し解決できるのが一番の強みだと思います。設計者と施工業者が分かれていると、どうしても難しい構造や納まりが実現されないときがあります。「自分たちがチームの当事者としていいものを目指す」というところがKONARA HOUSEの特徴です。
今後は自社で施工できる近隣のプロジェクト以外にも、設計デザインと工事監理のみを請け負い、広くKONARA HOUSEスタイルの住宅や家具を提供していきたいですね。

—– 最近手掛けられたプロジェクトについて教えて下さい
小形:軽井沢で手掛けたリノベーションが6月に完成しました。著名なインテリアデザイナーである植木莞爾さんがデザインした築38年ほどの別荘で、印象的な大開口はそのまま活かし、プラン変更や家具のデザインを行いました。KONARA HOUSEでは陰影が生まれるモールディングや格子をよく採用します。

Photo: KONARA HOUSE
小形:軽井沢は避暑地ということから冬場にあまり使われない想定で建てられた別荘も多いのですが、最近は年間を通して利用したいユーザーが増え、別荘リノベーションの依頼も増えています。デザインがよくても快適でなければ意味がありません。この事例もスキーで訪れたいという要望があったことから、シングルガラスの大開口はトリプルガラスの樹脂サッシ24台と入れ替え、熱交換換気システムを導入するなど、断熱性能を向上させています。樹脂サッシの重量への対策として構造の補強工事も行いました。

小形:この自邸だったショールームも最近手を加えています。もともと屋根はレッドシダーのシェイク葺きで、竣工から16年が経過した昨年、下屋根をレッドシダーから天然スレートへ葺き替えました。自然素材はだんだん朽ちていきますし、落ち葉などの堆積物を取り除くなどの手入れは必要ですが、自然に還るものを使うことは北米ではステータスでもあります。
同様に傷んだウッドデッキをレッドシダーからセラガンバツでつくり変えています。メンテナンスの必要性や経年変化をデメリットと捉えられることもありますが、手を加えながら住むことは安心、安全や豊かさにつながると思っています。
設計と施工を一貫して手掛け、引き渡し後もメンテナンスや家具の調整といった、ちょっとした困りごとなどでクライアントから連絡をもらえることは住宅設計者としてうれしいことで、やりがいがあります。

—– 一昨年から不動産部門も開設されていますね。事務所の今後の展開について教えてください
小形:ありがたいことに、このショールームを見た方が「このまま建ててほしい」と言ってくださることもあるのですが、敷地形状や気候の違いなど、このままどこの住宅地でも建てられるというわけではありません。
「土地も一緒に探してほしい」というニーズが以前からあったので、本当にこのままに近い形でも建てられるよう、一昨年、不動産業の免許を取得しました。これからは土地探しから設計、工事監理、家具まで一貫して提供できるようにしていく予定です。

Photo: KONARA HOUSE
小形:住宅の設計は「箱をつくる」ということに終始しがちですが、「設計を通じて豊かな暮らしをつくる」ということが大切だと思っています。デザインだけでなく、住む人が長く豊かで快適に過ごすための収納のしやすさ、清掃性のよさまで検討して提案する必要があります。そのためにはそこに置く家具を提供することで初めて、その住宅が完成すると考えています。
これからは現在のような自社施工の案件だけでなく、全国で設計を請け負うほか、私たちの強みであるデザイン性の高いオーダーキッチンや収納家具、書斎のデスクなど、充実した家具工場をフルに活かし、さまざまなオーダーに応えていきたいと思います。そしてプロダクトとしての家具製作、販売も展開していければと考えています。

インタビュー:2026年6月23日 KONARA HOUSE Showroom / Konara Factory 1 にて
Photograph: Shun Fukuda(特記以外)