2020年12月22日初掲
*2021年1月6日画像差替+外観を追加(Photographs : JUNYA.ISHIGAMI+ASSOCIATE)
1963年(昭和38)に今に続く神奈川県厚木市の地で、幾徳工業高等専門学校としてスタートした神奈川工科大学(Kanagawa Institute of Technology: KAIT)。1988(昭和63)4月より現在の名称に改称、現在に至ります。
2013年より継続している創立50周年事業の一環として、学内に建設された多目的広場〈KAIT広場〉がこのほど竣工を迎え、2020年12月15日に関係者が出席して竣工式も開催されました(同大学2020年12月15日ニュース)。
〈KAIT広場〉の設計を手がけたのは、2008年に同大学内にオープンしている〈KAIT工房〉と同じ、石上純也建築設計事務所(石上純也主宰)。構造設計を佐藤淳構造設計事務所(佐藤淳主宰)が手がけています[*]。
なお、2012年の同大学広報誌(No.168 注.容量41.5MB)で発表されている計画当初では、2014年に竣工する予定でしたが、着工が2019年に延び[*]、このたび竣工の日を迎えました。
*参照元:『日経xTECH』2019年4月25日記事
*【TECTURE MAG】では、同大学広報より提供を受けた竣工写真3枚とテキストを2020年12月22日に速報として掲載。その後、石上純也建築設計事務所より新たに提供された内観画像に差し替え、外観画像も追加しました(2021年1月6日)
床面はイタリア・シエナのカンポ広場のように湾曲した斜面で、上部には大きな鉄板の屋根面が掛かり、空間全体を覆い尽くしています。
石上純也氏コメント:
研究室やフリースペースなど、考えを巡らせることができる空間が大学にはいくつかあります。〈KAIT広場〉でめざしたのは、そこに居るだけでリラックスしてより深く自分の考えに潜り、空間がもたらす他にない感覚から新たな発想が刺激されるような施設です。全体では約4,100m²という巨大な構造物ですが、一方で天井高は約2.4mと一般的な住宅や校舎と変わらないスケールです。その天井には所々に四角い開口部を設けていて、晴れていれば時間によって光の濃淡が感じられ、雨の日にはシャワーのように雨水が差し込みます。屋外で空や風を感じながら物思いにふける経験は誰にでもあると思いますが、時に自然は人間に対してスケールが大きすぎる。そんな自然を人間のスケールでつくられた屋内空間に取り入れることで、自分のいる空間と自然が共存しているような新たな感覚を得ることができるのです。この感覚が学生の感性を刺激し、新たな発想のきっかけとなることを期待しています。
また地面がゆるやかな傾斜となっているのも特徴のひとつ。置かれたベンチに座るのではなく、好きな場所に腰掛けたり寝転んだり、ここではより思いのままに時間を過ごすことができます。もちろんイベントなどでも活用できるのですが、他にないこの空間をどのように使うのかという点でも、学生のクリエイティビティは多分に刺激されるでしょう。
建築物は建築家が当初想定している機能を超えて進化していくもの。KAIT工房も完成から10年以上が経ち、完成当初より良い建築物になってきたなと嬉しく感じています。KAIT広場もまた同様に、学生のクリエイティビティと共に進化するはず。学生の皆さんにはぜひこの瞬間、この環境だからできるものづくりと向き合ってもらいたい。KAIT広場で得られる新たな刺激を、そのひとつとして活用してもらいたいと思います。(KAIT広報誌 No.195より)
なお、現時点で大学構内への部外者の入構および撮影は不可となっています(その後、コロナ禍による影響低減後、日時予約制に変更あり)。〈KAIT広場〉の見学可能な日時に関しては、同大学公式ウェブサイトが発信するアナウンスを参照してください。
神奈川工科大学 イベント情報
https://www.kait.jp/events/
神奈川工科大学 公式Webサイト
https://www.kait.jp/