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〈三鷹天命反転住宅〉がクラウドファンディングを開始、補修工事費用への支援を求める

CULTURE2021.09.13

芸術家で建築家の荒川修作(1936-2010)と、パートナーのマドリン・ギンズ(1941-2014 / Madeline Gins)が設計し、2人でつくりあげたことで知られる集合住宅〈三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー〉(以下、三鷹天命反転住宅と略)が、そ歴史的価値の高い建造物として、次世代につなげるためのクラウドファンディングを、2021年9月13日(月)より開始しました。

〈三鷹天命反転住宅〉は、全9戸からなり、世界初の「死なないための住宅」として東京・三鷹市に建設されました。2005年の竣工以来、荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所が管理運営を担い、一部を賃貸住宅として、また一部を教育・文化プログラムを世界へ発信するスペースとして使用し、活動してきました。

〈三鷹天命反転住宅(イン メモリー オブ ヘレン・ケラー)〉

海外からの建物を見学に来た皆様(提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所 © 2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins

荒川修作と〈三鷹天命反転住宅〉

荒川修作とマドリン・ギンズは、1962年にニューヨークで出会って以来、協働でさまざまな表現活動を行ってきました。特に荒川は、現代美術の父と言われるマルセル・デュシャン(1887-1968)の知遇を得て、1970年代以降、国際的に活躍を続けます。そのテーマは一貫して、生命とは何か、そして身体が中心となる世界をどうしたら創れるだろうか、ということでした。

荒川修作+マドリン・ギンズ

荒川修作+マドリン・ギンズ (撮影:山本真人 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)

2人が芸術から建築へと表現活動を移行してからは、奈義町現代美術館の〈「太陽」の部屋〉(1994年 岡山県奈義町)、〈養老天命反転地〉(1995年 岐阜県養老町)など、人間のカラダが中心となる建築作品を発表しては、美術・建築業界のみならず、社会的な反響も呼びました。
アニメーション・映画監督の宮崎駿(1941-)と荒川との対談で、「養老天命反転地のような遊園地をつくりたい」というラヴ・コールを宮崎よりもらった荒川は「遊園地なんて絶望を作るだけだ…(中略)…オレはちゃんと生きられる街を作るんだ」と語り、宮崎を驚かせます(宮崎駿・養老孟司著『虫眼とアニ眼』徳間書店 2002年)。その念願の「家」として2005年に完成させたのが、この〈三鷹天命反転住宅〉です。

〈三鷹天命反転住宅(イン メモリー オブ ヘレン・ケラー)〉工事風景

建設途中の〈三鷹天命反転住宅〉2005年(撮影:中野正貴 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)

大手企業を動かした荒川の熱意

〈三鷹天命反転住宅〉の建設では、荒川はあくまでも住宅であることにこだわり、プロジェクトには日本で最高のチームが必要と考え、自ら大手設計事務所やゼネコンの代表者を訪ねて回りました。実施設計は安井建築設計事務所、施工は竹中工務店が実現したのは、荒川の熱意によるものです。

工事中の〈三鷹天命反転住宅(イン メモリー オブ ヘレン・ケラー)〉と荒川氏

建築現場での荒川修作 2005年(撮影:中野正貴 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)

住民のモデルは”奇跡のひと”

私たち1人ひとりが持つ身体は、1つとして同じものはありません。老若男女、どんな身体であっても、必ずその人ならではの使い方が見つかる、そんな住宅を荒川とギンズは目指しました。
住民のモデルとなったのは、ヘレン・ケラー(1880-1968)。ヘレン・ケラーならどんな空間に住みたいか?をテーマに、床に傾きや凸凹があったり、カラフルだったり、球体だったり、さまざまな部屋をデザイン。その1つひとつの要素に、荒川とギンズの長年にわたる研究の成果が込められています。
竣工翌年の2006年には、三鷹市の第三セクター企業であるまちづくり三鷹の協力を得て、入居者の募集を開始。賃貸住宅として使用している5戸は今日まで、常に入居者が居住して稼働している人気の物件です。

〈三鷹天命反転住宅(イン メモリー オブ ヘレン・ケラー)〉内観

〈三鷹天命反転住宅〉内観(撮影:中野正貴 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所 © 2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline

〈三鷹天命反転住宅(イン メモリー オブ ヘレン・ケラー)〉内観

〈三鷹天命反転住宅〉内観(撮影:中野正貴 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所 © 2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline

竣工15周年を迎える2020年に、荒川+ギンズの芸術作品でもある集合住宅の修復事業の模様を記録しつつ、建物を使ったさまざまなイベントも同時に開催。さらに、世界中にそのプロセスを発信するという、新しいかたちでの一般参加型修復プロジェクトという、大掛かりな修繕計画を進める予定でした。
ところが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で、予定していた全てのイベントが中止となり、さらには定期的に開催してきた見学会や、短期滞在プログラム・ショートステイの利用者も激減するなど、厳しい運営を強いられています。

修繕計画の見直しもままならず、修繕が必要な箇所のダメージだけが拡がっていった場合、〈三鷹天命反転住宅〉を国内外の人々に体験してもらう機会が失われる危険性があります。
このほど立ち上げられたクラウドファンディング(クラファン)は、〈三鷹天命反転住宅〉として初の試みとなります。建物の”天命”を”反転”させるべく、国内最大級のクラウドファンディング・プラットフォーム(運営:MotionGallery)にて、同年12月10日23:59まで実施されます。

〈三鷹天命反転住宅(イン メモリー オブ ヘレン・ケラー)〉内観

〈三鷹天命反転住宅〉内観(撮影:中野正貴 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所 © 2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline

〈三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー〉公式ウェブサイト
http://www.rdloftsmitaka.com/

クラファン目標金額は1,000万円

建物の安全面から今すぐ取り掛かるべき補修工事に必要な金額の1/2の金額とのこと。支援金額が1,000万円を上回った場合には、ストレッチゴールを新たに設ける予定ですが、最終的には建物全体の補修工事完了を目指します。なお、2020年7月時点での竹中工務店の見積りによれば、全体補修工事総額は5,500万円必要です。

元住人より応援メッセージ
建築とは生命にとって最良の環境であり、故に生命そのものの一部なのです。つまり、建築の修繕費のフリして、天命反転住宅の代謝システムの一部として、あなたの経済活動が取り込まれる、そんなクラウドファンディングにようこそ。
天命反転住宅には素晴らしい使用法が添付されています。このプロジェクトをサポートすれば、荒川さんはあなたの目をぐっと見つめてこう叫ぶことでしょう。「あなたはもう建築の一部なのだから、 新しい使用法をどんどんと生み出して構わない!(鈴木 健 / スマートニュース創業者・CEO)

クラウドファンディング「三鷹天命反転住宅の天命を反転させたい! 歴史的建造物として残すためにお力をお貸しください!!」概要

実施期間:2021年9月13日(月)〜12月10日(金)23:59まで
目標金額:1,000万円
各種リターン:3,000円〜1,000,000円(思いっきり応援コース、たてもの見学会招待券、テレワークプラン招待券、プライベート見学会、ショートステイ招待券など)

クラファン詳細
https://motion-gallery.net/projects/savetherdloftsmitaka/

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