2020年10月19日初掲、2022年1月14日情報更新
北海道・白老町に、レイクビューのリゾートホテル〈界 ポロト〉が2022年1月14日に開業します。
星野リゾートが展開するブランドの1つで、2020年10月13日発表の同社プレスリリースにて、ホテル正式名称、内外観のビジュアル、設計を中村拓志氏(NAP建築設計事務所 代表)が手掛けることが発表されている、今年注目のホテルです。
中村拓志氏(NAP建築設計事務所)
ホテルの立地は、世界的にも珍しい「モール温泉」が湧出する白老温泉(しらおいおんせん)。四季折々に色づく、白樺やカエデなどの天然林に囲まれ、野鳥なども生息するポロト湖畔に位置しています。
〈界 ポロト〉は、このポロト湖を敷地内に大胆に引き込んだ”湖上の建築”として設計されました。
ロビー外観(夕景)
ロビー内観
トラベルライブラリー(ラウンジチェアは中村氏がデザインし、天童木工とのコラボレーションで誕生したオリジナル)
とんがり屋根の「湯小屋」
ホテルの客室数は42室。全室レイクビューの室内には、白樺の丸太を配して雄大な北海道の自然の要素を空間に取り込み、施設のどこにいてもポロト湖が身近に感じられ、眼前に広がる湖との一体感を感じられる設計となっています。
客室 ご当地部屋「□の間」洋室(ベット側)
客室 ご当地部屋「□の間(しかくのま)」
ポロト湖に面した全客室は、アイヌ民族の暮らすチセ(アイヌ民族の家)から着想を得て設計されました。
全4タイプの客室すべてに、伝統的なチセの中心にあった四角い「炉」をイメージしたテーブルを設置。宿泊者が炉を囲み、団欒してほしいという思いが込められています。
アート作品「木彫りのオール」
アイヌ文様を施したクッション
室内には、アイヌ民族の生活から着想を得たアート作品を設え、壁紙やクッションにも、アイヌ文様が施されています。
客室「□の間」特別室 アート作品
客室 ご当地部屋「□の間」特別室
「□の間」ベットルーム(窓際のデスク前のチェアは中村氏がTIME&STYLEとデザインした〈Takenoko chair〉)
「□の間」テラス
同地の温泉は、天然植物由来の腐植質の有機物を含有し、独特な茶褐色の湯が特徴です(泉質はアルカリ性)。
この温泉を引き込んだ露天風呂は、モール温泉を心ゆくまで満喫し、「ユコロカムイ」(温泉の神)に感謝を捧げる神聖な空間としてデザインされています。
露天風呂
〈界 ポロト〉外観 とんがり屋根の建物が「湯小屋」
アイヌ文化伝承の地として維持されてきたポロトコタン[*1]から着想を得て、湖面には、アイヌ文化に受け継がれた丸太組みの構造・ケトゥンニ[*2]を基本構造に、中村氏が再解釈した湯小屋が設計されました。アイヌ民族の人々の暮らしや自然観、家族観から学び、着想を得た館内のデザインで、客室と同様に浴場でも、ポロト湖との一体感を感じながらの湯浴みが楽しめます。
*1.アイヌ民族の集落を指す
*2.伝統的なアイヌ文化の家屋において、屋根を支える構造の1つである、丸太組みの三脚構造
「△の湯(さんかくのゆ)」
〈界 ポロト〉には2つの大浴場があり、どちらも中村氏が「こだわり抜いた」空間となっています(インタビュー動画より)。
1つ目が開放的な「△湯(さんかくのゆ)」。施設のアイコンでもある三角形の「とんがり湯小屋」に設けられ、四季折々のポロト湖の景色を眺めながら浸かる露天風呂と、源泉かけ流しの「あつ湯」と、心身を鎮静させる「ぬる湯」の2つの湯船を備えた内風呂がしつらえられています。
「△の湯(さんかくのゆ)」内風呂
「〇湯(まるのゆ)」
趣の違なるもう1つの大浴場が「〇湯(まるのゆ)」です。湖上に佇む開放的な「△湯」に対し、「〇湯」は洞窟の中にいるかのような空間としてデザインされました。内風呂のドーム天井の頂部には外の自然とつながる丸い孔が空けられ、柔らかな自然光が差し込みます。
湯上がり処
半個室の食事処
季節の会席料理イメージ
特別会席「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」「牛肉の陶板焼き」
朝食イメージ
〈界ポロト〉の近隣には、アイヌ文化の復興・発展の拠点として、ナショナルセンター〈ウポポイ〉が2020年7月に開業しています(運営:公益財団法人アイヌ民族文化財団)。国立アイヌ民族博物館や 国立民族共生公園を中心とした施設で構成されます。
ウポポイ全景
〈界 ポロト〉を運営する星野リゾートでは、同施設および関連団体と連携をとりながら、アイヌ文化を尊重し、ゲストがアイヌ文化や異なる民族との共生を体感することのできる、こだわりのおもてなしを長期的に提供していく計画です。(en)
アイヌ民族の自然観に触れる「イケマと花香の魔除けづくり」など、ご当地楽(ごとうちがく)イメージ
設計者・中村拓志氏(NAP建築設計事務所)コメント:
私がポロト湖畔に立った時に、遠くには樽前山(たるまえさん)が見え、目の前には人工物のない美しい湖と天然林が広がっていました。
白老は、かつてアイヌ民族のコタンがあった場所で、現在、敷地の向かいにはウポポイが再現したチセの集落があります。そこで、客室は美しい湖を敷地内に引き込んで、その集落と白樺の森の中からポロト湖と樽前山を望む室内としました。
特にこだわったのは、ふたつの風呂小屋です。ひとつはアイヌ建築の特徴である「ケトゥンニ」構造。もうひとつは、地中に抱かれるかのような感覚に。自然の恵みである温泉に感謝しながら、この場所にしかできない体験とともに、自然とひとつになれる感覚を楽しんで欲しいです。
〈界 ポロト〉を設計した建築家・中村拓志氏インタビュー
ロビー外観(夜間)
施設名称:〈界 ポロト〉
所在地:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94(Google Map)
客室数:42室
付帯設備:ロビー、食事処、トラベルライブラリー、ショップ、湯上がり処、大浴場「△湯」(男女別、露天風呂各1、内風呂各2)、「〇湯」(男女別、内風呂各1)
宿泊料金:28,000円~(1泊 / 2名1室利用時1名あたり、サービス料・税込、夕朝食付)
建物規模:客室棟(地上4階)、温浴棟(地上1階)
敷地面積:9,339m²
建築面積:2,021m²
延床面積:4,951m²
設計:NAP建築設計事務所、前田建設工業
着工日:2020年5月15日
開業日:2022年1月14日
〈界 ポロト〉公式Webサイト
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
「界(かい)」概要
星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド。「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、季節の移ろいや和の趣、伝統を生かしながら現代のニーズに合わせたおもてなしを追求している。「界」ブランド全国マップ(2021年12月時点)
隈 研吾氏がデザインを手がけて2021年7月に大分・別府温泉に開業した〈界 別府〉まで18店舗を展開中。〈界 ポロト〉は19軒目の店舗で、同ブランドとしては北海道初進出(グループ全体では、占冠村[しむかっぷむら]にある〈リゾナーレトマム〉、旭川市の〈OMO7旭川〉、小樽市の〈OMO5小樽〉に続く4軒目の開業)。
星野リゾート〈界ポロト〉関連プレスリリース
【界 ポロト】星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」として、2022年1月開業予定(2020年10月13日)
https://www.hoshinoresorts.com/information/release/2020/10/108819.html
【界 ポロト】2022年1月14日に開業~コンセプトは「ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿」~(2021年09月08日)
https://www.hoshinoresorts.com/information/release/2021/09/160368.html