CULTURE

福岡〈ホテル イル・パラッツォ〉10/1グランドオープン

アルド・ロッシの名建築がリニューアル、内田デザイン研究所がディレクションとデザインを担当

CULTURE2023.08.24

福岡有数の現代建築〈HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)〉がリニューアル、10月1日にグランドオープンします。

同ホテルは、イタリアを代表する建築家のアルド・ロッシ(Aldo Rossi|1931-1997)と、日本を代表するインテリアデザイナーの1人・内田 繁(1943-2016)がタッグを組み[*1]、福岡市中心部(中洲屋台横丁の対岸)に1989年に開業したデザイナーズホテルの先駆けともいえる存在です(以下、敬称略)。

〈ホテル イル・パラッツォ〉は、アルド・ロッシが日本国内で初めて手がけた建築作品であり、建設プロジェクトには、内田のほか、エットーレ・ソットサス(Ettore Sottsass、1917-2007)、ガエターノ・ペッシェ(Gaetano Pesce|1939-)、田中一光(1930-2002)、倉俣史朗(1934-1991)、三橋いく代(1944-2017)といった当代のクリエイターが国内外から参画して話題となりました。

アルド・ロッシ(Aldo Rossi)
アルド・ロッシ(Aldo Rossi)プロフィール
1931年イタリア・ミラノ生まれ。建築と都市デザインの分野において大きな影響を与えたイタリアの建築家。代表作に〈モデナの墓地〉(イタリア)、〈カルロ・フェリーチェ劇場〉(イタリア)、〈ボネファンテン美術館〉(オランダ)などがある。
理論家としても知られ、ポストモダン時代の言論をリードした。1997年没。

〈ホテル イル・パラッツォ〉は、2019年よりワンファイブホテルズ[*2]が運営してきましたが、2022年1月に休館と同時に「Re-Design」プロジェクト[*3]を始動。総工費約18億円をかけ、大規模改修が行われました[*4]

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

リニューアル後の館内イメージ

福岡の歴史的建造物として再生

〈ホテル イル・パラッツォ〉は、同エリア(春吉地区)に対して地元の人々が長年抱いていた負のイメージを建築デザインの力で一変させたことでも高く評価されています[*5]
歴史的建造物としての価値を再認識し、建設当初の理念を承継した「Re-Designプロジェクト」によって、ホテル イル・パラッツォは再び新たな時代へと歩み出します。

ディレクションとデザインを内田デザイン研究所が担当

大規模改修にあたり、ディレクションとデザインを、内田氏の遺志を受け継ぐ内田デザイン研究所が再び担当しています。

「Re-Design」プロジェクトの主なポイント
・独自のカルチャーを発信してきた地下のディスコ、イベントホール空間を改装、130席の大型ラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」が出現
・アルド・ロッシが設計した外装は、オリジナルデザインを尊重して一部を復元
・かつて2階にあったホテルエントランスは1階に、レセプションは地下1階に移動、2階は客室フロアに全面改修
・エントランスは1989年のオリジナルの配色を踏襲し「結界」をイメージしたデザインに
・客室はスーペリアクイーンとデラックスキングの2タイプに加え、2階にバルコニー付き客室を新設
・1989年開業時のホテルロゴデザインが復活

大型ラウンジ「エル・ドラド」

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

新たにデザインされたテーブルやソファ、椅子130席を配置した仕切りのないラウンジ空間「EL DORADO(エル・ドラド)」イメージ

黄金郷を意味する「エル・ドラド」の名は、ラウンジ奥の中央にシンボリックに聳える黄金のファサードに由来します。アルド・ロッシがデザインした同名のバー〈エル・ドラド〉から内装の一部を移築したもので、その手前には、内田 繁が晩年に手掛けたインスタレーション作品〈Dancing Water(ダンシングウォーター)〉を配置。時を経て、両者が再びコラボレーションします。新生・ホテル イル・パラッツォの地下空間で奥深くへと誘われたゲストだけが味わえる特別な空間演出です。
大型ラウンジの家具は、ストライプや列柱、赤・青・緑の配色といった開業当時のオリジナルデザインを再構築しているとのこと。

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

地下空間を改装して誕生する大型ラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」イメージ

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

ラウンジ「EL DORADO」の壁沿いにはカーテン付きのボックス席を用意(イメージ)

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

内田繁デザインの世界観に囲まれるバーカウンター(イメージ)

客室もリニューアル

大規模改修にあたり、かつてはエントランスおよびレセプションのために用意された2階の空間が客室フロアに改装されました。
約4メートルの天井高を有する新たな客室空間には、バルコニーも設置されています。

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

トーンを落とした配色と家具でデザインされた客室(イメージ)

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

客室 バスルームの例(イメージ)

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

2階客室に新設されたバルコニー(イメージ)

加えて、3階から8階の客室も全面改装されました。
英国王室御用達の老舗ベッドブランド・スランバーランド社製の最上級クラスのダブルクッションのベッドを採用。ソファ・テーブルは、1989年のホテル開業当時のデザインから再構築。地下のラウンジ「エル・ドラド」のにぎわいに対し、客室は静かで穏やかなプライベート空間であることが意識されています。

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

全長11メートルのブッフェテーブル、壁にはアルド・ロッシのスケッチが掛けられる(イメージ)

内田 繁
内田 繁 プロフィール(1943–2016)
日本を代表するデザイナー。
代表作に、〈YOHJI YAMAMOTO SHOP〉、〈神戸ファッション美術館〉、茶室の連作〈受庵 想庵 行庵〉、浅草〈ザ・ゲートホテル雷門〉などがある。メトロポリタン美術館、М+美術館などに永久コレクション多数収蔵。

〈ホテル イル・パラッツォ〉に関する記述・発言
「目指したのは、時代とともに生き続ける地域に根づいた社会資産となるべきものをつくること。」
「私とアルド・ロッシとでお互いに決めたことは、建築の内部と外部は同一のイメージにしようといったことです。」

スタッフユニフォームは小野塚秋良が監修

10月1日のグランドオープンを控え、スタッフが着用するユニフォームも一新されました。

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)リニューアル

スタッフユニフォームは、スマートでクールなコックコート

ユニフォームの監修を手がけたのは、三宅一生(1938-2022)のもとでデザインを学び、1989年の〈ホテル イル・パラッツォ〉開業時のユニフォームを手掛けた、ZUCCa(ズッカ)の創始者である小野塚秋良(1950-)。
自身が立ち上げたブランド「HAKUI」からセレクトされたもので、ゲストへの視覚的な印象だけでなく、服装(ユニフォーム)が働くスタッフの意識やモチベーションにも作用するという考えから、スタッフ一人ひとりが再生イル・パラッツォを愛し、誇りをもって働きながら、継承し、育まれるカルチャーを担う一員となるようにという願いが込められているとのこと。

ホテルの予約は2023年7月より受付を開始しています。

復活した1989年開業時のロゴデザイン(左)

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)施設概要

所在地:福岡県福岡市中央区春吉3-13-1(Google Map
客室数:77室
付帯施設:レストラン&バー
ディレクション・リニューアルデザイン:内田デザイン研究所
運営ワンファイブホテルズ

ホテル公式ウェブサイト
https://ilpalazzo.jp/


*1.〈ホテル・イル・パラッツオ〉開業当時のプロジェクトチームは以下の通り
基本設計:アルド・ロッシ
実施設計:金子満・弾設計
内装デザイン:内田 繁
インテリアデザインなど参加クリエイター:エットーレ・ソットサス、ガエターノ・ペッシェ、倉俣史朗、三橋いく代、田中一光ほか


*2.ワンファイブホテルズ:不動産業を営むいちご株式会社(東京都千代田区内幸町)傘下、旧称博多ホテルズ、2023年5月に社名変更


*3.「Re-Design」プロジェクト
改装工事期間:2022年1月~2023年9月
総工費:約18億円


*4.リニューアルオープンに至る時系列
1989年 開業
2009年1月 リニューアル工事のため全館休業、同年7月再オープン
2019年5月 博多ホテルズ(現・ワンファイブホテルズ)が前運営者より事業譲渡、ホテルの運営を開始
2022年1月 2度目のリニューアル工事のため休館、ホテル再生のための「Re-Design」プロジェクト始動
2023年7月 同年10月のグランドオープンを発表
2023年10月1日 リニューアルオープン予定


*5.主な受賞:福岡市都市景観賞(1990)、アメリカ建築家協会(AIA)名誉賞(1991)を受賞(AIA賞は同国外の建築物として初の受賞)。なお、ロッシはホテル開業翌年の1990年にプリツカー賞を受賞している。

 

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