上のモノクロ写真:アルヴァ・アアルト ©Aalto Family. ©FI 2020 – Euphoria Film.
アルヴァ・アアルト(1898-1976)のドキュメンタリーが、東京各所、関東近郊、愛知、京都、大阪、神戸、福岡などの映画館にて、10月13日に封切られました。
本作は、アルヴァの人生と彼の作品を巡る内容であるとともに、実は決して”筆マメ”な性格ではなかったというアルヴァが、彼の最初の妻であり、54歳で没するまで優れた建築家・デザイナーとしてアルヴァのパートナーを務めた女性、アイノ(1894-1949)との間で交わされた「手紙」にスポットをあてています。約25年にわたり、互いに得難い伴侶として連れ添った2人の”愛の物語”を、現在も日本をはじめとする世界各地で愛されていいるプロダクト誕生の歴史とともに描き出しているのが特徴です。
監督は、フィンランドのヘルシンキを拠点に、映画監督・プロデューサーとして活躍しているヴィルピ・スータリ(1967)。本作は、フィンランドのアカデミー賞と称される「ユッシ賞」にて、音楽賞と編集賞を獲得しています。
ディレクターズ・コメント
私は、長い間アルヴァ・アアルトの映画を撮りたいと考えていました。子どもの頃、足繁く通ったロヴァニエミの図書館は、私の午後の隠れ家でした。アアルトが設計したその図書館に一歩足を踏み入れると、たとえそれが氷点下30度の凍えるような寒い日でも、建物の持つ温かさに受け入れられている気がしたのです。
図書館に並ぶ本以上に、私はその建物自体の持つ雰囲気の虜になっていたのだと思います。黄銅でできた取っ手を握り、温かな室内に誘われていく、その感覚を今でも思い出します。アアルトがデザインした革製の椅子とランプは、とても贅沢に感じられました。私の家はとても質素でしたが、自分が裕福になった気さえしたものです。
図書館は、公共の場です。私は幼い頃から無意識のうちにこの控えめな美しさに
触れていたのです。アアルトの生み出すものは、どこか官能的で感情に訴えるものであり、実際アアルトは“共感と官能を呼び覚ます建築家”と評されることがあります。
彼の作り上げた空間は、知らず知らずの間に身体に刻まれている。それこそが、私がこの映画で描きたいと考えたことです。
同時に、アルヴァ・アアルトとは何者なのか。人生をともにした二人の妻はどのような人物であったのかを探求したいとも思いました。どのように協力し合い、いかにして国際的なモダニズムの流れを牽引していったのか。心に秘められた情熱や悲しみとはどのようなものだったのか。そうした内なる感情はきっと、彼らが生み出す建築やデザインに少なからず影響を与えたに違いないと思うからです。
彼らの人生を辿る過程で、私は建築とモダニズムについて多くを学びました。
しかし何よりも私は、革新的な発想を持った稀有な人々に出会った。そんな気がしてなりませんでした。アアルトの人間的な慎ましさは、現代にこそ必要なものではないか。そんな思いを抱くようにもなりました。
幸運にも私は、貴重な家族写真、アルバム、過去のインタビュー、そしてかつての手紙を入手することができました。アアルトは、国外での活躍が目覚しかったこともあり、本作は7カ国で撮影され、7つの言語が使用されています。
映画を制作するにあたり、徹底的にリサーチを行いましたが、知識偏重になることは避けなければいけないことだと思いました。本作の中心にいるのは、あくまで「人間」です。アルヴァと最初の妻アイノ、そして二人目の妻エリッサ。素晴らしいカメラワークと練られた音響効果により、アアルトの人生がスクリーンに息を吹き返すことを願っています。(本作監督 ヴィルピ・スータリ)
原題:AALTO
監督:ヴィルピ・スータリ
出演:アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト ほか
日本語字幕:横井和子
字幕監修:宇井久仁子
制作国:フィンランド
公開年:2020年
上映時間:103分
内容:カラー・モノクロ / スコープサイズ / ステレオ / ©Aalto Family. ©FI 2020 – Euphoria Film.
配給:ドマ
宣伝:VALERIA
後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会
協力:アルテック、イッタラ
公開日:2023年10月13日
上映館:ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺、
シネ・リーブル梅田、伏見ミリオン座ほか・詳細は公式ウェブサイト参照
#映画『アアルト』本予告(2023/08/22)
映画公式ウェブサイト
aaltofilm.com