施設DATA
- 設計
佐藤研吾建築設計事務所- 主用途
放送用スタジオ- エリア
セービングゾーン
〈サテライトスタジオ(西)〉の見どころポイント!
移すことから建築を考える仮設建築
〈サテライトスタジオ(西)〉では、建築の各部材はすべて移動・再構成が可能な設計とされ、基礎には丸太が用いられました。部材は福島の山から伐り出され加工、大阪まで設計者と施工者が一団となって運搬。会期後はまた福島に持ち帰られ、別のかたちで再び立ち上がる予定です。

Photo: 大竹央祐
眩暈がするように、儚くて朧げな世界の中であっても、確かなモノを携えながら、漂い抜けていきたいと思う。
今、この世界において全体を決め切ってしまうことはとても難しいと感じている。一方で、建築は常に何かを決めていかなければいけない仕事だけれども、どうにか未来の選択肢を残しつつ、展開を探り続けたいとも考える。そして、定まらない未来に向けて、目の前の手の届く所から着実に進んでいくことが、とても倫理的に感じられる。

Photo: 大竹央祐

Photo: 大竹央祐

Photo: 大竹央祐

Photo: 大竹央祐
万博では蜃気楼のようにテンポラリーな仮設性から考える。会場全体が埋立地という、大地自体もまた仮設的で曖昧な場所において、基礎を含めた建築の各部材を移動・移築可能な形で計画する。難破船から必死に物資を運び出すロビンソンクルーソーのイカダのように、建築の基礎は木の丸太でつくる。

Photo: 大竹央祐

Photo: 大竹央祐

Photo: 大竹央祐
東北の福島県で木を切って部材をつくり、施工者設計者が共に一旅団となって大阪の会場へと運び込む。会期後はまた福島に持って帰り、どこかに移築する予定である。そして移設後の姿は当然変わるだろう。移動の経験と輪郭が、これから先を見据えるための確かな感触となるだろうと考え、準備を進めている。

Photo: 佐藤研吾建築設計事務所

Photo: 佐藤研吾建築設計事務所

計画初期のスケッチ。Image: 佐藤研吾建築設計事務所
何かと何かが隣り合うためのその隙間について、いま関心がある。見えるモノと見えないモノ、未来と過去、地上と地下、作ると考える、煩悩と理想、現実と虚構、部分と全体、町と村。福島と神奈川、そしてときどきインドを往還しながら制作に取り組むのは、自分たちの生活や思考の中にもそんな隙間をあけておきたいからだ。設計を生業としつつ、結局は施工に手を出してしまうのも、凝り固まった自分たち自身の制作そのものにメスを入れて何かをこじ開けていきたいと思うからである。

会期後、移設された建築の計画模型。Image: 佐藤研吾建築設計事務所

Image: 佐藤研吾建築設計事務所
建築DATA
構造:木造
階数:地上1階
最高高さ:6,700mm
軒高:5,700mm
敷地面積:452.04m²
建築面積:149.98m²
延床面積:144.08m²設計:佐藤研吾建築設計事務所/一般社団法人コロガロウ
担当:佐藤研吾
構造設計:円酒構造設計
設備設計:テーテンス事務所
施工:おおほり建設
装飾金物・壁面装飾:野ざらし
テキスト提供:佐藤研吾建築設計事務所
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