東京・代官山(猿楽町)に、ディオール(Dior)の日本における新たな拠点〈ディオール バンブー パビリオン〉が2月12日にオープンしました。ディオールの最新のコンセプトストアです。

©︎ DAICI ANO
『TECTURE MAG』はオープニングプレビューを取材。〈ディオール バンブー パビリオン〉を構成するクリエイションの数々を写真を中心にレポートします。

Photo: TEAM TECTURE MAG
上の1枚を除く画像提供:ディオール(内外観 Photo: DAICI ANO、参加作家ポートレート Photo: Yoko Kusano)
・パリ本店の外観を竹をモチーフにして再構築
・クリエイター作品が散りばめられたコンセプトストア
・西畠清順+そら植物園 / 小嶋商店 / 長田製紙所 / TAKT PROJECT / 光井 花 / we+(ウィープラス)/ 岩元航大 / 茶室 / 太田 翔 / CHIKAKEN / 柴田あゆみ / 東 信
・ミシュラン三ツ星シェフ、アンヌ=ソフィー・ピックが手掛けるカフェ ディオール

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立地は代官山の閑静な住宅街。工事幌が外されて以降、金色(ゴールド)に輝く外観がSNSを中心に拡散され、話題となっていました。
ヨーロッパを代表するメゾンとして1953年に初めて日本に本格進出したディオール。その最新ブティックである〈ディオール バンブー パビリオン〉は、日本との絆を継承し、日本の文化と匠の技の融合を表現した「夢の王国」と位置付けられています。
内外の空間のセノグラフィー(空間デザイン)は、ディオールのコンセプトストアとして本社が手がけたもので、建物の外と内のいたるところで日本を代表するクリエイターの作品との競演が見られるのが特色です。
ファサードは日本の竹林に着想を得た造形で、素材は金属。ディオールのパリの本店〈30モンテーニュ〉の外観を金色(ゴールド)のバンブーで再解釈したセノグラフィーは、夜間にはライトアップされ、その輝きを増します。

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池にはガラス造形の鯉が配されている ©︎ DAICI ANO
訪れた人々を迎える建物の外では、そら植物園を率いる西畠清順氏が手がけた日本庭園が、そしてバンブーを模したファサードの内側に入って、いよいよストアに入るアプローチの左右には、ディオールにとって重要なメタファーである「ガーデン」が造園されています。
内部のセノグラフィーは、2022年12月から翌年5月にかけて東京都現代美術館で開催され大きな話題を集めた「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展でも随所にみられた、さまざまなクリエイターとの共創によって生まれた体験が今なお鮮やかに蘇ってくるものとなっています(以下、参加作家とその作品を中心に紹介。作家名は一部で敬称略、プロフィールはディオール提供テキストをもとに作成)。
西畠清順(にしはた せいじゅん)氏 ©︎ Yoko Kusano
自然の多様な美しさに着想を得た西畠清順のランドスケープデザインは、〈ディオール バンブー パビリオン〉に静謐な息吹をもたらします。伝統と革新を融合させたポエティックな庭園は、希少な植物で構成されており、植物の驚くべき豊かさを再発見しながら、自分自身と再びつながることができるように設計されています。日本の著名な「プラントハンター」である西畠清順は、最もユニークな植物標本を探すべく世界各地を旅しています。現在は大阪で「そら植物園」を運営し、街全体に緑をもたらすための活動をしています。

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〈ディオール バンブー パビリオン〉は1フロアで、中央にスペースを大きくとり、そこから放射線状に、5つのテーマごとに分かれた部屋(ルーム)と、オープンテラスに面したカフェが配置されています。曲線の壁をかたちづくっている手漉き和紙など、日本ならではの素材と造形が随所に見られます。
フロアを華やかに彩るのは、「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展でもアーティスティクな球形提灯を制作した、寛政元年創業の京提灯の老舗・小嶋商店による作品です。

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京提灯のアートピースのほかにも、和紙職人の手技による見事な仕事を店内の随所で見ることができます。越前和紙の長田製紙所によるものです。

入店してすぐ右側の部屋「LADY DIOR」 ©︎ DAICI ANO

天井見上げ、和紙でつくられたメゾンのアイコンの数々 ©︎ DAICI ANO

左右と中央の什器の側面には、それぞれあらわれた手漉きの表情が異なる和紙が用いられている ©︎ DAICI ANO

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「タイムレス ルーム」 ©︎ DAICI ANO
入ってすぐ左側にある部屋「タイムレス ルーム」の壁の仕上げは白い和紙で、立体的な絵柄も同じ素材で描かれています。この部屋には、吉泉 聡氏が率いるTAKT PROJECTによるアートピースのようなファニチャー作品と、韓国人作家として唯一、本プロジェクトに参加しているイ・カンホ(Kwangho Lee)氏の作品を見ることができます。そして奥のフィッテングルームの壁の刺繍は、光井 花氏によるデザインです。

ディオールのアイコンのひとつ「カナージュ」の格子柄を透明樹脂に封じ込めた、TAKT PROJECTによるファニチャー作品 ©︎ DAICI ANO
TAKT PROJECT / 吉泉 聡氏 ©︎ Yoko Kusano
TAKT PROJECTは、研究と刺激的なコラボレーションを原動力に、独自のコンセプトを構想するクリエイティブスタジオです。職人技と想像力の境界を押し広げ、デザインを思慮深く、直感的で、繊細なツールとして使用することで革新を目指しています。
TAKT PROJECTは〈ディオール バンブー パビリオン〉のために「カナージュ」の本質的なシルエットを再解釈しました。独自の製法で手織りされたガラスの「カナージュ」が、樹脂に封入されて、透明なファニチャーへと変化する。メゾンが大切にしてきたアイコニックなモチーフは、伝統にコンテンポラリーな精神を吹き込みます。真の芸術作品とも言えるこれらのクリエイションは、日本人デザイナーの独創性を際立たせます。

ガラス繊維を手織りした造形は、東京ミッドタウンで昨秋開催された「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE 2025」出展作品〈OOPARTS 場違いな工芸品〉にその萌芽がみられた ©︎ DAICI ANO

イ・カンホ氏によるソファ作品 参加作家では唯一の韓国人アーティストである氏は、2022年にソウルにオープンした〈ディオール ソンス(DIOR SEONGSU)〉の参加作家のひとり

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壁に描かれた光景はすべて和紙によるもの ©︎ DAICI ANO

フィッティングルーム ©︎ DAICI ANO

壁を埋め尽くす「トワル ドゥ ジュイ」は、フランスの伝統紋様をディオールが現代的に解釈して展開しているもので、本作はテキスタイルデザイナーの光井 花氏が手がけた(一部は同氏による手縫い仕上げ)
光井 花氏 ©︎ Yoko Kusano
アメリカで生まれた光井 花は、多摩美術大学テキスタイルデザイン学科卒業後英国に拠点を移します。英国の大学院Royal College of Art テキスタイル科修了後、自身のデザインスタジオ「HANA LAB」を設立。アートとテキスタイルの多様な接点を探求し、日本の伝統的なテキスタイルを現代的な視点で再解釈し、新たな用途を提案する魅惑的なシリーズを生み出しています。手作業によりファイナルタッチを加えられた刺繍と、伝統的な畳の素材である「い草」を使用した壁面作品より浮かび上がる有機的なモチーフは、ディオールのアイコニックなコード「トワル ド ジュイ」を思わせます。伝統への独創的なオマージュである魅惑的なスケッチは、最先端技術によって再解釈された卓越したサヴォワールフェールの証です。

光井 花氏が手がけた、次に紹介する「ROTATION」がテーマの部屋のフィッティングルーム。スツールはwe+が開発したアップサイクルマテリアルで造形された〈Refoam〉 ©︎ DAICI ANO

セントラルスペースから「ROTATION(循環)」がテーマの部屋の眺め ©︎ DAICI ANO
we+ / 安藤北斗(右)と林 登志也氏 ©︎ Yoko Kusano
2013年に設立されたwe+は、実験的なアプローチを通じて新たな価値観と視点をかたちにします。デザインは、私たちの自然環境と社会環境の間に複数のつながりを紡ぐ手段なのです。
〈ディオール バンブー パビリオン〉のためにwe+がデザインしたファニチャーは、儚さと時間性の中に崇高さを繊細に伝えます。再利用と循環の精神により、これらの作品は往々にして見過ごされる要素を浮き彫りにし、真の芸術作品へと昇華させています。東京の魚市場やスーパーマーケットから回収した発泡スチロールを再利用し制作されたクリエイションなど、リサイクルされた素材は虹色に輝く青の造形物へと生まれ変わり、このユニークなブティックの様々な空間に点在します。デイベッドには、樹脂に微細藻類を配合した革新的な新素材が使用されました。そして鋳物の鋳造工程で偶然生まれる形状に着想を得た金属製の花瓶も担当しました。

窓の外に見える球形は茶室(後述) ©︎ DAICI ANO

we+による微細藻類を原材料とするオリジナルマテリアルでつくられたファニチャーシリーズ〈SO-Colored〉©︎ DAICI ANO

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岩元航大氏がディオール バンブー パビリオン 裏庭にしつらえられた茶室のために制作した茶器(アートピース)©︎ DAICI ANO

茶室 内部 ©︎ DAICI ANO

茶室 内部 ©︎ DAICI ANO

茶室へのアプローチ ©︎ DAICI ANO

丸テーブルと窓際の椅子はプロダクトデザイナーの太田 翔氏が手がけたもの ©︎ DAICI ANO
レストルームは、三城賢士と池田親生の両氏を中心に、竹に穴をあけて明かりを灯す〈竹あかり〉の演出・制作・プロデュースを行っている集団・CHIKAKENが手がけています。

レストルーム ©︎ DAICI ANO

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ディオール バンブー パビリオンのカフェでは、「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展でも、ディオールの世界観を表現した圧巻のインスタレーションを展開した、切り絵アーティストの柴田あゆみ氏の作品を、再び目にすることができます。

柴田あゆみ作品は、前述「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展出展時のものを、カフェ空間にあわせて再構築している ©︎ DAICI ANO
柴田あゆみ氏 ©︎ Yoko Kusano
森羅万象に宿る“いのちのひかり”を表した作品を主に紙を用いて制作している柴田あゆみ氏は横浜生まれ、ニューヨークのナショナル アカデミー スクール オブ ファインアーツを卒業後、日本の伝統的な切り絵の技法を習得し、その芸術を通して再構築した作品を制作しています。
「カフェ ディオール by アンヌ=ソフィ―・ピック バンブーパビリオン」を新たに彩る、柴田あゆみの夢のようなインスタレーションは、ひかりの庭園を想起させます。天井から降り注ぐ紙の花は、クリスチャン・ディオールが幼少期を過ごしたノルマンディーのバラの庭園に敬意を表し、夢のような庭園に命を吹き込みます。

大きなガラスケースの作品も東 信氏によるもの ©︎ DAICI ANO
東 信(あずま まこと)氏 ©︎ Yoko Kusano
東 信は、ディオールとの長年にわたるコラボレーションを通じて、自然とオートクチュールへの賛歌となるユニークな作品を創り出し、パリの本店〈30モンテーニュ〉をはじめとした、メゾンの最も象徴的なブティックに展示される、唯一無二の作品を生み出してきました
創設者であり、クチュリエでもあるクリスチャン・ディオールの花々への情熱に捧げる新たなオマージュとして、東信は花をカプセル化し、その本質を捉え、その美しさを永遠のものとする植物標本を創出しました。[カフェ ディオール by アンヌ=ソフィ—・ピック バンブーパビリオン]では、彼の代表作〈ブロックフラワー〉が壁面を昇華させ、印象的な作品〈パルダリウム〉が季節と共に変化し、植物の移ろいゆく輝きを表現しています。賑やかな東京の中心に緑のオアシスのように構想された「インナー ガーデン」は、クリスチャン・ディオールが幼少期を過ごしたグランヴィルでの夢のようなひと時を再解釈しています。最後のサプライズとして、東信はメゾンのアイコンのひとつである、「レディ ディオール」を花束へと変容させ、色彩豊かな花々で満たします。

©︎ DAICI ANO

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〈ディオール バンブー パビリオン〉およびカフェの利用は、ディオール公式LINEなどからの予約が推奨されています。

開業前、降雪日に撮影された〈ディオール バンブー パビリオン〉 ©︎ DAICI ANO
所在地:東京都渋谷区猿楽町8-1(Google Map)
敷地面積:約1,800m²
営業時間:11:00-19:00
電話番号:03-6455-2286