CULTURE

隈研吾設計〈魔法の文学館〉内覧会レポート

ランドスケープと一体化したフラワールーフの建物、童話作家・角野栄子氏の世界観を伝える

CULTURE2023.11.05

東京・南葛西に〈魔法の文学館〉が11月3日に開館しました。
正式名称は江戸川区角野栄子児童文学館。同区にゆかりのある童話作家の角野栄子氏の作品と功績を広く紹介するとともに、世界の児童書や絵本もあわせて配架されており、未来を担う子どもたちが児童文学に親しみ、豊かな想像力を育む場となることを目指した公共施設です。

『TECTURE MAG』では、開館に先立ち行われたメディア内覧会を取材しました(特記なき内外観画像は全て編集チームにて撮影)。

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉外観(日没前45分頃の撮影)

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉遠景、手前は「なぎさポニーランド」

公園小高い丘の中腹に建てられた同館は、2020年10月に江戸川区が発表した計画概要のとおり、旧江戸川沿いの区立なぎさ公園の自然と一体化したランドスケープの中にあります。

隈研吾設計による〈(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館〉の施設概要を江戸川区が発表

設計者 コメント

なぎさ公園の丘の上に、「魔女の宅急便」の作者、角野栄子さんの作品の世界観を体験でき、児童文学の素晴らしさを体感できるミュージアムをデザインした。
角野栄子さんの世界に登場する「おうち」のような小さな単位で建築を考えた。
なだらかな丘の傾斜に沿わせて小さな箱を並べ、花のような軽やかなひろがりを感じさせる屋根を架けた。
豊かな公園の自然を感じながら、五感で角野栄子さんの世界観に触れることができる、開かれた環境を江戸川のほとりの丘の上に創造した。(隈 研吾)

 

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉外観 画像提供:魔法の文学館

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉外観 画像提供:魔法の文学館

建物の設計は建築家の隈 研吾氏が担当。「フラワールーフ」と名付けられた特徴的な屋根をもち、上空から見ると花が開いたようなかたちをしています。子どもたちの想像力と創造力がふくらむようなデザインとし、この地を訪れる人々と周辺の緑、周辺で展開するさまざまな活動をつなぐことが意識されています。

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

建物規模は地上3階建て、カフェは3階にあり、「展望の丘」に面してテラス席が用意されている

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉エントランス付近 / ガラスファサード越しにグッズなどを販売するショップが見える

真っ白な建物の中に足を踏み入れると、一転して、同館コンセプトカラーの「いちご色」に包まれます。

階段下の「黒猫シアター」では観客参加型の映像コンテンツも上映するなど、館内は角野栄子作品の世界観に満ち溢れています。

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

館内フロアマップ

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)〈魔法の文学館〉内観 画像提供:魔法の文学館

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

1階 大階段下に配置された「黒猫シアター」 画像提供:魔法の文学館

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉内観 1階「コリコの街」 画像提供:魔法の文学館

来場者を最初に迎える1階では、1989年にスタジオジブリ作品としてアニメーション映画化もされている『魔女の宅急便』の舞台「コリコの町」が大きく展開されています。そのほかにも、角野氏の代表作のキャラクターたちが登場するプロジェクションマッピングも投影されます。

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

1階「コリコの街」展示空間見上げ / 映写機は館内のあちらこちらに見られる「おうち型」のボックスに格納されている

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

大階段の向こう側に「コリコの街の本棚」が並ぶ

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

1階「コリコの街の本棚」

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

1階「コリコの街の本棚」 画像提供:魔法の文学館

館内の展示設計は乃村工藝社が担当。内装デザインのアートディレクションを、角野氏の娘であるくぼしま りお氏さんが手がけました。

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

大階段 踊り場

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

大階段を昇った2階からの見下ろし

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

2階フロア / 左側に「栄子さんのアトリエ」と「ギャラリー」とトイレ、右側に「ライブラリー」がある

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

2階 フロアマップ

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

2階「ライブラリー」

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

2階「ライブラリー」

「おうち型」の本棚に囲まれたライブラリーには、角野氏の著作はもちろんのこと、世界の児童書や絵本が配架されています。これらは角野氏が自ら選書したもので、子どもたちの自主性を活かすべく、敢えて細かく分類されていないとのこと。

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

2階「栄子さんのアトリエ」 は、角野栄子氏の仕事場を模した展示。デスクの上には、直筆原稿や絵具などの文房具が置かれ、棚には角野氏の愛読書や旅先で集めた美しい小物が並べられている

2階「ギャラリー」では、”魔女の家”をテーマにした企画展を開催中(2024年4月8日まで)

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

2階「ギャラリー」展示風景 / 角野氏が旅先などで買い求めた”魔女人形”の展示

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

角野氏の旅に同行した、みやこうせい氏の写真展示

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

館内 消火器のボックスも”おうち型”で統一

 

アートディレクター プロフィール

くぼしま りお
1966年東京生まれ。文化学院美術科卒業。
児童文学作家としての著書に『ブンダバー』シリーズ(ポプラ社)、『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』(KADOKAWA)などがある。江戸川区角野栄子児童文学館ではアートディレクターとして館内の「コリコの町」などの内装デザインを担当。

 

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

角野栄子作品の世界観をイメージしたメニューを提供する3階「カフェ・キキ」 画像提供:魔法の文学館

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

3階「カフェ・キキ」カウンター意匠

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

3階「カフェ・キキ」カウンター席側

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

3階 カフェ前からの大階段方向 見下ろし

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

3階から2階フロア見下ろし

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

3階から2階および1階エントランス方向のフロア見下ろし

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

1階 大階段下 / 左手:受付カウンターとショップ

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

エントランス前・屋外に用意された手洗い場

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

角野栄子(かどの えいこ)プロフィール

童話作家。1935年東京生まれ。3歳から23歳まで江戸川区北小岩で過ごす。出版社勤務を経て24歳からブラジルに2年間滞在。その体験を元に書いた『ルイジンニョ少年ブラジルをたずねて』で1970年作家デビュー。代表作の『魔女の宅急便』はスタジオジブリが制作して1989年にアニメーション映画化された。
2018年国際アンデルセン賞作家賞を受賞。2019年江戸川区区民栄誉賞を受賞。

Kadono Eiko Office(角野栄子オフィス)Website
https://kiki-jiji.com/

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

〈魔法の文学館〉夜間外観(日没40分後頃)

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

メディア各社の撮影が続く館内からの「いちご色」の光が漏れている

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)

施設概要

愛称:魔法の文学館
正式名称:江戸川区角野栄子児童文学館
所在地:東京都江戸川区南葛西 7-3-1 なぎさ公園内(Google Map
構造種別:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
階数:地上3階(1階:読書・展示エリア、シアター / 2階:展示室、読書テラス / 3階:カフェ)
敷地面積:約63,028m²
建築面積:1,190.80m²
延床面積:1,613.95m²
統括・建築設計:隈研吾建築都市設計事務所
造園設計:クロス・ポイント
展示設計:乃村工藝社
「コリコの町」ほかアートディレクション:くぼしま りお
開館日:2023年11月3日

開館時間:9:30-17:30(最終入館時間16:30)
休館日:火曜、年末年始(12月29日〜1月3日)
当日入館料(税込):一般 (15歳以上)700円、こども(4歳〜中学生) 300円、3歳以下無料
※江戸川区在住・在勤・在学者は割引設定あり(入館時に左記を証明できるものの提示要)
※障がい者は半額、介助者は1人まで無料(入館時に障がい者手帳などの提示要)
入館方法:原則として日時指定での予約制

魔法の文学館ウェブサイト
https://kikismuseum.jp/

江戸川区 情報開示
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e081/kuseijoho/keikaku/bungakukan/index.html

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江戸川区角野栄子児童文学館 計画概要

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