故・坂本龍一の音楽資産を活用する拠点[Sakamoto Ryuichi Lab at KUA]を京都芸術大学がキャンパス内の瓜生山荘に開設、スタジオ設計をAS / 青木淳と品川雅俊が担当 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
故・坂本龍一の音楽資産を活用する拠点[Sakamoto Ryuichi Lab at KUA]を京都芸術大学がキャンパス内の瓜生山荘に開設、スタジオ設計をAS / 青木淳と品川雅俊が担当

故・坂本龍一の音楽資産を活用する拠点[Sakamoto Ryuichi Lab at KUA]を京都芸術大学がキャンパス内の瓜生山荘に開設、スタジオ設計をAS / 青木淳と品川雅俊が担当

CULTURE

2026年9月3日 00:01初掲、9月4日記者発表内容を追補

2027年に開学50周年を迎える[*1]京都芸術大学(KUA、京都市左京区/学長:佐藤 卓)は、9月2日に大阪市内にて記者発表[*2]を行い、「世界中の創造力を解放する。」という新たなミッションと、大学の新愛称およびCI(コーポレート・アイデンティティ)デザインなどを発表しました。

京都芸術大学(KUA)新ロゴマークとミッション

新ロゴマークとミッション

新ロゴマーク デザイン概要

「KUA(読み:クア)」の3文字は、京都芸術大学(KYOTO UNIVERSITY OF THE ARTS)および、同学を運営する瓜生山学園(KYOTO URYUYAMA ACADEMY)の英語表記に由来します。国内外で親しまれる呼称を確立することで、大学と社会との接点を増やし、その背景にあるミッションや教育の取り組みへの理解を深めていく狙いです。

デザインを手掛けたのは、グラフィックデザイナーで、2025年4月より同学の学長を務める佐藤 卓氏。「一滴の墨汁が生んだ自然の形を生かした従来のシンボルマーク」を継承しつつ、新たに追加された「KUA」の「U」に高台(こうだい)を付けることで、「学びの器」としての大学を表現しています(瓜生山学園内の設置校6校のロゴマークのデザインもあわせて統一されている)。

学長・佐藤 卓氏コメント

「創造力とは特別な才能ではなく、誰しもが内に秘めているものです。大学とは、その答えを一方的に与える場ではなく、多様な人々の可能性を引き出し、出会わせるための『器』であると考えています。新ロゴの『U』に付けた高台にもその思いを込めました。この『KUA』という器から、1人ひとりの創造力を社会や世界へ解放し、次なる未来を共に切り拓いてまいります。

京都芸術大学(KUA)新ロゴマーク


故・坂本龍一氏音楽資産の活用拠点となるスタジオをASが設計

KUAの発表によれば、開学50周年へ向けたシンボルプロジェクトとして、音楽家の坂本龍一氏(1952-2023)が遺した作品や機材などの音楽資産を活用する拠点・Sakamoto Ryuichi Lab at KUA – A laboratory for experimentation across sound, art, technology, environment, and society.(以下、Sakamoto Ryuichi Lab at KUAと略称)が、キャンパス内の既存施設の1つ、瓜生山荘に開設されます。
現在は他所にて保管されている坂本氏の貴重な音楽資産を「瓜生山荘」へと移し、次世代を担う創作者たちの学びと実験の場を創出することを目指しています。

スタジオの設計は、建築家の青木 淳氏と品川雅俊氏によるAS[*3]が担当。さらにリードアーティストには、映画『国宝』で第49回日本アカデミー賞最優秀音楽賞および主題歌賞を受賞した音楽家の原 摩利彦氏を迎えるとのこと。

プロジェクトメンバー

「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」プロジェクト メンバー(左から、青木 淳、品川雅俊、原 摩利彦の3氏)

 

坂本氏が生前、京都・九条山に生活と創作の拠点を構えようとしていた構想(後述)にも関わっていた青木氏。京都を一望できるその土地を坂本氏が気に入っていた理由について、青木氏は、巨大に膨れ上がった都市ではない京都の歴史の深さや”濃密さ”に惹かれていたのではないかと振り返りました。単なる別荘としてではなく、生活の拠点と創作の場を一体化させようとしていたその構想は実現には至りませんでしたが、その思想は今回の瓜生山荘へと受け継がれています。
建築のあり方についても、青木氏は「建築とは、完成しないものだと思っています」と語り、活動が先にあり、建築がその展開に寄り添いながら並走していく形こそが理想だという考えを示しました。核となる部分は閉じず、外に向かって開かれた建築を目指したいと語りました。

京都芸術大学(KUA)開学50周年構想記者発表会

青木 淳氏(左)と品川雅俊氏(右)

品川氏は、Labの拠点となる瓜生山荘を実際に訪れた際の印象を紹介。もとは住宅として建てられながら大学の会議の場としても使われてきたという、その二面性が生む独特の緊張感に触れ、何かを考え続けたくなるような場所だと語りました。長い年月をかけて手が加えられ続けてきたこの建物を、保存するためではなく、これからも使われ、変化し続けていくスタジオへと生まれ変わらせる考えを示しました。
アーカイブのあり方についても、品川氏は「使っていくアーカイブこそ、新しく面白い」と語り、資料をただ保存し愛でるのではなく、若い世代が実際に手を触れ、自らの創造につなげていくことこそがこのプロジェクトの挑戦だと述べました。

以上、記者発表会での発言内容要約は京都芸術大学 9月3日プレスリリースより


坂本龍一エステートからのメッセージ

「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」プロジェクト設立に寄せて(記者発表にて読み上げられた全文)

坂本龍一と京都、そして京都芸術大学との関わりは、長い時間をかけて育まれてきました。

坂本は京都を愛し、幾度となくこの地を訪れました。1999年に発表したオペラ〈LIFE〉の制作では、1980年代からの友人である浅田 彰さん、ダムタイプの高谷史郎さんらの協力を得て、「京都会議」と称する集まりを重ね、作品をつくっていきました。その後も寺院を舞台とした実験的なライブなど、京都にゆかりのある芸術家や研究者との協働をつづけ、その関心と活動は音楽を超えて多様な領域へと広がりました。2012年頃には京都・九条山に生活と創作の拠点を構えようと、建築家の青木 淳さんに設計を依頼して具体化を進めていました。この計画は実現しませんでしたが、京都とのつながりはその後も途切れることなく、亡くなるまでさまざまな分野の人々との交流が続きました。

京都芸術大学との交流も長く、京都芸術劇場 春秋座では、2005年に高谷史郎さんとライブを上演し、2010年には「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」夏期特別講座を公開収録しています。

また2010年に始まった「マラルメ・プロジェクト」では、当時、京都芸術大学特任教授・舞台芸術研究センター所長であった渡邊守章さんと、同大学大学院長の浅田 彰さんが企画を手がけ、渡邊さんが構成・演出を、高谷史郎さんが映像・美術を、坂本が音楽・音響を担当。足かけ3年におよぶ共創が行われました。

かねてより、京都芸術大学では音楽学科を設ける構想があり、当時の徳山 詳直理事長から坂本へ教授就任の申し出もありました。これも実現には至りませんでしたが、こうした話が交わされていたこともまた、坂本と同大学との長い関わりを物語っています。

坂本龍一の没後、私たちは、彼が遺した作品や資料、機材、楽器などの知的・物質的遺産を、広く共有し、未来の創造へとつなげていくための取り組みを進めています[*4]。その一つが、すでに発表されている株式会社デジタルガレージとのスタジオプロジェクトです[*5]。それと並行し、長く関係を育んできた京都芸術大学に、坂本が遺した機材や楽器を、次の世代の学びや創造のために生かすことができないかと相談しました。この対話から、「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」プロジェクトは始まりました。

坂本は音楽だけの人ではありませんでした。美術、哲学、文学、科学、テクノロジー、環境、社会。さまざまなものに好奇心を持ち、学び、考え、実験し、実践し続けた人でした。その作品や資料、思想、問いを保存するだけでなく、教育と研究の現場で次の世代が読み直し、新たな表現へとつなげていくことが大切だと考えています。

「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」が、学生、研究者、アーティストたちが自由に学び、考え、実験し、そこから新しい問いや表現が生まれていく場となることを強く願っています。

 

京都芸術大学と故・坂本氏との関係など詳細は、同学プレスリリース(2026年9月2日)を参照。
https://www.kyoto-art.ac.jp/news/press/1672

 

京都芸術大学(KUA)開学50周年構想記者発表会

開学50周年に向けた記者発表会 フォトセッション(提供:京都芸術大学)
左から、品川雅俊、青木 淳、小山薫堂(京都芸術大学 副学長)、徳山 豊(瓜生山学園 理事長)、佐藤 卓、原 摩利彦、保持壮太郎(Sakamoto Ryuichi Lab at KUA プロジェクトプロデューサー)の7氏

記者発表 詳細
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000723.000026069.html


*1.前身の京都芸術短期大学時代を含む
*2.記者発表はグラングリーン大阪 うめきた公園ノースパーク VS.(ヴイエス)にて。同館では「Ryuichi Sakamoto & Tin Drum | KAGAMI+」を開催中(会期:2026年6月27日〜10月12日|詳細は公式サイト参照)
*3.AS:2020年7月に品川雅俊を共同パートナーに迎え、青木淳建築計画事務所より改組
*4.坂本龍一エステート(The Estate of Ryuichi Sakamoto):故・坂本龍一氏の知的財産・物質的遺産を管理・継承する遺産管理団体・権利管理機関
*5.「坂本龍一ネットワークスタジオ構想」2024年9月時点の内容は、ディスクガレージ社発表を参照

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