イギリスのコンプトン・バーニー / アート・ギャラリー・アンド・パーク(Compton Verney Art Gallery and Park)で開催中の展覧会「ファブリック:タッチ&アイデンティティ(Fabric: Touch and Identity)」に展示されている、須藤玲子の大型インスタレーション〈扇の舞(Japanese Fanfare)〉の写真と動画が、同館の公式ウェブサイト上で公開されています。
須藤玲子は、日本を代表するテキスタイルデザイナーで、東京・六本木のAXISのテキスタイルデザインスタジオNUNO(ヌーノ)のディレクターを務めています。
近年では、2018年に国立新美術館で開催された、アドリアン・ガルデールとライゾマティクスの齋藤精一とのコラボレーション制作によるインスタレーション「こいのぼりなう!」が記憶に新しいところ。
会場のコンプトン・バーニー(COMPTON VERNEY)は、イギリスの田園地帯に18世紀に建てられた邸宅を改装した美術館で、美しい庭園と、ユニークな切り口の展覧会を開催することで知られています。
今回の展覧会「ファブリック:タッチ&アイデンティティ」は、人間にとって第2の皮膚ともいえるファブリックについて、アート、デザイン、ファッション、映画、ダンスなどのファクターを通して、その身体性と社会性に迫る展覧会です(会期:2020年3月14日〜6月14日2021年1月まで延長)。日本からは須藤と野田涼美が出品作家として招聘されています。
Compton Verney YouTube公式チャンネル「Compton Verney Corporate Events Tour」(2020年5月5日より期間限定公開)
イギリスにおけるCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)拡大の影響を受け、コンプトン・バーニーは現在休館中です。展覧会も公開を休止していますが、このほど同館がオンラインコンテンツを作成し、作品および会場風景などをサイト上で公開しました。
須藤玲子の〈扇の舞(Japanese Fanfare)〉は、展覧会の最後を飾る作品です。最後の展示室に登場します。
この作品は、2017年にワシントンDCにある〈J. F. ケネディ・センター(The John F. Kennedy Center for the Performing Arts)〉で開催された、ケネディ大統領生誕100周年記念イベントの展示を発展させたもので、前回に続いて今回も、フランス人デザイナーのアドリアン・ガルデール(Adrien Gardere)が空間デザインを担当しています。
展示室を覆い尽くす223に及ぶ布製の青い扇は、平安時代に日本で発明された扇を抽象化させたもの。扇は古くから「あおぐ」という本来の機能に留まらず、狂言では杯に、落語では蕎麦を啜る箸へと姿を変え、お茶席では自らの膝の前に置き結界を表すなど、さまざまな役割を担ってきました。また何よりその「すえひろがり」の形状から、祝い事に欠かせないかたちでもあります。そんな日本文化の多義性を象徴する扇を、コンプトン・バーニーの展示ではすべてブルートーンで制作しています
作品の制作工程とあわせて、今回の展示作品〈扇の舞〉を紹介した動画(ENGLISH ONLY|再生時間 1分42秒)はこちら。
https://www.comptonverney.org.uk/fabric-touch-identity/
なお、NUNOのプレスリリースおよび公式インスタグラムによれば、インスタレーション作品〈扇の舞〉は今後、茨城県近代美術館での展示が計画されているとのことです。(en)
Compton Verney | Art Gallery and Park「FABRIC: TOUCH & IDENTITY」
https://www.comptonverney.org.uk/fabric-touch-identity/