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角川武蔵野ミュージアムにて、アーティストユニット米谷健とジュリアによる日本初の大規模個展開催

上の画像:《最後の晩餐》2014 ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery

今年8月1日(土)にプレオープンし、今秋11月6日(金)にグランドオープンを迎える文化複合施設〈角川武蔵野ミュージアム〉内のギャラリースペース「エディット アンド アートギャラリー(EDIT & ART GALLERY)」の第1回展覧会の概要が発表されました。

同ギャラリーは、〈角川武蔵野ミュージアム〉の館長を務める松岡正剛氏の独自のセレクトで構成される4階「エディットタウン」の中央部分に設けられた“ホワイトキューブ”の空間で、同ミュージアムを象徴する施設で、現在配架作業が進められている「本棚劇場」と同じフロアにあります。

この「エディット アンド アートギャラリー」のこけら落としの展覧会として、国際的に活躍してきた日本人とオーストラリア人によるアーティストユニット、米谷健+ジュリア(Ken + Julia Yonetani)の二人による「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」が11月6日より開催されることがこのほど発表されました(角川武蔵野ミュージアム2020年9月29日プレスリリース)。

Ken + Julia Yonetani ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery
現代美術家。日本人とオーストラリア人のアーティストユニット。インスタレーション、パフォーマンス、写真、映像、立体など、環境問題や社会問題を主題に素材を活かした、大規模インスタレーション作品を制作。 国際的な芸術祭であるベネチア・ビエンナーレのオーストラリア代表(2009年)の1組として選ばれるなど、海外の芸術祭、美術館で活躍。主な展覧会に「シンガポールビエンナーレ 2013」(シンガポール国立美術館)、個展「The Last Temptation」(2015年、オーストラリア国立美術館)、「ホノルル・ビエンナーレ2017」など。2020年10月27日よりニューヨークにて開催される第1回アジア・ソサエティ・トリエンナーレにも出展予定。現在、京都の農村にて無農薬農業も兼業しつつ、グローバルに制作展示活動を行っている。

米谷健+ジュリアの二人はこれまでに発表してきた作品のテーマとして、社会問題、特に環境問題を扱ってきました。代表作の1つ《クリスタルパレス》(2012年〜)は、ウランガラスを素材とし、妖しく発光する作品です。美しさの一方で、その素材が原子力発電と深い関わりを持つものと気づいたとき、その美しさは見るものに全く違った印象を与えます。原爆、原発事故を経験した日本において、この作品と向き合うことは特別な意味を持つこととなるでしょう。

《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会》(2012-) ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery ウランガラスでつくられたシャンデリアのインスタレーション作品。シャンデリアの1つ1つに原発保有国の名前がつけられている。シャンデリアの大きさは、その原発からつくられる電力の総出力に比例。2011年の福島第一原発事故を受けて制作が開始され、現在32か国分が完成している。

《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会》(カナダ, 部分)2013
ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery

二人が2020年に発表した新作《Dysbiotica》は、磁器土による作品群です。表面は、微生物、珊瑚のようなパーツで覆われています。私たち人間の世界が、微生物の秩序の上に成り立っていることをモチーフにしており、地球規模で進んでいる珊瑚の白化現象も想起させます。「Dysbiotica」とは腸内細菌のバランスが崩壊する「Dysbiosis」からの造語。人と環境の共生世界の崩壊を表現したネーミングは、あたかも、2020年のコロナ禍を予見したかのよう。自然界のバランスを壊す主体として、私たち人間に問いをつきつけているとも受け取れます。

《Dysbiotica-Man》2020 ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery

《Dysbiotica-Pregnant woman》 2020 ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery

サイエンスや伝説にも関心を持つ米谷健+ジュリアの作品は、人間の想像力を取り戻し、新たな世界を創造する起点となることを目指す〈角川武蔵野ミュージアム〉の理念にもつながるものです。現代アートの重要な要素である社会性への関心が高く、美とユーモアと毒を併せ持つ米谷健+ジュリアの作品が、リアルと空想を行き来する場である〈角川武蔵野ミュージアム〉の「エディット アンド アートギャラリー」のグランドオープンを飾ります。

《Dysbiotica-Pregnant woman》(部分)2020 ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery

サブタイトルの「だから私は救われたい」の「私」とは、アーティストの健とジュリアであると共に、私たち、あるいは地球の生命体全てであるのかもしれません。環境破壊、気候変動、パンデミック、経済動向など、無数の不安と共に生きている私たちは、古来より救い主を求め、その姿を描き、刻んできました。

現代に生きる私たちはどのように不安に立ち向かっていくのか?
「救われたい」思いはどのよう果たされるのか?

この、私たちに向けられた永遠の問いを、美しくも毒のある彼らの作品群は喚起させることでしょう。

《最後の晩餐》(部分)2014 ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery
全長約9メートルにおよぶテーブルに豪華に並べられたワイン、食べ物、食器など西洋の晩餐会を彷彿とさせる巨大インスタレーション作品。全て「塩」でつくられた本作は、オーストラリアでの大規模農業における過度な灌漑によりおきた塩害をテーマにしている。環境破壊に加え、食の安全性への疑念と不安をもとに制作された作品。

なお、米谷健+ジュリアの大規模な個展が日本で開催されるのは、今回が初となります。さらに、出展される《最後の晩餐》(2014年)と《大蜘蛛伝説》(2018年)は、国内初公開となる注目の作品です。

《大蜘蛛伝説》2018 ⒸKen + Julia Yonetani  Courtesy of the Artists and Mizuma Art Gallery
ウランの採掘が行われていた岡山県の人形峠に伝わる伝承から着想を得た巨大な蜘蛛の立体作品。ウランガラスで制作されている。本作の対となる、オーストラリアのウラン鉱山の地域に伝わるアボリジニの民話をもとに制作された巨大蟻の作品《生き物の記録》(2012年)は、森美術館に収蔵されている。

米谷健+ジュリアの二人は現在、京都の限界集落に住み、作品制作と並行して農業にも取り組んでいます。土の改良を進めるなかで「微生物」への関心を強め、その経験が作品制作にも生かされています。
本展に関連して、「微生物」をテーマにした、子供向けワークショップとトークイベントのほか、米谷健+ジュリアのこれまでの活動を振り返るアーティスト・トークの開催が予定されており、開催日時など詳細が決まり次第、角川武蔵野ミュージアム公式ウェブサイトで発表されます。(en)

「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」

会期:2020年11月6日(金)~2021年3月7日(日)
開館時間:10:00-18:00(金・土曜 10:00-21:00)入館は閉館30分前まで
休館日:火曜(但し、祝日の場合は開館)
会場:角川武蔵野ミュージアム4F「エディット アンド アートギャラリー」(埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン内)
入館料:下記公式ウェブサイト参照
※入館は日時指定の予約制(当日の会場でのチケット販売なし)
主催:公益財団法人角川文化振興財団
角川武蔵野ミュージアム 公式サイト https://kadcul.com/

ⓒ 角川武蔵野ミュージアム デザイン監修:隈研吾 / 隈研吾建築都市設計事務所


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