COMPETITION & EVENT

「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021」発表

総合グランプリは被災とコロナ禍からの再生を目指す「球磨川くだり発船場」改修事例

一般社団法人リノベーション協議会(理事長:山本卓也)は、2021年を代表する魅力的なリノベーション事例を選ぶコンテスト「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021」の授賞式および講評会を12月7日に東京大学本郷キャンパス内にて開催し、タムタムデザイン(tamtamDESIGN一級建築士事務所)がエントリーした事例を総合グランプリに選出しました。

タムタムデザイン+ASTERによるエントリー「災害を災凱へ」は、熊本県の南部、人吉市内の球磨川沿いに建つ施設「球磨川くだり発船場」の改修事例です(上の画像)。

応募テキストによれば、同地において、木船を使った観光・球磨川くだりは100年以上の歴史があり、発船場には、乗船受付に加え、飲食・物販のスペースを有する、人吉城を踏襲した本瓦の和風建築の観光施設が稼働していたとのこと。
ところが、2020年7月におきた豪雨で、八代海に注ぐ一級河川・球磨川が氾濫、中心市街地を含めて大きく被災しました。同施設では1.5mの床上浸水を被り、木船、道具、作業車など全てが流され、土砂と残骸だけが残ったとのこと。2016年の熊本地震や、昨今のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響などもあり、事業の再建と球磨川くだりの継続は不可能と思われていたところ、クライアントおよび地元の人々の熱意により、わずか1年で、新たな複合施設〈HASSENBA HITOYOSHI KUMAGAWA〉として再生されました。

〈HASSENBA HITOYOSHI KUMAGAWA〉公式Webサイト
https://www.kumagawa.co.jp/

施設の開業日は、ちょうど1年前に災害が発生した7月4日。「球磨川くだり」は現在、運休中で、2022年春再開を目指しています。「災害を災凱へ」と題したエントリーは、災害を乗り越え、凱旋を待ち望む人々の思いを伝えています。

「災害を災凱へ」(タムタムデザイン+ASTER)詳細
プロジェクトフュージョン名:タムスター(タムタムデザイン+アスター)
https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2021/1277


「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」では、消費者目線に立った施工費別にエントリーが分かれています。
500万円未満部門、1000万円未満部門、1000万円以上部門、無差別級部門の4部門に、計228の事例がエントリー。リノベーションの楽しさ・魅力・可能性という点にフォーカスし、かつ、SNSを活用した一般ユーザーの声も取り入れて一次審査が実施され、最終審査に進んだ62作品から、住宅系を中心としたメディアの編集者9名で構成された選考委員が最終選考を行いました(選考委員長:リノベーション協議会 発起人 島原万丈)。
前述の総合グランプリのほか、部門別最優秀作品賞4点、特別賞14点が決定、発表されています。

リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021

1000万円以上部門 最優秀作品賞 アートアンドクラフト「都市型戸建てを再構成する。」
https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2021/1119

リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021

無差別級部門 最優秀作品賞 リノベる「BOIL_通信発信基地局から、地域参加型の文化発信基地局へ」
https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2021/1274

選考委員
島原万丈(LIFULL HOME’S総研所長 / LIFULL)※選考委員長
池本洋一(『SUUMO』編集長 / リクルート)
坂本二郎(『LiVES』編集長 / 第一プログレス)
佐々木大輔(『日経アーキテクチュア』編集長 / 日経BP)
立石史博(『住まいの設計』編集長、『リライフプラス』編集長、『ふるさとニュースマガジンカラふる』編集長 / 扶桑社)
徳島久輝(RoomClip住文化研究所特任フェロー / ルームクリップ)
八久保誠子(『LIFULL HOME’S PRESS』編集長 / LIFULL)
ゲスト選考委員:
二村勉史(『HERS』編集長、『HERS à table』編集長 / 光文社)

島原万丈選考委員長(LIFULL HOME’S総研所長)講評
「今年のリノベーション・オブ・ザ・イヤーを総括すれば、やはりコロナ禍へのリアクションが大きなテーマとなったことは間違いない。
多くの場合、リノベーションプランの与件となったのはテレワークの浸透である。テレワークはまず、ワークスペースの設置というかたちで職住の接近・融合を引き寄せた。また同時に、大都市圏の家選びにおける通勤利便性至上主義に修正を加えた。
通勤利便性至上主義の修正は都心の引力を弱め、物件選びの選択肢を拡大する。通勤時間のように単一の客観的な物差しによる拘束が弱まるに連れ、ライフスタイルは各人の主観的な価値観に委ねられる部分が大きくなり、これまで抑圧されていたしたい暮らしの実現が、一人一人の手によって解放されていく。そこから始まる住生活のニューノーマルとは、決して新しい別の“標準的”な住生活ではなく、“非標準的”な多様性に開かれた可能性のことなのである。
改めて強調するまでもないかもしれないが、それはリノベーションの得意とするところだ。

また別の角度から述べれば、ニューノーマルの核心は、自宅および自宅周辺で過ごす時間の増加にある。このことは、住空間に身体的・精神的な快適性を求め、徒歩圏のまちに交流や余暇の楽しさを探す強い動機を生む。
また、ここ数年のリノベーション・オブ・ザ・イヤーのトレンドである、性能向上リノベーションも定番化した感がある。やはり在宅時間の増加によって、温熱性能やエネルギーコストに対する意識が高まっているのは間違いない。

今年の選考において、コロナ禍へのリアクションとして語られたことは、やがて、住宅やまちのあり方の再構成を通して、住む人の幸福度を高めるアイデアとしても語られることになるだろう。」

選考委員各氏講評 全文
https://www.renovation.or.jp/oftheyear/award.html

「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021」受賞作品
https://www.renovation.or.jp/oftheyear/award.html

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